ぼくはお金を使わずに生きることにした 【マーク・ボイル】
イギリス在住の著者マークが1年間一切のお金を使わずに生活した実験を綴ったものが今回の書籍だ。
「お金を使わない生活」と聞くと、ジャングルのような場所で狩猟・採集を中心とした縄文人のような生き方をしたのかと思われるがそうではない。
彼が目指すのは以下の3つだ。
お金を使わないこと
まずは与えることで、地域社会を循環させること
オフグリッド(ライフラインを使用しない生活)を徹底すること
自給自足的な生活というよりも、助け合いの精神を軸とし、環境破壊を防ぐために「お金を使わない生活」を実施したのである。
1.お金を使わない
生活をするにあたり、通常は様々な場面でお金を消費する。
家賃、食料費、衣服費、通信費など多岐にわたるこれらをマークは見事にゼロにした。
家は自らが運営するフリーエコノミーグループで奇跡的にトレーラーハウスをもらい受ける。
また、食料は自家栽培とスキッピング(スーパーなどで法律上廃棄された、まだ食べられる食料を拾い集める)を中心とする。
ライフラインでは、電機は手動発電と太陽光発電の併用。水道は主に川の水。ガスは使わず、ロケットストーブなるものを自作して熱源を確保していた。
サバイバルスキルが一般人と比べると高いからこそ、今回の実験は成功したであろうことが伺える。しかし、ひとつひとつの行動は私たちでも実行すればマネができるものだ。
2.与えることで、地域社会を循環させる
お金を使わない方法としてマークが掲げるのは、お金でなくスキルを与え合う仕組み。
また、常日頃から自分から他者へ与えていれば、いつかその行為が循環して自分に与えてもらうことがあるという考え方だ
日本でいうと「わらしべ長者」的な発想ともいえる。
本書の至る所で、彼はこの考えが実現し得ることを述べている。
giveの精神こそが、人生を謳歌するための必須スキルなのだ。
3.オフグリッドを徹底する
日々、私たちが使用している電気は火力・水力・原子力などの発電所によって作られたものだ。そして、その生産には多量の化石燃料が使われている。
化石燃料とは言わずと知れた「有限」な資源である。
今日の世界では、この限りある資源を前倒しで使用することにより繁栄を築いてきた。
本書ではこの状況をうまく表現している。
「株式会社「地球」の店長たちは四年間の短期契約で働いているので、次も契約を更新してもらえるよう、短いスパンでなるべく多くの利益を上げた。そこで、年間の収益を水増しして損益計算書の見ばえをよくするため、レジスターと陳列台を一部売却することにする。(中略)ビジネスの長期戦略として、まともな経営者なら絶対に勧めないやり方だ。」
まさにその通りで、資源の前借生活がいかに幼稚な考えであるかを思い知らされた。
一読者として、この言葉から「すべてをオフグリッドにしよう」とまでは行かないにしても、地球環境問題がいかに自身の生活に密接しているかを考えるきっかけとなるだろう。
4.自身の生活に置き換える
本書のような生活は実際のところ、私たちがそのまま実行するには無理がある。
しかし、他者との共存の中で生きること。giveの精神を大切にすること。資源を使用しない生活にひとつでも組み替えること。
これらのことは少なからず実行可能だ。
私は働くことのない生活を夢見るものの1人であり、節約のヒントとして本書を読み始めた。
本書に書かれているのは、お金に縛られすぎずに幸福な生活を送るヒントが書かれていた。当初求めていたものと、少しのズレはあったが今後の人生における何かしらのきっかけにはなっただろう。
お金を使わないためにはどうすべきか。
そんなことを考えさせてくれた良書でした。
ひとまず読み終わったこの本を誰かの読み終わった良書と交換して、お金を使わないで新たな本と出会いたいものです。