【東京都知事選2024】小池以外の有力候補の考察ー蓮舫、石丸候補選ぶなら➡蓮舫候補
暑い夏とともに、都知事選も熱く熱く加熱してきました。今は元都民で投票権は無いのですが、今後の日本政治にも影響が大きい選挙ということで、元都民・横浜市民として、自分でも誰を推すか考えてみました。
現状は追認しないため、小池都知事以外の有力候補である蓮舫、石丸両候補で考えたいと思います。
最終的に総合的な観点と、自分の政治の価値観で、蓮舫候補を推したいと思います。
◾️決め手は、都議会に都知事派「与党」を作る力の比較
現職都知事が敷いたレールを切り替える上で、都議会に都知事寄りの「与党」を形成できるかは、その後の政治路線変更のブーストになります。
蓮舫の所属元である立憲民主党は都議会127議席のうち、15議席しかありません。ただし、今回選挙戦支援に動いている共産党の議席数を加味すると、19議席が加わり34議席となり、これは都民ファースト、自民、公明、いずれの議席数も上回る規模になります。
都民ファ(25)、自民(28)、公明(23)の全てが連携すると、76議席となり、少数与党となります。しかし、小池都知事無き都民ファは与野党の「草刈り場」となることも予想され、また公明党も小池支持で一致していた自民党と政権への巨大な政治不信の下でどこまで協調できるかスタンスを問われ、流動化することも想定されます。
東京を構成する他の自治体には、リベラル系議員も各所におり、援護射撃が期待できます。
都政にも政界の浄化という視点をもたらせれば、うねりを大きくすることも期待できます。
その意味で、すでに基礎票を持っている蓮舫が有利で、東京都で参院議員の議席を維持していた点からも、今後の選挙戦の采配を期待できます。
◾️石丸候補の本命は「国政」、と考えてしまう安芸高田市での議会運営
石丸候補に東京駅前であいにくの天気に、こんな粋な演説をされたら、聴いている人が胸躍るのもよく分かります。狂おしい笑顔は、大人が忘れがちなロマンや勇気を呼び覚まします。
彼の陣営には、100以上の選挙を勝利に導き、負けは10程度という伝説の選挙コンサルタント藤川晋之助が付いています。近年は既成政党の停滞を打破できる候補の発掘に注力していたとされており、彼にとって「逸材」なのかもしれません。
彼には安芸高田市長の実績があります。
ただ、私が彼を蓮舫の次点においたのは、その4年の実績にあります。
根回し無しのガチンコ議会とSNS戦略で、彼は瞬く間に注目の存在になりました。彼の注目をさらに集めたのは、議会で「老害」として敵と位置付けられた反石丸派「清志会」の存在です。
着任当初より議会との対立が取り沙汰されていましたが、
反石丸派議員は市長任期半ばが見えて来る2022年に清志会を結成します。
石丸市長任期中の目玉政策だった2人目の副市長登用、道の駅への無印良品誘致は議会の否決に阻まれます。
その案を上程した議決では、7対8の僅差で否決になったケースもありました。
この4年の間に、それを「8対7」にする努力は十分だったのでしょうか。
議会をネット配信し、居眠り議員をあげつらい、「恫喝」発言を巡って訴訟に突入し、議会は清志会との全面対決の様相を呈していきました。
清志会がその名の通り「清い志」を持った議員の集まりなのか、安芸高田市議会の切り抜き動画には双方の陣営が「意図」をもって切り抜いたと思われる動画が多く、分析しきれていません。
しかし、議会での様子と議員を断罪する様子を配信し「公開処刑」されては、議員側も対話する余地が減ってしまいます。
たるんだ議会運営に緊張をもたらす上で、彼の援護の論陣を張った議員の通り、ガチンコ議会は誠意ある議会に近づける効果があったと思います。
しかし、あの狂おしい笑顔とパーソナリティーで、市議会をもっと感化するアプローチはなかったのでしょうか。馴れ合いと、歩み寄りは別ではないでしょうか。
河合元議員の汚職事件に端を発しただけあって、河合との癒着が指摘された議員は難しかったとしても、まだ手の汚れていない議員を切り崩す余地はなかったのでしょうか。
選挙戦を見ればわかりますが、彼の選挙戦は非常にロジカルに計算されています。聴衆を熱狂させる演説も、選挙プランナーの声を受けつつ、本人の戦略のもとにどうすれば盛り上がるか、計算されていると思います。
それらを総合すると、清志会は「敵」であればよかった存在だったのではないかという仮説が浮上します。彼が計算の上で議会に「敵」を設定し、劇場型政治を設定した可能性です。
安芸高田市長のキャリアは全国区に名を上げるステップであり、清志会のような「敵」がその踏み台となる役割を担う構図が浮かび上がります。
彼が市政に本気ではない、とは思いません。
しかし彼が議会運営に悪であると断罪した「根回し」は議会の形成を変え、より建設的な議会を作る作用もあります。老獪さは、政治に秩序をもたらす上で、一つの美徳になりえます。
127名の議会に殴り込む上で、こうした政治姿勢では蓮舫以上の激突都議会となるか、自公とのなれ合いになるかの二択になります。
それでもなお、「根回し」を含めた緻密な議会運営プランが無いのであれば、彼の本命は国政にあり、本都知事選もその前哨戦に過ぎないのだと考えます。
首長と議会が激しく対立する議会では、市長の手足となる事務方も苦労しながら議会側、地元のステークホルダーとも折衝に当たります。彼らのためにも、もっと建設的な運営があってよかったのではないでしょうか。
