労災のおはなし①
みなさんは「労災」と聞いてどんなイメージを持たれるでしょうか?
会社員の方であれば「会社でケガなどをした時に賠償してもらえるモノ」と思う方もいるでしょうし、逆に会社サイドからするともしかしたら「イヤな言葉だ・・・」などと感じるかもしれません。
今回から2回にわたってこの「労災」について取り上げてみたいと思います。
1.全ての会社が加入
よく職場などで例えばドアに手をはさんだりとか、何か作業中に軽いケガをした時に「労災だ、労災だ!」と言って半分冗談で言ったりする事、ありますよね。
また冗談ではなく、本当に大けがをされて「労災」の対象になったことのある方もいるかもしれません。
この「労災」ですが正式には「労働者災害補償保険」と言って、その費用を会社が全額負担しているいわゆる「保険」なんです。
基本的に従業員を一人でも雇っている事業者は全て加入しなければならないことになっていますし、従業員は全ての人がこの制度の対象になります。
2.労災の対象となる災害
では実際はどのようなケースがこの労災の対象になるのか、と言うことですが、対象となるのは、
①「業務災害」と認められるケース、
②「通勤災害」に認められたケース、
になります。
ザックリ言ってしまえば「仕事に関連した災害」が対象となると言うことで、この辺はおそらく皆さんも感覚でおわかりかと思います。
では、「仕事に関連した災害」ってその基準は??
と言うことになるわけですが、業務災害と認められるには、ひとつに「業務遂行性」があること、もうひとつに「業務起因性」があることが必要になります。
どう言うことかと言うと、「事業主の支配下にある状態で、業務と傷病とのあいだに因果関係があること」
少し面倒な表現を使っていますが、この2つがポイントになるので実際に例を挙げて見てみましょう。
3.労災に該当するケース
ケース1
たとえばコテコテに典型的な例になりますが、
「工場で作業中に、機械に手をはさんでケガをしてしまった」
と言うケース。
「工場で作業中に」
→事業主の支配下にある状態(業務遂行性)
「機械に手をはさんでケガ」
→業務とケガのあいだに因果関係あり(業務起因性)
業務遂行性と起因性、両方があるため「労災と認められる」と言うことになります。
こう言った場合はわかりやすいのであまり問題になるケースは少ないようですが、中にはジャッジするのが微妙なケースも多くあるようです。
ケース2
では次のケースはどうでしょう。
宜しければ一緒に考えてみて下さい。
「断崖絶壁の作業場で働いていた労働者が、休憩時間中に自分が飲むために水をくみに行く途中、ガケから転落して大ケガをした」
と言う場合。
問題となりそうな部分は「休憩時間であること」や「個人的に飲む水をくみに行った」と言うところが少し「?」となるような気がしませんか?
「休憩時間中」は原則として自由行動が許されているので、「個人的な時間である」とも取れるのですが、このケースでは、
「事業施設内での行動」 = 「事業主の管理・支配下にある」
と言うことで「業務遂行性」が認められました。
また休憩時間中の個々の行動は、それ自体は私的な行為なのですが、その間の災害が、
「事業施設に起因する」(この場合だと、断崖絶壁の事業場施設で)
= 「業務起因性」も認められる
と言うことで、このケースも「業務上」として労災が認められました。
「水を飲む」と言う行為は「生理的必要行為」であり、人間として必要な行為なので「業務に付随する行為」とされたんですね。
と言うことで今まで実際に労災認定された2つのケースを取り上げてみました。
4.まとめ
今回はケガやアクシデントによって労災と認定されたケース、
明らかに認められそうなケースと、一見「どうなんだろう?」と言う微妙なケースを見てきました。
実際のところ結論から言ってしまうと、微妙なケースではケース・バイ・スケースで判断の難しいことも多いのですが、ベースとなる考え方としては冒頭に書いたように、
①業務遂行性があるか
②業務遂行性があるか
と言う視点から考えてみると少しは整理して考えられるかもしれません。
労災事故、
会社側としても従業員側からしても、起きないに越したことはないですが、もしもの時のために参考までに書かせてもらいました。
次回は労災の中でも通勤中のケガ、「通勤災害」について書いてみようかと思っています。
よろしければ併せて読んでいただけると嬉しいです。