離婚したら年金に影響ってあるの?
今回は離婚時における厚生年金の分割制度について、書いて行きたいと思います。
(長くなるので二回に分けますね)
ですので今回は厚生年金保険に加入されている会社員や公務員、またそれらの方に扶養されている配偶者の話になります。
1.離婚時分割制度
まずはこの厚生年金の分割制度がどのようなモノか?
簡単に言いますと離婚した際、それまで多く年金を積み立てていた側から少ない方へ、年金額を分割移行する制度になります。
要は婚姻期間中に支払った年金保険料は「夫婦で同じサイフから支払ってきた」と言う考えが根底にあり、それがたまたま「多く稼いでいる側が多く積み立てているだけ」と言う論理になります。
2.夫婦間の不均衡
話を分かりやすくするために、仮にダンナさんが会社員として働いていて、奥さんがその扶養となり専業主婦をしていた」と仮定して話を進めます。
この夫婦が20年間連れ添った後、もし離婚となった場合、何も手続きをしなければダンナさん側は20年間分の厚生年金がもらえるのに対し、奥さん側がもらえる厚生年金は全くの「0」!
以前にも「会社員の年金は2階建てになっている」と書きましたが、
(国民年金と厚生年金と二つの年金がもらえるわけですね)
奥さん側はこのうちの一階部分である「国民年金」は20年分もらえますが、二階部分の「厚生年金」は「0」となる、と言うことです。
「全く払っていないのに、国民年金だけでも20年間分もらえるなら仕方ないか・・・。」
と考える方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、軽く考えてはいけません。
「国民年金20年分」ですと、いざ年金をもらう際の受取額は年間約39万円にしかなりません。
もちろん婚姻期間(この場合20年)以外の期間にも何かしらの形で年金に加入するでしょうし、その義務もあるので、実際には婚姻期間以外の分も加算されますが、こと婚姻期間の20年分については39万円のみです。
それに対してダンナさん側は、その39万円にプラスして厚生年金が給与の額などに応じて受け取れることになります。
たとえばザックリした計算ですが、給料30万、賞与50万の人でしたら20年分の厚生年金として年間約50万円前後が別にもらえます。
奥さん側が39万円、
ダンナさん側は二つ併せて約90万円!
あまりにも差がありすぎますよね。
しかもこの両者の差額は、働いていた側がこの設定より多く稼いでいれば(期間の給与が多ければ)稼いでいただけ差は広がります。
ダンナさんの「自分がそれだけ稼いだのだから当たり前だろう」と言う気持ちもわかりますが、奥さん側からしてみれば
「その間の家事は全てやってきたんだから同等であるべき」
と思うかもしれません。
一応お断りしておきますが、ダンナさん側、奥さん側と言うのはあくまで仮定の話です。
もちろんその逆で、奥さん側が働いていてダンナさんが扶養されていれば逆の状態になります。
3.3号分割制度
前提の話がだいぶ長くなってしまいましたが、このような不均衡を是正するために、平成20年に制度化されたのが「3号分割」と呼ばれる、ダンナさんの年金(積立額)をキレイに半分ずつに分割する制度です。
この制度の主旨としては冒頭にも触れましたが、夫側が給与をもらう際に支払い続けていた(給与から差し引かれていた)厚生年金の保険料は、その配偶者が共同して負担してきたものであるとの認識から、専業主婦(主夫)の貢献を年金額に反映させる事が目的とされています。
これは制度ができた平成20年4月からの年金記録が対象となるので、今現在ですと先ほどの例に用いた20年は経っていないわけですが、仮に令和10年に離婚となった場合、先ほどの例で言いますとダンナさん側の厚生年金、年間約50万円相当の年金記録を25万円相当分、奥さん側に加算してあげる形になります。
それによって、ダンナさん側、奥さん側、双方が共に年間で
国民年金として約39万円、
厚生年金として約25万円分、
計約64万円分がもらえる、と言う結果になります。
今回は「婚姻期間20年」との仮設定でお話しましたが、もちろん平成20年4月以降にある婚姻期間であれば何年でも、この分割の対象となります。
ちなみにこの分割に対する請求は、離婚が成立した日から2年間がその期限になります。
以上、厚生年金保険における離婚時の分割制度、「3号分割」についてのお話でした。
4.専業主婦(主夫)ではない期間がある場合
今回は奥さん側が専業主婦をしていて、全く会社等では働かなかった場合を想定しましたが、そうでない場合もありますよね。
ダンナさん、奥さん共に働いていて厚生年金保険に加入していた場合、あるいは婚姻期間中にそう言う時期があった場合はどうなるのか。
厚生年金にはもう一つ離婚時の分割制度があって、夫婦両者が厚生年金の加入者だった場合、
そのような場合にもまた別の分割制度が用意されています。
そのもう一つの制度については、次回、書かせていただきたいと思いますので、興味のある方は併せてお読みいただければと思います。