同じ作品が好きなだけ
皆さん、こんにちは。難解な作品が好きな木賃ふくよし(芸名)です。
はい。ええと。念のために申し上げておきますが、この記事は難解な作品、と呼ばれるいくつもの作品群に対しての考察であり、絶対にシンエヴァンゲリオンの感想ではありませんので、その前提で何卒よろしくお願い申し上げます。
エヴァの感想はこちら。
NHKの番組かなんかで、庵野秀明監督が「近頃は難解な作品はウケない」と言ったらしい。ワタクシは未見なので、この言葉の前後の文脈や監督の真意などは知らない。
その上で言うと、わからなくはない。
難解な作品は取っ付きが悪いのだ。頑張って作品を見た上で「全然わからなかった」しか感想が出てこないようでは自らが馬鹿だと宣伝して回るようなものだ。難解でつまらなくて寝てしまっては金と時間が無駄である。
君子危うきに近寄らず。それは正しい。
昨今のライトノベルがタイトルで「異世界転生したらチート能力でセーブ/ロード機能が付いてた」的にタイトルでどんな作品かを教えてやらないと、娯楽作品が溢れまくる現代では、観る/観ないと言う選択肢に入れてもらえないのである。その点でわかりやすさは重要かも知れない。うむ。わからなくはない。
わからなくはないが、待て。落ち着いて考えて欲しい。そもそも難解な作品が大ヒットした事があるか?
その時の記事
ない。ハッキリ言うが、ない。ゼロではないが、作品群から考えるとゼロに等しい。
そもそも、難解な作品が大ヒットした例は稀有なのだ。中には「指輪物語」や「ゲド戦記」(両方とも原作の話)なんかは難解だとする説もあるが、両方ともジュベナイル(児童向け文学)である。だから難解ではないという意味ではないが、児童向け文学を難解の代表としてしまうのは人類の敗北ではなかろうか。
それに、「指輪」「ゲド」それから「精霊の守り人」なんかは児童向けとしては確かに難解な物語ではある。難解ではあるが、物語が追えないとか、何故こうなるのかさっぱりわからないとか、登場人物たちが何故あの行動を取ったのか、取れたのかがわからない、というタイプの難解さはない。
世界や人物たちの背景にある「しがらみ」は難解であっても、物語自体は目的や行動原理がわかりやすく作られているのだ。
無論、無駄に難解な物語がウケたケースがない訳じゃない。
無駄に難解な作品を「俺には理解できたぜ!」とマウント取りたいがために見るケースなどがない訳ではないのだ。「資本論」とか「我が闘争」なんて、インテリぶりたいがために読んだ奴が何割いるんだ? あとは中二病で読んでる奴が何割だ? ワタクシは前者。
だがそれらは例外で、根本的に難解である事は「ヒットしない」って事なのだ。
より広い客層に届けるためには、わかりやすい作品でなければならない。ツイッター上で誰かがそう言っていた。残念ながらツイートが流れてしまって見つけられず、引用できなかったが、たしか、作家さんのツイートで、非常にわかりやすい説明だった。
身内しかわからない楽屋オチほどつまらないものはない、かと言って説明だけでテンポが悪いのも駄目ってな感じで、非常に参考になる話だった。そう。確かに、
「わからない」は、つまらない。
正しい。話についていけないって事は、置いてけぼりを食らうのと一緒だ。皆がウルトラマンごっこをしてるのに混ぜてもらえない状態だ。
だから、わかりやすさが重要という点である。政治に興味がなく、知識もゼロなのに、政治ドラマが面白いはずがない。それがファッションなのか、戦争なのか、スポーツなのか、何でもいい。
わからないって事は、皆と一緒に遊びたいのに家で留守番を命じられてる状態なのだ。
うむ。それもわかる。
だが違う。
少年スポーツ漫画の基本は、何も知らない少年の主人公が、そのスポーツに触れ、その面白さに魅了されるところからスタートする。
そう。そのスポーツを知らない読者視点から始まるのだ。
難しい事をほぐして伝える事が必要なのである。
そもそも難しいこと、わからない事がつまらないのではない。わかる事は面白い事なのだ。
ルービックキューブなどの立体パズルがいい例だ。ゲームも難解であるほど解けた時の快楽は増す。
人間は、困難を克服することに快楽を覚えるのだ。しかし同時に、困難だとわかると諦めたり挫折したりする。
簡単すぎるのも一瞬で飽きる。つまり、わかりやすいだけが正解でもない。
任天堂の偉い人が言ってたように、観た瞬間に解ける謎は文字通り詰まらない。何時間考えても解けない謎は面白くない。20分ぐらいで「あっ!? そうか!!」と解ける謎がいい、とはそういう事だ。何でもネットで調べられる時代には厳しいが、自力で解く(あるいは、解いたと思わせる)事は娯楽なのだ。だからこそ、誰もが引っ掛かりつつも正解にたどりつける謎が面白いのである。