■革新都政に期待したい、愛される街づくり
横浜市民として抱く仮説は、「革新都政の方が、住民に愛される街になるのではないか」というものです。
現在の新旧の施設が入り混じった横浜市の元町からみなとみらいまでの街並み、港北ニュータウン、ベイブリッジなど横浜の土台を形作ったのは、飛鳥田一雄の市政でした。
社会党系ながら、保守分裂の選挙戦で頭一つ出て勝った飛鳥田を待ち受けていたのは、少数与党での市議会運営でした。飛鳥田はそのため、トップダウンの手法を駆使して、横浜市民の圧倒的な支持を得る政策を実現していきます。その最たるものの一つが上記横浜の都市としての根幹を形作った「6大事業」でした。
横浜で暮らしていて、明治以来の文化財が活用されていて、歴史の中を生きている感覚は周りの自然と相まって心地よく感じています。
蓮舫も少数与党として出発するところから、都民のニーズに敏感になることが期待できます。そしてリベラル系政党ということで、文化財の価値を理解して活用してくれることを期待したいです。
都知事選の争点の一つ、神宮外苑再開発問題の発端である再開発事業は、明治神宮内苑を維持する資金をねん出することが大きなコンセプトの一つです。
その肝が、高層ビルを建て、その賃料を内苑維持に補填することでした。
ただ、開発を決めるプロセスが都と企業だけで決められる「公園まちづくり制度」であったため、市議会を経ず「ブラックボックス」の批判を招いた構図があります。
位置変更後に建て替えられる「神宮球場」と「秩父宮ラグビー場」など、歴史的価値の高い建造物の多い神宮外苑にいきなり適用してしまったのは、少々勇み足だったのではないでしょうか。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関・イコモスが、「ヘリテージ・アラート」で貴重な文化財の毀損につながると警告を出した、神宮外苑再開発。
それでも、開発スキームは経済合理性を担保しつつ、自然に一定の配慮をしていると擁護する意見もあります。事業案も、パッと見て悪くないのかもと感じるコンセプトです。
ただ、専門的知見では計画実施後も保存するいちょう並木に近接する施設が根に影響を与えかねないなど、まだ検証を求める意見もあります。
そうした現状を踏まえ、明治神宮の内苑の緑と外苑の歴史をいかに維持・活用するか、再開発のあり方を再調整したら良いのではないでしょうか。
都民の意思を聞く機会と、知事直轄円卓会議を構想している蓮舫氏に個人としては託したいと思います。
石丸氏も再検討を提起していますが、ここは東京都出身の人間に任せたいという想いもあります。
東京は最先端のモノ・アイデアが集まる国際都市である以上に、江戸開府以来の数多くの職人の集まる歴史と文化の厚みのある街です。数々の工芸品や技術が今も息づき、数百年の老舗が軒を連ねます。そうしたものが、金融資本主義のもとで台頭するビルの高層化に抗う、文化を維持する「インフラ」となっています。
こういう文化の薫りは、暮らしてきた人間の方が嗅覚が鋭いと思っています。だからこそ東京で暮らしてきた蓮舫を推したいと思います。
石丸氏は東京都と46道府県の相互交流を構想しており、一極集中と過疎に一手を打つ上では大変興味深いものです。
しかし、銀行員として培った事業の与信に、文化的価値を評価する発想と指標は十分反映されているのか、疑問を感じます。
地元の美術館を、中学生も生徒議会で再開を請願したものの、財政再建の観点で放棄を貫いているためです。
争点となった「八千代の丘美術館」は、15棟のギャラリーのうち12棟を各アーティストに開放し展示してもらうユニークな形式です。「広島の芸術文化を生かし育てる拠点作り」を標榜しており、地元でアートに触れる人を増やす意味では魅力的な存在意義を持っている施設です。しかし黒字達成のためには、低下した入場者数では入場者一人数千円を支払わねばならない状況で、休館とし、民間の参入を呼びかけることとなりました。
安芸高田市には伝統の神楽とそれを活かした文化施設があり、一定の文化振興策を垣間見ることができます。しかし芸術に触れ、新たなアートワークを生み出す機会を行政が取り下げてしまうのは、街の基礎体力を下げてしまうことにはならないでしょうか。
自治体として有数の規模を有する広島県内なら、石丸自身が注目する交流人口を起こす仕掛けを十分に生み出せるのではないでしょうか。(上記動画の後半で、地元中学生はダム湖に近くサイクリングに良い立地を生かし、サイクリング施設とする可能性を提起しています)
自分の実体験として、地方の過疎が進む都市にも、将来の巨匠は生まれ得ると思っています。人口減少の中での「撤退戦」、その中でのコストカットとの思いが伝わってきますが、文化振興策のさらなる検討があってほしいと願いました。彼にはアイデアと人とお金を呼ぶ求心力があると思っているので。
既存政党・共産党への不信感、「上流階級」出身と見えるキャリアなど、マイナスの指摘点はいくつか見られましたが、上記のような点で、私は本選挙で東京都民であれば、蓮舫を支持するという私見でした。ご一読いただき、ありがとうございます。
七夕の選挙が、有権者の皆さまに有益なものであることを願っております。
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