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わや峠越え祭・オホーツク内陸編 #3

5/30 5:30
起床。かなり天気が良い。
滝上渓谷キャンプ場は、キャンプ場というよりパークゴルフ場の一角という雰囲気。こじんまりしてる分、ソロキャンパーには有名なのか数組の宿泊者がいた。
朝ごはん代わりに遠軽の道の駅で買ったサバチップスを食べる。美味しすぎて止まらない。

クセになる

5/30 8:00
すぐそばにある芝桜公園の開園に合わせて出発する。
芝桜は斜面に植えられているので、園内はもちろん激坂。
受付に辿り着くと地元のおばあちゃんから「自転車なの!?」と声をかけられた。「これ2枚あげる!」と公園のシールを2枚もらった。
芝桜はちょうど見頃。公園からは滝上の街が一望できる。
オホーツク管内は滝上以外にも芝桜の名所がいくつかあるが、栽培に適した土地ということなのだろうか。

見頃の芝桜
どこを撮っても綺麗

5/30 8:30
ここはオホーツク内陸。きっと今日も峠が待っているに違いない。はやる気持ちを押さえず、気の赴くまま自転車に乗る。
出発してすぐ、脇道の木の皮が剥がれているところがあった。1本や2本じゃなく何本も。人間によるものなのか、動物によるものなのか…こういうちょっとした疑問を瞬時に解決できたらいいのに、と思う。

そういう柄みたい

5/30 9:00
またすぐ上り始める。珍しく糖分を補給して進む。
上っている最中、崖の下の方を見ると道があった。しかも舗装路だ。
この辺りは林道が多いが、これもそのひとつなのだろうか?走っている道路に沿うように敷かれていて、まるでサイクリングロードのようだった。

下りれる?

5/30 9:30
あっという間に小さな峠、札久留峠を越える。
シャッと越えてしまえるかわいい峠だった。
「札久留(さっくる・サクルー)」はアイヌ語で「夏・道」という意味を持つ。まだ5月なので夏というには早かったが、とても澄み渡る天気の中、「夏の道」を走るのはとても気分が良かった。

楽勝な峠

下る途中、左側に上っていく道があった。看板には「ウェンシリ岳登山口」へえー、と思いつつ素通りしたが、後々調べたらわりと奥まで舗装路が続いているようで、奥地にはキャンプ場がある。最低限の設備なのだろうが、場所が場所だ。魅力を感じずにはいられなかった。いつか泊まりに来ようと決意した。

そのまま道道137号線を進み、西興部方面へ。途中、上藻興部駅逓所があったのですぐ横の道に入る。いつも通り何もない駅逓所を確認し、再び137号線に合流。

の、つもりだったが、いつもの林道の看板を発見し立ち止まる。

「民有林林道 五六峠線」

見つけてもーた…

"峠"が入ってる林道。行かずにはいられない。
マップで確認したら、予定していた道から大きく外れることはなさそうなので、そのまま進んでみる。
初めは開けた道が続き、次第に左右の木々が生い茂り、道に落ちてる枝や枯れ葉が増えてくる。「人通りが少ない道あるある」を実感する。
進むにつれて勾配がキツくなっていく。一番軽いギアで後半は途中途中立ち漕ぎ。「あー、あーー」とペダルをひと踏みするたびに声が出る。人気のない道は好きなだけ叫べるし、独り言も言い放題だ。
記憶に残るほどにはキツイ坂、そこまで長くはなかったので一度も降りずにいけた。
坂を下り、枝がたくさん落ちている平坦を進む。熊のフン。まあまあ新しい。ラジオの音量を上げて時々叫びながら熊に人間がいることを知らせるようにする。いい加減熊スプレー持とうと思いながらも、いつも後回しにしてこういう時に思い出す。たぶん死ぬ時も今と同じことを考えるんだろう。

