退職時に注意すること(健康保険編)①
今回から健康保険において、皆さんがもし会社を辞める、となった時に知っておいた方が良いと思われる情報を2回にわたって書いて行きます。
もちろん、すでにご存じの方も多いとは思いますので、知っている方は飛ばしてもらって結構です。
健康保険証
普段、みなさんが使っている健康保険ですが、普通は会社の総務やあるいは健保組合から直接、「健康保険証」を受け取り、医者に掛かった時はそれを提示する事で原則3割の負担で診療を受けているかと思います。
この保険証、もし退職するとなると当然、会社を通して健保組合に返さなければなりません。
退職する事によって、すこしムズかしい言葉で言うと健康保険の「被保険者」ではなくなりますので、当然、翌日からは保険証は使えなくなる、と言う事になります。
もし仮にそのままの状態で医者にかかるとなると、全額自己負担になりますので、「ちょっと風邪を引いて診てもらった」と言うくらいでも、場合によっては一万円近く掛かってしまう、なんて事もあるかもしれません。
同時に薬局からもらう薬にも保険が効かなくなりませので、こちらでも高額な自己負担が発生します。
退職後、すぐに次の転職先が決まっているような場合は問題ないのですが、もし仮に再就職までにブランクが生じてしまう場合には何かしらの健康保険に加入しなければなりません。
今回はその方法、選択肢について簡単に説明します。
①被扶養者になる
ひとつ目のパターンは既に健康保険に加入しているご家族の被扶養者になる、と言う方法です。
これには扶養になれる”要件”がありますので、それを満たしている事が前提になります。
この場合の利点(?)は本人の保険料負担が一切ない事です。
保険料を支払っているご家族の保険料が増える事もありません。
(※介護保険を除く)
要件に該当するようであれば、一番良い方法なのかとも思いますがデメリットもあります。
たいした事ではない、と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、ご家族側の会社への書類提出など手続きが少しだけ煩雑な事と、男性の場合ですと「旦那が奥さんの扶養になる」と言う事が奥さん側の会社に筒抜けになりますので、その辺を気にされる方は少し躊躇するかもしれません。
②任意継続被保険者
ふたつ目の方法は、退職する会社で今まで加入していた健康保険に引き続き加入する、と言うモノです。
これを「任意継続被保険者」と呼んでいます。
この方法を取るには退職する日までに健康保険の被保険者期間が2ヶ月以上あること(要するに2ヶ月以上前から健康保険に入っていたこと)が前提となりますが、会社の総務等を通じて申請する事によって退職日の翌日から2年間、勤務していた時とほぼ同じ内容の健康保険に入れます。
但し、保険料については会社側は負担してくれませんので、今後は全額自己負担となります。
ですので今まで給料から差し引かれていた健康保険料の倍の金額を自分で支払わなくてはなりません。
この方法のメリットとしては「以前とはぼ同じ内容の保険給付が受けられる」と言う事かと思います。
まだデメリットとしては、先に書きましたように保険料の全額を自分で負担しなければならない事と、加入できる期間が「2年間限定である」と言うところかと思います。
③国民健康保健
最後みっつ目は、ご自身が住んでいる市町村の「国民健康保健」に加入する、と言う方法です。
これはお住まいの市町村が窓口になっていますので、ご自分で窓口まで出向いて手続きをする事になります。
健康保険として対象となる給付内容(受けられるサービス内容)は市町村によって差があるようですが、基本的な部分である「3割負担で診療が受けられる」と言う点は変わりありません。
国民健康保険(以下「国保」)の場合も保険料は全額自己負担となります。
また国保の場合は「被保険者↔被扶養者」と言う概念はなく、ご家族ひとりひとりが「被保険者」となります。
保険料もその世帯の加入者全員分について様々な項目をもとに決定されます。(詳しい計算方法は各市町村のHPなどでご確認下さい)
国保に加入する場合も基本、前年の所得に応じて保険料が決まるため、退職まで会社員としてある程度の賃金をもらっていた場合はそれに応じて一年目の保険料はある程度高額になりますが、もし仮に退職した年以降、所得の低い状態が続くような事があれば翌年から極端に(所得に応じて)保険料は安くなります。
また退職の理由が倒産や解雇など「会社都合」であった場合、一年目の保険料を算出する際、前年の所得を「30/100」として計算してくれる特例処置もある事がメリットと言えるかと思います。
逆にデメリットとしては先述したように通常は初年度の保険料が高額になってしまうケースが多い事と、健康保健組合の頃に受けていたサービス(給付)が一部受けられない可能性もある(各市町村による)、と言う事でしょうか。
以上、3つの方法とそのメリット、デメリットについて私個人の感想を簡単に挙げさせてもらいました。
繰り返しになりますが、退職後、すぐに次の会社の就職して健康保健に加入できる場合は良いのですが、仕事が見つからないとか、保険の加入対象とならない働き方の場合、収入が減った中で保険料の事を考えなくてはならなくなるため、よく考えてから選択される事をオススメします。
次回は、「退職前にこれだけはやっておくべき事」について書かせていただきたいと思いますので、併せてお読みいただけると幸いです。
(続く)