音楽業界を一新するサービスBeats Musicは、今後、音楽の聴き方をどう変えるのか?
5月28日、アップルが突如Beatsの買収を発表した。買収金額は30億ドル。日本円にして約3,000億円。世界で最も稼ぐ企業のアップルにとって過去最大となった買収先は、なんと音楽企業だった。アップルが買収したのはふたつの企業で、ひとつ目は人気の高級ヘッドフォン・ブランド、Beats by Dr. Dreを擁するBeats Electronics。もうひとつは今世界的に注目を集めている定額制音楽配信サービスのBeats Musicだ。
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アップルが新たに仕掛けるビッグウェーブ
Beats Music
Beatsブランドは、音楽業界きってのイノヴェーターであるドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンのチームによって確立された。ふたりは音楽ビジネスとクールなライフスタイルを見事に融合させ、世界的な人気を獲得したのである。
ドクター・ドレーについては説明不要だろう。NWAを経てソロに転身し、プロデュース業に活動の幅を広げつつ自身のレーベル、Aftermathを設立、スヌープ・ドッグやエミネム、50セント、ケンドリック・ラマーらをプロデュースして現在に至る。
ジミー・アイオヴィンは、Universal Musicの傘下にあるレコード会社、Interscope Geffen A&MのCEO兼会長を務めてきた。レコード会社を立ち上げる前は、ジョン・レノンやブルース・スプリングスティーンなどをプロデュースし、その後Interscope Recordsを立ち上げ、Universalの仲間入りを果たし、グループ内で最も活発で成功しているレーベルにまで成長させた。レディー・ガガ、エミネム、マドンナ。これらの世界的アーティストは現在Interscope Geffen A&M所属である。このことからも、このレーベルとアイオヴィンの影響力の強さが窺える。
市場を席巻したBeats
両者は2008年にBeats by Dr. Dreを立ち上げ、高級ヘッドフォン市場に勝負を挑んだ。それまで高級ヘッドフォンといえば、ステレオ愛好家が家でじっと音に聴き入るイメージだった。Beats by Dr. Dreはその常識を覆し、それまで存在しなかった製品を世に送り出した。それは、ファッショナブルでカラフルで誰もが人に自慢したくなるような高級ヘッドフォンだ。
ドレーとアイオヴィンは、専門家のレビューや広告展開など、通例的な販売モデルにこだわらず、独自のマーケティングを実践した。彼らはBeatsのヘッドフォンを人気アーティストのミュージック・ビデオで積極的に露出させ、Beats製品を持っている人はクールであるというイメージを若者に向けて発信したのだ。
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