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ウェルビーング大学「幸せの授業(2021年1月)」

ウェルビーング大学では毎月1回授業の時間があります。 前野隆司・マドカ夫妻によるウェルビーングをテーマにした講義、ブレイクアウトルームに分かれての対話、メンバーの研究発表などで構成されています。(※現在はZoomでの開催) ここでは授業の内容の一部をご紹介します!


2021年1月の主なトピック
・「自分を信じる力、みなさんは何パーセントですか?」楽観力の大切さ
・自分の中の多様性を見つけるともっと幸せになれる!

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「自分を信じる力、みなさんは何パーセントですか?」楽観力の大切さ

隆司:実はウェルビーング大学のメンバーが何人かで日めくりカレンダーを作ってくれたんですよ。僕がこれまで出版した本や記事の中から、みんなが選んでくれた言葉が31日分載っています。

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マドカ:これができた時に夫婦で涙しました。

隆司:妻は僕のお葬式にこれを流すと言っています(笑)

マドカ:日めくりの言葉を順番に読んでもらって、それを録音しておいて流すって言ったんです(笑)私にとっては夫ですが、みなさんが選んでくださったものが隆司さんのこれまで歩んできた軌跡としてここにあるというのがすごくうれしくて。本当にありがたいです。ここに載っている写真も全部夫が撮ったものです。

隆司:ウェルビーング大学に写真部があって、そこのみなさんに「前野さん、だんだんよくなってきてるよ」と言われて全部自分の写真を載せちゃいました。
今日はこの中からランダムに選んで1つ紹介しましょうか。

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隆司:「楽観力というのはカードでいえばジョーカーみたいなものです。たくさんの不幸のカードはこの一枚でひっくり返ってしまうのです」と出ましたね。

マドカ:これはどんな想いで書いたんですか?

隆司:これはあるうちの女子学生の話なんですが、彼女は幸せの条件を30個ぐらい挙げたらそれをほとんど満たしてなかったんですよ。だけど彼女は「私は楽観性だけは強いです。まだ夢も見つかってないし、研究もうまくいっていない、友達とも仲良くない。だけど私は楽観性だけは強いので幸せです!」と言ったんですよ。それを見て「楽観」ってすごいなあと思いましたね。
ただ、そう思って因子分析とかクラスター解析をした結果、実は楽観力だけ高い人が幸せじゃなかったことがわかったんです。楽観力は幸せの4因子の「なんとかなる因子」と相関性が高いのですが、この「なんとかなる因子」が高いことによって、他の3つの因子が高まっていったのです。だから結果的に4つの因子が高まって幸せになっていった、ということなんです。
彼女はその後、いろいろな会社に行ったり抜擢されたり波乱万丈な人生なんですが、彼女のすごさは誘われるとすべて「おもしろそう!やってみます!」と言って悩まないんですよね。そうするとうまくいっちゃうんですよ。

マドカ:彼女のことは私も知っているのですが、結局今はご自身が一番やりたかったお仕事されているんですよね。それがすごいと思って!

隆司:これは日本人に大切な力だね。日本人は真面目なので、楽観力というよりは石橋を叩いてキチンとやろうとする。

マドカ:本当は実力があるのに、謙虚すぎて発揮できないというケースを多々見てきましたよね。
以前、フィンランドの人たちに「なんでそんなに幸せそうなのか?」「幸せって何ですか?」ということを聞くための視察に行ったことがあるんです。

隆司:フィンランドはThe World Happiness Reportで毎年1位2位になる国ですね。

マドカ:その秘密を知りたくていろいろな人に聞いてみると、「家族とのつながり」や「自分のことを応援してくれる人がいるから」という風に答えた方が多かったんですが、ある男性が「自分はこれまで苦手なことや失敗もたくさんあったし成績表も良くなかったけれど、自分が自分を信じる力は満点です!」とおっしゃったんです。それだけは揺るがない、って言い切れるそうなんですよ。

隆司:日本だったら「数学もだめだ。社会もだめだ。理科もだめだ・・自分を信じる力もない」ってなるじゃないですか。でも「全部だめだけれど自分を信じる力は満点」って言えることが、この国の文化や教育のあり方としていいですよね。

マドカ:自分を信じることの何がいいかというと、「今はできないけれどこれからきっとできるようになる、きっと自分はやりたいことをやって幸せになれる」と思えるんですね。なぜかというと、結局それは自分を信じているから、という答えになるんです。フィンランドにはそういう方が何人もいらっしゃって素晴らしいなと思いました。

隆司:日本人の素晴らしさをこの国際化社会の中でいかにしてもっと表に出すか。謙虚さは謙虚さとしてとっておきながら、でも自信はちゃんと持って他の国の人たちと接するというのが今の日本人のチャレンジだと思いますね。