最初はこんな感じ
徐々に枝や枯れ葉が散乱
五六峠頂上付近
キツイけどまた行きたい

5/30 10:00
無事林道を抜ける。出口のところで作業をしている人達がいた。林道を抜けるギリギリまで叫んだり歌ったりしていたので少し恥ずかしい。恥ずかしさを誤魔化すように「こんちはー!」と元気に挨拶した。
この辺りは西興部の忍路子(おしょろこ)という地名らしい。文字だけみて「小樽!?」と思った人が多いのではないだろうか。
こちらもアイヌ語由来で、どちらも「尻のような窪み」という似たような意味合いを持っていた。
そんな忍路子の道を、ポツンと一軒家を横目に突き進む。
途中キツネを見かけた。北海道民にとってはお馴染みだが、この辺りは人通りが少なくて人に慣れていないのか、かなり近付くまで気付いてもらえなかった。
驚かせてごめん。

5/30 11:00
西興部村に到着。ここもずっと来てみたかった場所だ。
私は北海道の地名が入ったご当地Tシャツが大好きなのだが、ホテル森夢(りむ)の売店にあったので購入。その際にレジでさっき通ってきた林道の正しい読み方が分からなかったので聞いてみた。
西興部在住だというスタッフさんも知らないらしく、改めてかなりローカルな道だったと思い知らされる。
謎を残したままだが、今日は朝ごはんを食べてなかったので、ホテル森夢でお昼ごはんを食べる。蝦夷鹿焼きカレー、美味しかった。
着ていたmont-bellアウターの袖をコンソメスープに浸してしまった。
お会計の時、さっきのスタッフさんが周りの人に読み方を聞いてくれていたらしく、あの林道は「ごろくとうげ」と読むそうだった。
分かったこともそうだが、わざわざ確認して伝えてくれる心遣いがとても嬉しかった。またここに来たい、そう思った。
ちなみに、このmont-bellのアウター、西興部村の村長とお揃いらしい。これも同じスタッフさんが教えてくれた。

アツアツ

5/30 12:30
西興部村の道の駅へ。
昨夜、滝上にいる時に何気なく調べてみて発覚していたことがある。
今日は道の駅の定休日だということを。行き先についてよく調べないスタイルのデメリットはこれだ。しかし、「なんだよ、空いてないのかよ」という感情は一切湧かない。
これが、「また来る理由」になるから。
さっき通って気になった「ウェンシリキャンプ場」への道、岩尾内湖に繋がる複数の峠、未知の林道…。
次回、西興部に来る時はこれらの気になる道を走り放題なのだ。さらに、また違う季節にこの土地に来れると思えば、わくわくも倍増する。
北海道に対してだけは、スーパーポジティブになれる。

5/30 13:00
国道239号線を進む。ひらけた道で遠くの山がよく見える。
てっぺんのあたりがえぐれていて、とても印象的な山があった。「拳骨山」という山らしい。一発で覚えられてしまうかわいい山だ。
そんな拳骨山を横目に峠に差し掛かる。天北峠。そして、ここからは下川町に入る。

特徴的な山頂
全て初めて来る街

5/30 13:20
天北峠を越える。ゆるーく上って、ゆるーく下る峠だった。
峠を下った後は川沿いの道が続く。途中、一の橋駅逓所で立ち止まりつつ、下川市街へ。
壮瞥・ヨツカド商店の今井さんに教えてもらったお店は定休日だったため断念。時間も中途半端だったため、下川満喫はまた次回にして先へ進む。

同じ名前の峠が道北にもある
地味に集めている駅逓所跡写真

5/30 16:00
向かい風の時も多々あり、なかなか体力を持っていかれたがこの旅の最終目的地、名寄の道の駅に到着。

すごく混んでた

名寄市街地からは少し離れた風連というところにある。売店を見て回る。品物ひとつひとつを眺めていると色んな人の顔が思い浮かぶ。「〇〇ちゃん、これ好きそう」とか「〇〇さんにこれお土産にしよう」とか。自転車旅なので積載は限られているが、こうしてお土産を買って帰るために少し荷物のスペースを開けて旅に出ている。「現地で買って送ればいいじゃん」と思われるかもしれないが、「持って帰れる分だけ選ぶ」のが楽しくてやっている。自分で言うのもなんだが「自転車で行って持って帰ってくる」という付加価値も含めて、わたしからのお土産なのだ。とはいえ、自分がどうしても欲しいものだったら郵送するかもしれないが。

