インタビューを受けない男ドクター・ドレー。アメリカ編集長がインタビューに成功!
発売後、すぐに完売となった、ドクター・ドレー表紙のWax Poetics Japan No.34。現在では、ヒップホップ界でナンバーワンの資産家となったドレーの歴史を紐解いた記事が話題となった。誌面は既に完売したが、ドクター・ドレーにまつわる珠玉記事をnoteに公開。
The Architect
未完の音楽建築
Dr. Dre
アメリカ本国版Wax Poeticsの創刊編集長であるアンドレ・トーレスが、かつて編集長を務めていたヒップホップ専門誌Scratch Magazine。現在はすでに休刊しているが、Scratch Magazineの創刊号の表紙を飾ったのはドクター・ドレーだった。ここでは特別に、編集長アンドレ・トーレスが執筆したドレーのインタビュー記事を翻訳し、掲載する。2004年の記事なので、今では旧聞に属する話もあるが、これが“ヒップホップ・シーンで一番インタビューを録るのが難しい男”とも言われるドクター・ドレーの貴重な肉声である事実は変わらない。
ドクター・ドレーは、自分が作った過去の音楽を聴かない。たとえば「Deep Cover」のベースラインの元ネタを聞き出そうとしても徒労に終わる。ドレーは自分の音源制作のプロセスをあまり明かしたがらない男でもあるが、そもそも話すこと自体をあまり好まない性格なのだ。しかし、彼が多弁になる必要はないのかもしれない。彼の音楽が多くを物語っているからだ。ドクター・ドレーは、ヒップホップがどこまで進化し、どこへ向かおうとしているのかを推し測る基準となる存在である。ヒットを量産することにおいて、彼が稀有な才能を有していることに、もはや疑いの余地はない。彼の手にかかれば、いかなるアーティストの音源も傑作と呼ばれるようになる。
数年ほど前(註:2004年現在)、彼は“Fuck rap, you can have it back(ラップなんてファックだ。ほら、返してやるよ)”と言っていた(註:「Forgot About Dre」の一節)が、それから3年が経った今も、彼はヒップホップに飽きたわけではなさそうだ。それどころか、ラップ・ゲーム自体を手中に収めているとさえ言える。目下絶好調の彼だが、話を聞いているとまだまだ快進撃は始まったばかりだという印象も受ける。ヒップホップというフォーマットに制限されている/固執している人々とは違い、彼は音楽に限界や境界線は存在しないと考えており、ヒップホップをネクスト・レベルへと押し上げようとしている。たとえば、40人編成のオーケストラを自在に操っているドレーの姿を想像してほしい。彼は本気だ。
念願が叶い、ついにドレーにインタビューすることができた私は、ビートについて、制作プロセスについて、そして人生について、彼にいろいろと話を訊いた。彼はこれまでに5千万枚以上のレコード/CDを売り上げ、誰よりも今の音楽シーンのサウンドに影響を与えてきた人物だが、今後も彼は、ビートを作り続け、リスナーの頭を振らすことに注力したいと語る。ドクター・ドレーには確固たるビジョンがある。そしてドレーは、そのビジョンを多くの人にわかってもらおうとしているのだ。
新作『Detox』はまだリリースしないそうですね。
アーティストのプロデュースを優先したかったんだ。俺は自分の制作曲にとことんこだわるから、新しいオリジナル・アルバムを制作するには、最低でも9~10ヵ月ほどかかってしまう。それだけの時間があれば、2、3人のアーティストのアルバムを仕上げることができる。だからいったん制作をやめることにした。すでに何曲か録ったし、俺のラップもいい具合にできていたけどね。ラップのネタは尽きないよ。もしも今、俺がレーベルを運営していなくて、手がけるべきアーティストがいなかったら、また話は違っていた。その場合は自分の音楽だけに専念できたと思うが、今は自分の会社を成長させること、若手を後押しすることを最優先にしている。自分のアルバム用に作ったビートも他のアーティストに回している。だが、今やっているプロジェクトが完成し、それを聴けば、文句を言う奴なんかいないだろう。それくらいの説得力があるんだ。
昨今のヒップホップにインスピレーションを受けていますか?
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?