ストリートから生まれた「モロッコサッカー」
ワールドカップカタール大会では、モロッコが1-0でポルトガルを破り
アフリカの国として初めてベスト4を決めた。イスラム教徒が国民の大多数を占めるアラブ国家が、サッカーの国際主要大会でベスト4を決めたのも初めてのことである。
なぜモロッコがこんなにも躍進したのか
まず、モロッコの強さを支えているのは
何といってもその守備力
準々決勝までの5試合で失点わずか1は最少。それもグループステージのカナダ戦のオウンゴールである。レグラギ監督が代表チームを率いるようになってから、これで8試合を戦ったことになるが、うち7試合は無失点におさえている。
クリーンシート(無失点で終えた試合)を達成した相手が
クロアチア、ベルギー、スペイン、ポルトガルという欧州の並みいる強豪であることを思えば、その価値も分かるだろう。
次に、選手たちをしっかりまとめあげた監督の手腕も見逃せない。モロッコは同年8月末、
予選突破に導いたかつて日本代表を指揮していたボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチを解任。その後を引き継いだのが、同年5月にウィダド・カサブランカをCAFチャンピオンズリーグ優勝に導いたレグラギ監督である。
フランス生まれの同監督は、ハリルホジッチ前監督が冷遇したツィエクらの実力派を呼び戻した。ツィエクはチェルシーに所属するモロッコきってのスター。しかし、ポルトガル戦では左サイドの守りに加勢した後、右サイドの自分のポジションに駆け戻る光景が何度も見られた。選手の任務遂行への責任感と、チームにしっかり植え付けられた規律が垣間見えた。
個性豊かな選手達について考えてみる。
モロッコのカサブランカ郊外にあるコルニッシュビーチでは、1キロ以上続く砂浜をサッカーボールを蹴る人達で埋め尽くされているという。
裸足でボールを蹴り
上着や帽子をゴールに見立て
それを奪い合う人達。
体の大きな子は、ゴール前でのパワープレーに徹し、
裸足の子は、スパイクに踏まれないようスピード勝負。
キックが得意な大人は、裏に抜け出す子どもにパスを供給する。
自分の役割に誇りを持ち、自分のエリアでのプレーでは誰に何を言われても動じない。多くの国で消えつつあるストリートやビーチでの自由闊達(じゆうかったつ:心が広くのびのびとして物事にこだわらないさま)なサッカーがこの国ではしっかり残っている。このような環境から、モロッコの魅力的で個性的な選手たちが生まれているのではないだろうか。そしてその海の向こうはイベリア半島であり、欧州の玄関口である
幼少期からストリートで鍛えられてきた個性・鉄壁の防御
「奇跡ではなく努力の成果」と胸を 張った監督。
魅力的なチームが、さらに高い壁を越えて再び歴史の扉を開くのか、その前途から目が離せない。