イノシシに遭遇した話
皆さん、こんにちは。素手で倒せる野生動物っているの? 木賃ふくよし(芸名)です。
さて。タイトル通りです。
イノシシに出くわしました。死ぬかと思いました。肝試しより、この事件より確実に怖かった。
面倒なので前振りはすっ飛ばします。
ワタクシはその日、体調が芳しくなく、無理しない程度に日課の伏見稲荷への山登りダイエットを軽く済ませて帰るつもりでした。
夜の8時。千本鳥居を抜け、山道に差し掛かる手前での出来事でした。
ガサガサ、ガサ、メキ、ガサ、パキ、ガサ、、、
と、草を踏み分ける音が、右手の暗闇から聞こえたのです。
一瞬で、「あ。コレはイノシシだわ」と察しました。
しかし、場所は山道に差し掛かる手前です。かなり人里近いから、勘違いかも知れない。むしろ、勘違いであって欲しかったかも知れないので、他の可能性を考える。
人間A、、、神社関係の従業員さん。うむ。その可能性はゼロじゃないけど、ワタクシ、毎日ここを通ってるので、音がしてる場所に道がない事は明確。わざわざそんな藪の中を進む理由がない。
人間B、、、鳥居を直す業者さんとか、芝を刈る業者さん。音や、いる場所から考えて、その可能性は充分に考えられる。うむ。考えられるが、時間である。夜の8時に屋外作業をする理由がない。
あるいは、夜の8時まで残業していたとしても、照明を使わない理由にはならない。
ねこ、、、ねこ好きとしては猫であって欲しいが、ぶっちゃけ、ねこは草木を踏み鳴らさない。歩くだけでパキパキ草木を折る、そんな猫科が潜んでいたら、間違いなくイノシシより危険だ。
野犬・狐、、、可能性はあるが、狐にしちゃ音が大き過ぎる。野犬だとしても、かなり大型だ。どうせ出くわすなら、レア度が低く、危険度が高い大型の野犬よりは、イノシシの方がレアリティが高いんじゃないか? まだイノシシの方がマシ。
猿、、、襲われたら、勝ち目ゼロ。イノシシより質が悪く、危険だ。せめて、イノシシであってくれ。
決定。イノシシに決めた。
イノシシ! キミにきめた!
俺の友達! 出てこい! ウリムー!
ワタクシは、鳥居と鳥居の隙間から、藪の暗闇を見回す。まあ、暗くて何も見えないが、メキメキガサガサいってる音は、どう考えても普段から聴く音ではない。
スマホのカメラを動画撮影モードにして、周囲を撮影するが、暗闇しか映っておらず、よく聴かないと足音も聴こえない。
とは言え、まあ、ずっと藪の方にいたら、出くわす事はないか。と、録画を停止した瞬間、ワタクシの目の端に、見慣れぬ白い影が映ったのだ。
見慣れぬ白い影。そんなに大きくない。うり坊?
うん。んんん。
イノシシはもっと黒っぽいはず。
狐? 狐か? お稲荷さんだし?
ワタクシは冷静さを意識しつつ、スマホのカメラを写真モードに切り替え、フラッシュを常時点灯モード(最大照明)に。大丈夫だ。充電はたっぷりある。
大丈夫だ。自分に言い聞かせ、白い影にスマホのライトを向ける。
あ。
いた。
イノシシ。
しかも、三匹。
二匹は、小型犬最大から、中型犬クラス。15kg~20kgぐらい? うり坊と呼ぶには少し大きいが、襲われても、致命傷にはならないと思う。
ただ、残る一匹は確実にもう一回り大きい。20kgは下回らない。兄弟か? 親にしては小さい? とは言え、コイツがぶつかってきたら、割と大怪我じゃないか?
三匹? 他にもいる? 家族?
一番恐れているのは、コイツら三匹が兄弟で、親イノシシが側にいる可能性だ。
親イノシシなら、60~100kgはある。元より勝ち目などないが、大怪我だけは避けたい。イノシシに出くわすのは人生で3度目。1度目はうり坊4匹。すげー可愛かったけど、近くに親イノシシがいる事を考えると、気が気じゃなかった。この時は親イノシシには遭遇していない。
2度目は成獣のイノシシだったが、サイズはそこまで大きくなかった。そして、1メートル以上ある用水路の向こう側だったのだ。
だが、今回は違う。
サイズこそは小さいが、眼前にいるのだ。文字通りの野獣が。
そこまで考えるも。
イノシシの姿を写真に収めてTwitterとかにアップしたら、割とアクセス数稼げるんじゃね?
このnoteの収入がメキメキ減ってるから、これぞ注目浴びるチャンスじゃね?←
とか、余計な事を考えながらシャッターボタンを押す。
しかし、ちっともシャッター音がしない。押せてないのか? 何なんだ? 焦燥からもう一度押すが反応がない。何事だ?
と思ったら、ライトが消え、
カシャっ
と、フラッシュと共にシャッター音。暗闇での撮影なので、シャッターが切られるまでは、かなり時間がかかる。そんな当たり前の事が把握出来ていない時点で、どうやらワタクシはちっとも冷静じゃないらしい。
スマホの画面を見て、先程の写真がちゃんと撮れてるか確認する。肉眼ではハッキリと見えたが、写真ではどうだ!?
駄目だ。サムネイル画像は真っ黒で何も写ってない。光量が足りないか!?