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隆司:みなさん、自分を信じる力は何パーセントですか?フィンランドは100%ですよ。僕には今までたくさん友達がいましたが、その中で成功した人もいるし伸び悩んだ人も見てきました。結局は自分を信じて行動した人と、自分はダメだと思って行動しなかった人の差だと思うんですよ。能力は同じなのに自分を100%信じた人と50%だった人たちは何十年かするとものすごい差が開くんですよね。みなさん、自分を信じましょう。信じるのはタダですからね。

マドカ:タダですけど、どうしても揺らいじゃうんですよね。私もすごくそうなる時はあります。一歩外に出るといくらでもきらびやかな世界があったり、すばらしい能力をもった人たちがいるじゃないですか。その中にいくといやでも揺らいでしまう。それを意識して立て直すんですよね。無意識に立て直すことができると楽なんじゃないかと思います。

隆司:どうやってるの?

マドカ:比べそうになったら、「私の良さは何だろう?」と自分らしくいることの大事さを改めて自分に問うんです。そうすると「あ、そうだそうだ。自分らしくいていいんだ、失敗したっていいんだ」って思い出せます。失敗した時も、「人間だから失敗することはあるし、次はしないようにしよう」とか、「今これを経験したから違う自分になろう」って改めて思い直すということですね。そうするとポキっと折れることはなくて、しなやかに戻ってこれるようになります。

自分の中の多様性を見つけるともっと幸せになれる

マドカ:あるハリウッドスターの話なんですが、普通に考えると「もう充分有名だし自信もあるでしょ」と周りから思われますよね。だけどその方は「自分はこのままでいいのか、自分より有名な人が出たらどうしよう」とすごく不安になるらしくて。だから毎晩シャワーを浴びる時に自分で自分を褒めるんだそうです。自分で自分をエンカレッジするんですね。

隆司:僕の知っているある有名な方が、ある時SNSで「自分は不安と戦っている」って書き込んでいたんですよ。そうしたらそれに対して他の有名な方たちが何人も「自分もそうだ」って書き込んだんです。思った以上にたくさんの方が不安になっているんだなと思いましたね。
幸福学的な観点から言うと、「自分で自分をエンカレッジすること」と「仲間」なんですよね。WBUでもクラスとか部活でいろんな人と知り合うじゃないですか。人と人との弱い繋がりがたくさんある人は幸せなんですよ。そういう繋がりを作ることで、みんなが信じ合えて安心できる社会のモデルケースにならないかなと思ってるんですよね。

マドカ:大人もそうですが、お子さんにも親御さんからそういう声掛けをしてあげることもすごく大事ですよね。
よくウェルビーングプログラムなどをやる時に、そこで一緒になった方たちの良いところを最後にカードに書いてもらってるんですが、そうすると自分が思っていなかった良いことを書いてもらったと言って感激する方がたくさんいるんですよね。普段自分が思っているのとは違う自分の良さというものに他の人は気づいてくれるんですね。だからそういう機会が増えていくと、人はもっとお互いの良さを認め合うことができますよね。良いところに目を向けるというのを繰り返していくと脳が慣れてきますし、それが得意になって習慣化されていきます。

隆司:あとは、友達も多様な人たちがいる方が幸せなんですけど、「自分の中の多様性に気づいている人」が幸せなんです。自分で気づいていないことを褒めてもらうと自分の中の多様性に気づくじゃないですか。人間には一千億個の脳細胞があるので、本来はものすごく多様な一つの生き物なんです。だから自分で気づいていない自分っていっぱいいると思うんです。多様な友達から多様な指摘をもらって、それに気づくと幸せになりますよね。

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◇編集後記◇
「私は自分を信じる力は満点です!」というのは、日本で美徳とされる「謙虚さ」とは真逆のところにある考え方ですよね。
周りの人たちの良さはいくらでも挙げられるのに、自分の良さを認めるのはむずかしい。
私は自分のことを「自信のない人間」と思っていたのですが、ある時気が付きました。自信がないのではなくて、自分を信じたい気持ちがあるのにそれを「人から見たら大したことない」「私にはできない」「相手に迷惑がかかるかも」と思って押さえつけていた。だからその二つの相反する思いが自分の中でコンフリクトを起こしていただけなのかもしれないと。

人間なので常に自信満々ではいられないし、これからもどうしようもなく落ち込むことは起こるでしょう。でもそのネガティブな気持ちは果たして本物なのか?もしかしたらその大半はただの思い込みかもしれません。落ち込む必要のないこともあると認識できていたら、もっといろんなことに挑戦したくなると思います。そして、そこからもっと多様な人たちと繋がっていくようになるのでしょう。楽観力はまさに、自分らしく生きることの第一歩ですね。(なよ)



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