その後は、このままこの辺りに泊まろうかと思ったが、行きたいところがあったので、JR風連駅から輪行して旭川へ。

初めての在来線輪行

約1ヶ月ぶりのゲストハウス・アサヒカワライド。
ヨネスケという猫がいるのだが、これがまた可愛らしくてたまらない。
また、設備も綺麗でゆっくりくつろげる大好きなゲストハウスの一つだ。
ここはキッチンも自由に使用できるのでいつか長期滞在もしてみたいところ。
入口のドアを開ける時、ヨネスケが脱走してしまう恐れがあるのでそこだけ注意が必要だ。

わりと触らせてくれる
脱走の隙を窺う

5/31 9:00
準備をしてヨネスケに別れの挨拶をして出発する。
最終日はゆっくりすると決めていたので、忠別川沿いにまったりと進む。
田んぼが反射してキラキラしている。今日も天気がよくて気持ちいい。
そういえば、出発前はもう少し雨予報が多かったが蓋を開けてみたら、雨にガッツリ当たったのは初日の北見峠だけだった。
日が経つにつれて雨予報がくもりに変わり、くもり予報が晴れに変わっていた。今年も怒涛の晴れ女は健在だった。

朝のヨネスケ
忠別川沿いサイクリング
大雪山系が見える

5/31 10:30
東川町に到着。昨年より5月に来た時はなんと29度もあった気温が今日は18度。やっぱり去年が異常だったのだ。

これこそ5月の道北

街を走っているとベーグル屋さんの看板を見かけたので行ってみる。看板のビーバーが可愛すぎる。ここでベーグルを買ってから道の駅をぶらぶらし、どこか行くか自転車に戻るとカラスに買ったばかりのベーグルの袋を荒らされていた。やめい!と言いながら追い払う。カラスはかしこい。油断できない。

前歯出てる生物すき
やられた…

再度ベーグルを購入し、自由咖哩でカレーをたべて、ノマドへ。ノマドのゴローさんに、オススメの温泉を教えてもらったのでいつか行きたい。

その後は、ふらっと行ったせんとぴゅあで「常紋トンネル」のタコ部屋労働の本を読んだ。
かつて北海道で実際あった人権を無視した強制労働。調べてみると、今回野宿して通ってきた丸瀬布での工夫リンチ事件、今金で亡くなった工夫の話、あげ出したらキリがない。
愛してやまない北海道という土地であった歴史的事実。何者でもない自分に何かを変えられるとは思わないけれど、ただ知る、事実を知っておく。それは大事だと思っている。

5/31 18:00
旭川に戻り、先月も行った「べてい」で焼き鳥を食べてからバスターミナルで輪行準備をする。
この頻度で旭川に来るなら、そろそろ高速バスも回数券買っても良いかもしれない。
帰りの高速バスは「茶志内」を通る。4月の単発休みに敢行した「空知往復輪行旅」を思い出す。
何泊もしながらする旅も好きだが、往復輪行を使って少し遠出する旅も楽しかったのでまたやりたい。空知方面は高速バスがたくさん通ってるので輪行旅にはもってこいの場所だ。

この帰りのバスの中で、チルノワブログにわやの記事が上がっていることに気が付く。
記事の〆には、「そして彼女は今日も、まさに今も、北海道の何処かを爆走中である。」と書かれていた。
投稿された日付を見てみると5/29のお昼頃。きっとその頃は遠軽の街を出て上原峠に挑んでいた頃だろう。
お世話になっている自転車乗りの先輩である方にこうやって取り上げてもらえるのは素直に嬉しい。

誰かのためでも何でもない、何もないところから何も持ってない私が始めた、私のための旅だけど、誰かの目に留まり、誰かが何かを感じてくれる。誰かの何かになっているかもしれない。
誰に刺さらなくても良いけど、気が合う人、友達には刺さればいいなとは思うようになってきた。
そういう発信を、これからもしていけたら良い。
発信することは、私にとって人を信じることのリハビリなのだから。


「自転車峠越え旅 オホーツク内陸編」おわり


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