ゲームの謎解きに関しては全くもってその通りだが、つまりはバランスの問題か? いや、違う。
例えば2時間のサスペンスドラマを観ていたとして、すぐに犯人がわかってもつまらない。ややこしすぎても理解が追いつかない訳だ。
だが、考えてみてほしい。
「絶対にコイツが犯人だろ!」って思ったら、答え合せがしたくて最後まで観るものだ。
「全然犯人がわからない、、、」ってなっても、犯人が知りたくて最後まで観てしまう。
どちらの心理も正しい。要は、興味の持たせ方の問題なのだ。
わからないはつまらない。
解きほぐして教えることの重要さ。
簡単すぎても、難しすぎても駄目。
難解なほど、解けた時の快楽は大きい。
興味を持たせ続けることが大事。
これらを総合すると、アレに酷似してはいないだろうか。
そう。
学校の授業だ。
難解な作品とは学校の授業なのだ。
勉強は大半の人間が嫌いだ。難しい。面倒だ。やらされてる。
しかし、一度理解し、スラスラと解けるようになった時の快楽は大きい。
ワタクシは数学どころか算数からして苦手だったが、図形問題だけはスラスラ解けたからものすごい快楽と優越感を覚えた。
教え方の問題は大きい。解きほぐして伝えないと、人間は一度「難しい」「わからない」と思考を閉ざしてしまったら、これを再開させるのは困難だ。要するに「苦手意識」である。
飴を用意し、徐々に難しい問題へと段階を進め、興味を持たせ続け、自発的に解かせる必要がある。
そう。難解な問題を解くには基礎的な知識や素養が必要になる。それがないと解けないのだ。だからこそ段階を経ねばならない。
※ 筆者が図形だけ理解できたのは、単純に「四則計算」と「面積の求め方」さえ出来てれば、あとは得意のパズルゲームだったからである。
それだ政治ドラマでも歴史映画でもいい。基礎教養がないと興味もわかないのだ。だから人気アイドルを起用もする訳だ。つまり難解な作品ってのは、飴を用意しないと見向きもしてもらえないのだ。
大半の人間は勉強なんか大嫌いで、自分の好きな事は勉強だと思っていない。したがって、専門外には基礎的な知識さえない。だから難解な作品はヒットしない訳で、冒頭の「指輪」「ゲド」「精霊の守り人」が難解でも売れたのは逆にジャンルが分けられる前の「児童文学」だからではないだろうか。
まあ、とにかく。難解な作品は興味がない人には学校の授業に見えているって事なのだ。
では話のオチとして、件の「難解」とされている例の作品の話をしよう。
なぜエヴァンゲリオンはウケたのか。
エヴァンゲリオンは、自他共に認めるオマージュとパロディがふんだんに盛り込まれている。ここを否定する人はいないだろう。
つまり「俺はこの元作品を知ってる! わかってる!」と優越感を植え付けたのである。
※ 筆者は逆にこれで嫌になったきらいがあるが、それは置いとこう。
要するに元作品のファンを引き込む最初の刷り込みに成功したのだ。他にもハードSFのような設定、メカと美少女という飴を用意し、物語の結末が謎という鞭も用意した。
これってアレなのである。
思わせぶりな態度なのだ。
ほのめかせ、気がある振り、もったいつけなのである。
「他の奴らは何もわかってない! あいつらは〇〇も□□も読んでない癖にわかったような顔して騒いでるけど、俺は違うよ! 他の誰もが理解しなくても、俺だけはわかってるから!」という気持ちにさせたのである。
わかってるかどうか、正解かどうかは問題ではなく、自分だけがわかったような気になった訳だ。だから考察が増える。自分だけは理解してあげている、という優越感は麻薬だ。
この麻薬こそが大ヒットの要因のひとつなのではないか、とワタクシは思うのである。
さて。自分に思い当たる節はないだろうか。
「アタシは、人気がなくても、この作品が好きなの」
って言う女子に、
「ボクもその作品が好きだよ!
その作品が好きなキミのこともボクは大好きなんだ!
つまり!
キミもこの作品が大好きな
ボクのことを愛しているに違いない!
そうだろう!?」
思わせぶりな態度に入れ上げる。
コンビニで笑顔を向けてくれたからって、店員につきまとうストーカーみたいなもんである。
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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。