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「ラブラバに倖いを。」
僕はフィクションの住人で在るラブラバさんに敬意を払っている。
彼女は、「僕のヒーローアカデミア」と言う人気漫画・アニメのメインじゃ無い方の脇役だ。
この作品には特殊能力を持った人物が多数出てくる。
そんな世界で彼女は所謂ヴィラン(悪)として、社会に対して悪さを起こしている。
正確に言えば、ジェントル氏と言う男性に力を貸して、彼の悪事を支えているのだ。
しかしこの二人は、人を酷く傷付ける様な悪事と言うよりは自分達が目立つ事をするのを信条としており、悪戯みたいな(最早、悪戯と断定しても佳いかも知れない)混乱を起こし、其れを撮影して、インターネットにあげて再生数を稼ぐと言う少し可愛げの有る悪さをしている。
ラブラバさんは其処でどんなにジェントル氏が格好佳いかと言う事を得意のパソコン技術を遣って、世界中に配信しているのだ。
何故なら、ラブラバさんはジェントル氏が世界で一番格好佳いと信じているからだ。
そして当たり前だけど、ラブラバさんはジェントル氏の事を愛している。
一途に、只管に、全てを賭けて、愛しているのだ。
そんな二人は燻ってる現状を憂い、遂に過激な犯行を起こしてしまい(ここら辺は原作を読んだり視聴したりして頂きたい)捕まり、刑務所に入れられてしまうのだった。
話は其処で一旦終わるのだが、其れを全て観終わった時、僕はこのラブラバさんとジェントル氏に様々な感情を抱いた。
他人に認めて貰う為の方法が、困らせる事しか無い苦しさ。
誰彼にも必要とされない世界で、相合傘を求める様な辛さ。
御互いに依存して、想い合う事で成立する罪への羨ましさ。
そして、過去に囚われながらも、闘う事を止めない美しさ。
気付けば、僕は泪でくしゃくしゃに成っていた。
僕は心からジェントル氏に共感しラブラバさんに尊敬の念を抱いた。
キット、暗い部屋で繋いだ糸は解くのが難しい様に。
キット、雪の白で寒さを柔らかく感じてしまう様に。
そんな切実故に転がり落ちていく弱者が全て捧げた最後の足掻きに。
自分を犠牲にする事を美談にしてはいけない。
其れは前進をする努力を怠った結果の行為だ。
しかし、其れでしか想い合えない関係も有る。
延々と過ちを見付めて足を止めてはいけない。
其れは進歩を放棄し自分を慰めている悪手だ。
しかし、其の記憶で踏ん張れる哀しみも有る。
他人に迷惑や混乱や不安を与えてはいけない。
其れは誰も救われない淋しくて苦い感染病だ。
しかし、気付いて欲しくて縋る不道徳も有る。
僕はズット「愛」と言う状態を言語化するのを嫌がっていた。
何故なら「愛」と言うモノは苦難の中に有る様に思うからだ。
故に大きな声で只管「愛」を説く人を常に疎ましく感じてる。
其れこそ詩篇の題材に「愛」を採用する人の神経を疑ってる。
しかしラブラバさんの話を知って、僕は今まで質の悪い「愛の貌」としか出逢ってないのでは無いかと思う様に成った。
「愛」を安売りする人を軽蔑し、「愛」を言い訳の理由にする人を信用せず、「愛」で理想論を描く人を無視し、「愛」で乱暴をする人に冷たく肯いた。
しかし、そんな紛い物の中にも(如何にも「愛」と言う現象が大昔から存在する筈だ!)、トテモ根深く心に絡まっているモノも有るんだな、と。
そして、ラブラバさんが僕の視えないトコロで、苦しみは少なく、喜びは多く得られる様に祈り続けていた。
其処で先週のアニメである。
僕は震える程泣いてしまったのだった。
(此れも是非アニメか漫画で触れて欲しい)
最後にラブラバさんの特殊能力を述べて纏める事とする。
彼女は自分が愛した人に愛の大きさの分だけパワーを与える能力を持っている。
ズバリ彼女の特殊能力こそが「愛」なのだ。
出来過ぎた話だと思うかしら?
ラブラバさんに倖いを。