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7日間かけて十勝平野になる旅 #2
9/22 2日目 晴れのちくもり
日高→日勝峠→十勝清水→芽室→帯広
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自転車を手に入れ、道内各地を巡り自分は峠が好きなんだと自覚した頃からずっと行きたいと思っていた日勝峠。ついにご対面の日を迎える。
山間の広くて長い直線の道、内陸特有の大きな岩石だらけの川沿いの道、峠に挑む前からわくわく感をそそる274号線。
大颱橋で釣り人を見かけ「次は十勝釣りライドだ」と心の中でつぶやく。
日勝峠は合目毎にかわいらしい看板が立っており、それが見える度に「もうちょっと!」と励まされるような気持ちになる。車だと一瞬で過ぎてしまうが、こういうところを楽しめるのは自転車旅ならではだと思う。
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睡眠不足の影響かなかなか調子が上がらず、5合目でいつものサンダルに履き替える。復活。やっぱりこのサンダルじゃないと本調子にならない。
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時々トンネルはあったが、上り前半と頂上付近だけなので、ほとんど気持ちのいい晴天の下ひたすら上る。標高1023mということだが勾配が特別キツイところはなく、軽ギアで一生漕ぎ続けられる心持ちさえあればいける。止まらなければいずれ着くのだ。
しかし、なんせ長い。たしか4回くらい下りた。下りたが押してはない。なんとなく「乗って進む」ことにこだわっているのかもしれない。通り過ぎるバイクの人がサインをくれる。そのリアクションの大きさで頂上が近いことを悟る。
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頂上を越えたら十勝清水。
トンネルを抜けるとスケールの大きい蛇行した下り坂と、飛行機からしか見たことのなかった十勝平野。
カーブが大きいので下りでもブレーキ要らず。あっという間に展望台へ。
日勝峠の看板と、世の中にある広告物によく使われているあの「THE十勝」の風景が目の前に広がる。
自分の足でここに来たのだということを噛み締める。
何度体験しても飽きることのない感覚だ。
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峠を降りた頃にはすっかり昼過ぎ、どこかでお昼にしようと清水のごはん屋さんを探す。
常日頃からGoogleマップにメモしている「行きたいところリスト」のお店がすぐ近くにあったので早速向かう。
「ふるカフェ カマクラヤ」
地元食材を使った定食はどれも魅力的で、メニューを見ただけで「また来たい」と思わせられる。
おかずの品数も多く、身体に染み渡るようなやさしい味付けで体力回復。
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見覚えのある札幌軟石の雑貨が置いてあり、聞いてみるとやはり札幌南区のカフェにあるものと同じだった。
お店の設備で札幌軟石を使用しており、そのお付き合いもあり置いているそうだ。
初めて来る土地なのに、知っているもの、好きなものと繋がる。
たくさん旅をしていると、広いはずの北海道が良い意味で狭く感じることがある。いろんなところに自分の足で行ったからこそ得られる感覚だと思う。
その後、大きい道路ではなく、なるべく車通りの少なそうな道をひたすら東へ。たくさんの農場の横を通り、気が付けば白樺通りに入っていた。
昨夏ぶりの帯広に到着。
昨夏泊まってとても良かったHOTEL NUPKAへ。
女性専用ドミトリー1泊4300円。とにかく設備がきれいで安心して宿泊できる。1階のカフェがまた良い雰囲気なのだ。オススメはキッシュ。
さっそくチェックインして、シャワーを浴び、少し休む。
晩ごはんは「くつろぎ居酒屋ここから」へ。
6年前、東京で仕事をしていた頃、帯広出張した際にとてもお世話になった山際夫妻のお店だ。
明日、明後日は雨予報で停滞が決まっていたのでしこたま飲む。
サワー2杯と日本酒3合飲み、無事記憶をなくす。
自転車旅中とは思えない所業だ。
でも、次の日を気にせずここからでお酒を飲めるのは初めてだったので、ただただ嬉しかったのだった。
後日確認したところ、ちゃんと自転車を押して宿に戻りしっかり鍵もかけていたようだった。
酔っ払っていてもその辺はしっかりしている。
着の身着のまま寝ていたけれど。
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9/23 3日目 雨
大雨と二日酔いで帯広停滞。
夕方にインデアンカレーを食べる。
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9/24 4日目 雨
雨が弱まったため、大好きなビーバーとたぬきに会いに帯広動物園へ。
