ジヴェルニーの食卓 【原田マハ】
「楽園のカンヴァス」にて山本周五郎賞を受賞するなど、「読む美術館」と名高い評価を得ている著者。
今作もまさに、「読む美術館」となる一冊です。
・美しい墓
・エトワール
・タンギー爺さん
・ジヴェルニーの食卓
の4篇からなる短編集。
アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、ポール・セザンヌ、クロード・モネ、フィンセント・ファン・ゴッホ…。名立たる芸術の巨匠たちの生き様を描く、史実にもとづくフィクションは読者を中世へと誘います。
かくいう私は、実はあまり美術の知識を持ち合わせておりません。
むしろ今作を読むことで、芸術家たちがどのような思いで作品を描きあげたのかを勉強させてもらいました。
もちろん、勉強するためにこの本を読んだわけではありません。
言うならば、「戦国武将が好きで、歴史マンガを読む」ときの感覚と似ています。
単純に興味があるから、面白そうだから読んでみると美術知識が少なからず、楽しんでいる間についてきます。
個人的に最も印象深かったのが、「タンギー爺さん」。
これはゴッホの作品名にもなっているタイトルですが、舞台はタンギー爺さんが営む画材店の娘と、ポール・セザンヌとの手紙のやりとりのみ。
2人の往復書簡にはある程度の期間が開いており、その間の出来事は手紙で徐々に語られていきます。
丁寧な、けれども感情をこめて手紙を書く様子が目に浮かんできます。
ひとつひとつの言葉を丁寧に紡ぐ作品全体の雰囲気がとても上品な味わい。
休日の夜に、落ち着いて読むといいかもしれません。
「ジヴェルニーの食卓」 原田マハ (2013)