白い点々がライトに反応したイノシシの眼。
いや、それよりも待て。今、シャッターを切った時の、向こうの光景を見ただろう?
イノシシ、こっち見たぞ?
ヤバいんじゃねーの?
ワタクシは焦りを覚えつつも、冷静なつもりで、もう一度シャッターボタンを押す。
でも写真は真っ黒。
そして、その時に見た。
確実にイノシシのうちの一頭が、ワタクシを意識して、その身を翻したのを。
ライトが消え、再びシャッター音と、フラッシュ。
それを確認すると、スマホを切り、ワタクシは後退りするように、その場を離れた。背は向けず、鳥居を防壁に見立てて、ゆっくりと後退する。てか、野生動物って激しい光を嫌うんじゃなかったっけ? むしろ刺激した? 危険?
と、そこに、参拝客と思しき、大学生ぐらいの男性が2人、談笑しながら近付いてきたのである。
あ。やべえ。コレはマズい。ワタクシが刺激した可能性もあるから、この人達がコレで怪我なんかしたら寝覚めが悪い。
ワタクシは咄嗟に、
「今、そこにイノシシいますから、近寄らない方がいいですよ」
と声を掛ける。
「え? マジで?」「イノシシ?」「います。三匹ほど」「そんなに!?」「出るんですか?」「出くわしたのは初めてです」「よく来られるんです?」「あ。日課で」「えっ? 頂上まで!?」「いえ、途中までです」的な会話をしたあたりで、別の道からカップルが近付いてくる。
ワタクシはもう一度「そこにイノシシがいますから、待った方がいいですよ」と話し掛けて足止めする。
少し話していると、反対側からジョガーが下山してくる。
危ない、と声を掛けたいが、イノシシもジョガーも変に刺激したくないので、黙って見過ごす。
大学生2人とカップルにもやや緊張した空気を感じたが、特に何も起こらず、ジョガーはイノシシの存在にさえ気付かず、走り去って行った。
いや、もうイノシシは移動してしまったかも知れない。
ジョガーが走り去ってしばらく、「もう大丈夫なんじゃないですかね?」「さっきの人も通り過ぎましたしね」という声が。
あれ? 待てよ? イノシシを目撃したのはワタクシだけだ。写真も真っ黒だし。
コレって下手したらワタクシ、オオカミ少年ならぬ、
イノシシ中年に
なってしまうのでは!?
今までと違う、妙な焦燥感がワタクシを襲う。いや、ワタクシは嘘なんかついてないって!
「もう、去ったかも知れませんね。通ってみましょうかね?」
慌てたワタクシは自分から言い出し、率先するように、先頭を歩く。スマホのカメラを起動する。
オーケー。常時点灯モードのままだ。
右手側の藪の方を照らすように、ゆっくりと、先ほどイノシシがいた辺りへー、
まだ
いた。
てか、こっち向いてる。てか、姿勢が低い。てか、ガサって大きな音がした。てか、
ブゴッ!!
って威嚇してきた。
その瞬間、ワタクシの後ろにいた4人が走って後退する。ワタクシも慌てて逃げる。
「いた、いたいた!」「威嚇してなかった?」「怖っ」
よし。何とか (´・Д・)」 イノシシ中年は避けられた。←
で。現場を離れて、何となく一緒に歩いている5人。そこでワタクシ、伏見稲荷を登るなら、こっちの表参道だけじゃなく、裏参道もありますよ、と差し出がましくも説明する。実際、意識しているかどうかはわからないが、このまま進めば裏参道へ行ける。
まあ、裏参道まで移動するのも面倒だし、そこまで案内するつもりもないけれど、右手のこっち側から回れば三辻手前の丁字路までは行けるしな、とか考えてた。先程の現場からは、もう50mは離れていたと思う。
その時である。ワタクシは一行の先頭にいたのだが、おそらく最後尾にいた女性が小さく悲鳴をあげたのである。
「いた!」「なんで!?」
声に反応するように振り返る。
そう。ワタクシは気付かなかったのだが、割とすぐ側に、イノシシがいたのである。
サイズは中型犬クラスが1匹。割と大きい。
しかし! しかしココなら! 街灯があって先程よりは明るさが確保されている!
他に4人もいるから、襲われても誰かが助けてくれるか、助けを呼んでくれるだろう!!
相手は一匹!
今度こそバッチリ写真を撮ってやるぜ!!
何故か気が大きくなってたワタクシは、再びスマホのカメラをONにして、ライトでイノシシを照らし出す!!
何故か、4人はワタクシを置いて帰路を急いでいた。
あれ? ヤバくね?
(´・Д・)」 あれぇ?
そして、ライトを向けたイノシシは、早々に闇の中へと逃げて行った。
(´・Д・)」 あれぇ?
あれ? シャッターチャンスは、、、?
コレが、イノシシ遭遇事件の顛末である。
なお、そもそも体調が芳しくなかったので、その日の日課は流石に諦めて帰った。いや、芳しくても、イノシシ相手に勝てる要素は皆無だが。
なお、コレが、その暗闇の写真2枚の明度を上げたものである。
(´°Д°)」 こっち見んな。
追記:なお、2度目の遭遇はこちら。
そんな訳で、イノシシ相手にシャッターチャンスを望むほど、生活費に困窮している無職なので、投げ銭(¥100)をお願いします。
なお、この先には特に何も書かれていません。
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¥ 100
(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。