人気解説者・林陵平が伝授する、保護者のための“本質”を見抜くサッカー観戦力|サッカーパパ・ママが知るべき最先端理論
4-4-2、3-4-2-1…システムはなぜ大事?
今、日本で最も忙しいサッカー解説者が壇上に立つと、大きな拍手が起こる。中継でお馴染みのその声に会場が盛り上がる。
2020年に現役引退後、プレミアリーグからJリーグまで、幅広い試合を解説する林陵平が、保護者に向けたサッカー観戦力について話した。前日にJリーグの試合を解説し、当日夜にEURO2024を担当するという“過密日程”の合間を縫って、月間100試合以上を見てアップデートを続ける試合観戦のポイントを伝授した。
試合が始まると、まずは両チームの「配置」を見ると言う。全体のシステム、選手のポジショニングを確認し、システムによるメリットとデメリットを理解する。
システムを表す[4-4-2]や[4-2-3-1]は、“電話番号に過ぎない”という意見もあるなかで、なぜ大事にしているのか。
「(DFラインが)4枚か5枚かで戦い方が変わってくるので重要です」
システムによっての違いがあることを前置きすると、現代サッカーにおける主流の[4-4-2]と[3-4-2-1]を例に戦術ボードを使って解説していく。
「[3-4-2-1]と「4-4-2」ではサイドで幅を取れる選手の数が違います。タッチライン沿いに立つ選手は「3-4-2-1」だとウイングバックだけ、[4-4-2]だとサイドバックとサイドハーフの2人で……」とコメントし、日本代表が6月に披露した堂安律と中村敬斗をウイングバックに起用する超攻撃システムの意図も考察した。
システムのかみ合わせによる有利不利などを中心に戦術トークが進むと、徐々にヒートアップ。スタートから約10分後、林はジャケットを脱ぎ、熱を込めて言葉をつむぎ出す。欧州サッカーを中心に[3-2-5]を採用するチームが多い理由を、ボード上の選手を動かし、起こり得るプレーの展開を示しながら、順序立てて紐解く。「位置的優位」「数的優位」「質的優位」の3つの優位性について言及し、林の解説でお馴染みの“ビルドアップの逃げ道”の観点からロジカルに説いた。
我が子だけではなく全体を見る
その後も「可変システムとは?」「互いの狙いはどこから読み取るのか」「どうしたら試合の変化に気づけるのか」「戦術的センスを磨くには?」など、観戦時における疑問を一つずつ伝えると、前日に解説したJリーグの試合で起こった事象をピックアップして戦術的な攻防について言及し、FC町田ゼルビアが首位を走る理由などにも触れた。実際の試合で起こった事象やその戦術を採用しているチームを紹介するなど、次々と例を挙げていく。月間100試合以上のインプットは半端ではなく、その“深さ”を感じる内容となった。
「子供の試合をどう見たらいい?」という議題では、「子供を尊重して信頼して見てあげることがまずは大事です」と前提を述べると、実際に見るポイントと子供へのアプローチ方法を伝えた。
「例えばボールを受けられないことには理由があります。相手の守備がいいのか、相手の背中に隠れてしまっているのか、味方の立ち位置が良くないのか。ボールを受ける前の構造を広く理解してあげると、『なんでボールを受けられないのか』と責めることがないし、もし原因を説明してあげられるなら、改善できるかもしれない。局面だけではなく全体を見ることで声の掛け方が変わってくるんです」
では、実際に林自身が子供の頃はどうだったのか。
「母は八王子選抜に入ったことがある選手だったみたいで、よくダメ出しされていました(苦笑)。でも、言われることを『うるさい!』と嫌に感じるのではなく、送り迎えも含めて常に応援し続けてくれていることを理解していたので、「よし、がんばろう」と思っていました」
最後に親子で一緒に観戦力を高める方法とそれがどのように子供のプレーに影響するのかを紹介した後、解説者としてのモチベーションや、中継を通して伝える上で大切にしている3つの視点などを明かした。
圧巻の言語化と知識量で、ピッチ上の事象をわかりやすくていねいに伝える。各社引っ張りだこの人気解説者が基礎を伝授する貴重かつ学びの多い時間となった。
【冒頭4分公開 #06】
林陵平「保護者が身につけるべきサッカー観戦力」
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