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15:00すぎには雨が上がったため、道の駅 ガーデンスパ十勝川温泉へまったりと向かう。雲の切間から覗く西日が、空も地上もオレンジ色に染める。雨が上がった直後、背中は汚れるけどこの景色が見られるなら気にならない。mont-bellのアウターは優秀なのですぐ乾いてくれるし。この道の駅には足湯があるので、峠越えで疲れた足にはとても良い。
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街へ戻りお蕎麦屋さんへ。
9月の帯広は夜になると少し肌寒い。山菜そばで身体をあたためる。
峠越えで消費したカロリーを補うためパフェも食べる。
食べる時と食べない時の差が激しい。
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宿に戻り、雨の中で乗り少し汚れた自転車をタオルで丁寧にふきふき、きれいきれい。
旅先でもピカピカで乗りたい故、自転車用のタオルも持ち歩いている。
フレームはもちろん、ブレーキもホイールもしっかりふきふき。
明日は晴れ。十勝平野爆走に備え、早めに就寝。
9/25 5日目 晴れ
帯広→音更→鹿追→瓜幕→士幌→上士幌→帯広
スッキリと晴れた空。まさに十勝晴れ。
十勝はここ数年で新しい道の駅ができたり、リニューアルオープンがあったりと、たくさんの道の駅が密集しているので道の駅好きとしても胸が躍る地域なのだ。
激しい向かい風の中、まずは鹿追へ。
途中白樺並木を見つけて思わず記念撮影。
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この日もたくさんの農場、牧場横を通る。すれ違う人より牛や羊との遭遇回数の方が多い。
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鹿追、瓜幕の道の駅でピンズガチャを回し、士幌へ。瓜幕から士幌へ向かうタイミングで猛烈な風が西から吹き始める。やった、追い風だ。トップギアで漕がなくても進んでいくおそらく過去一番の追い風。Googleナビの予定よりなんと30分も巻いて「道の駅 ピア21しほろ」へ到着。
ついてひと言、「この道の駅、すき」
地元の名産はもちろんレトロ雑貨も置いてあって個人的に好きな雰囲気!食堂があったのでコロッケ定食食べようと思ったのだが、そこまでお腹が空いてなかったので見送り。
100km以上乗るとしてもおにぎり一個でいける身体ゆえ、どうしても食べることを後回しにしてしまう。一応「今年はちゃんと食べる!」とは思っていたので、代わりに「燻しコーンチーズまん」を食す。美味しい。
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変なTシャツが好きなので「シホロT」も購入。あとは、でんぷん粉の袋で作られたカードケース。親子ぐまの絵柄が素敵。柿渋が塗ってあって、使えば使うほど味が出てくるとか。旅用のお札入れにしてみようかな。
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その後は上士幌の道の駅へ行き、飲むヨーグルトを買って飲む。「十勝の乳製品」というだけで、なんだか特別な気がしてくる。十勝マジックだ。
士幌の道の駅に長く滞在してしまったので意外と時間がない。日没までには宿、もしくは宿のある街へ行くというマイルールが一応あるのだ。秋は日没が早い。今日の予定だと残す道の駅はあとひとつ。
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しんむら牧場をぶらぶらして、居辺川沿いを進みしほろ温泉へ向かう。向かっている途中、ようやくこの日初めての空腹感。「さっきガッツリ食えよ」と思われるかもしれないが、満腹だと身体が重くて思うように自転車に乗れないため、いつも旅中はこんな感じなのだ。
しほろ温泉近くのカントリーロードというカフェで腹ごしらえをして、帯広へ戻る。日没が迫る中だったが、人気のない音更の道を走りながら今日のことを振り返る。北に東にまさに縦横無尽に十勝平野を走り尽くした日だった。このまま走り続けたらこの土地と一体になれるんじゃないか、そう思えるくらいに無心でひたすら走り続けた日だった。
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「十勝平野になる」
タイトルの言葉が思い浮かんだのはこの時だった。
表現が難しい感覚をわりと上手く表せているんじゃないかと思う。
理解されるかどうかは別として。
「その土地になるまでその土地を走る」
何か自分の中にヒントのようなものが芽生えたのを感じながら、札内ガーデンでふやけるまで湯に浸かり、この日もここからへ。
以前食べて美味しかった春巻きコロッケと初日に感動したナスの三升漬け、これにライスをつけて「ここから定食」の完成だ。
次の日に備え、この日も早めに就寝。
夢の中でも自転車に乗っていた。