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シナリオサンプル『メモリー』
《あらすじ》
ある朝、目を覚ました男は「自分に関する記憶だけ」がないことに気づく。
失った記憶を取り戻すため、男は自身が勤めている会社に向かうと…。
《登場キャラクター》
・サム・スミス(主人公)…男性
・ジェイド・ウィルキンソン…男性
・ミシカ・ブラウン…女性
本文内:セリフ描写「」/状況描写【】
《本文》
【ピピピピ…目覚ましの音で男は目を覚ます】
男「ふぁ…もう朝か。…さて、今日は…」
【今日のスケジュールを確認しようとしたところで男の思考が止まる】
男「今日は…何をすればいいんだ?
【今日の予定を思い出せない男、思い出せないのは予定だけではなく】
男「俺は…誰なんだ…?」
【男は自分に関することを思い出そうとするも】
男「名前…年齢…誕生日…ダメだ。何一つとして思い出せない。」
【自分が寝ていたベッドから起き上がり、机の上を見ていると…スマホと社員証が置いてある。社員証に書いてある名前を見てみると】
男「サム・スミス…。」
【急いで洗面台に向かい、鏡に映った自分の顔と社員証に写っている男の顔を見比べる】
【酷い寝癖とだらしなく生えたヒゲを除けば、社員証の男と顔の特徴は一致している】
男「サム・スミス…これが俺の名前か。」
【サムは社員証に書いてある会社の名前を確認する】
サム「M.M.Mカンパニー…ここが俺が仕事場ってことか?」
【机にあったスマホを開き、会社について調べようとするも】
サム「パスコードか。はぁ…思い出せないな。」
【スマホを置き、ため息を漏らすと…壁にかけてあったカレンダーに目がいく】
サム「今は、10月か…ん?」
【さらにカレンダーをよく見ると、12日のところに丸が書いてあり、隣にウィルと書いてある】
サム「10月12日…この日に何かあるのか?そうだ、今日の日付は?」
【もう一度スマホを手に取り、電源をつける】
【スマホのロック画面に表示された時刻と日付を確認する】
サム「今は…10月20日の午前7時か…。」
【再びスマホを置き、ベッドに寝転がるサム】
サム「…とりあえず、会社に行ってみるか。」
【シャワーを浴び、髭を剃り、無造作に放り出されていた恐らく自分のものであると思われるスーツに袖を通し、身支度を終えるとサムは家を出た】
【社員証に書いてあった住所を頼りに、会社の前までたどり着く。】
サム「ここで、あってるよな…?」
女「おはよう、サム。」
サム「あぁ、おはよう…ジェシカ。」
【サムは自身の発言に耳を疑った】
【今、すれ違いざまに挨拶を交わした女性の名前はジェシカ…間違いはない】
サム「ジェシカだけじゃない…あいつはマイク。あいつはエマ。リッキー、アンジェリカ…ニア…」
【自分の名前は思い出せなかったのに、他の人の名前はハッキリと出てくる】
サム「何で、他の人の名前は思い出せるんだ?」
【当然の疑問を口にするサム】
【一人の男がサムに話しかける】
男「サム、何でそんなとこに突っ立ってるんだ?」
サム「あ、あぁ…何でもない。大丈夫だ。」
【今、自分に話しかけてきている男の名はジェイド・ウィルキンソン…これもハッキリしている】
ジェイド「そうか?なら、早くオフィスに行こうぜ。」
サム「あぁ…そうだな。」
【サムはジェイドについていき、自分のデスクがあるであろうオフィスに到着する…が、当然自分のデスクがどこにあるかは思い出せない】
【サムは近くにいた女性社員に話しかける】
サム「なぁ、悪いんだけどコーヒーを淹れて俺のデスクに持ってきてくれないか?」
女「え?急にどうしたの?」
サム「あー…その…」
【名前を呼ぼうとした瞬間、違和感を覚える…目の前の女性の名前が出てこない】
【咄嗟に女性が首からぶら下げている社員証を見て、名前を把握する】
サム「君の淹れてくれたコーヒーが飲みたくなってね、頼むよ…ミシカ。」
ミシカ「ふふっ、もうサムったら…わかったわ。」
【ミシカがパソコンを置いた場所を見て、自分のデスクの場所を把握するサム】
【自分のデスクを思われる場所に座ると】
ジェイド「おいおい、サム…勘弁してくれよ。」
【隣のデスクにいるジェイドの発言にドキッ…とするサム】
サム「何か…してしまったか?」
ジェイド「とぼけんなよ。朝からイチャイチャしやがって…やるなら家でやってくれよ。」
【笑いながら指摘してくジェイド。どうやら怒っているわけではないようだ】
サム「あー、その…イチャイチャっていうのは…」
ジェイド「はぁ…ほら、向こう見ろよ。お前の可愛い彼女がこっち見てるぞ。」
【ジェイドに言われた方を見ると、ミシカがこちらを見て恥ずかしそうに微笑んでいる】
サム「ミシカが…俺の…恋人。」
ジェイド「どうしたんだ?」
サム「あー、いや…何でもない。さぁ、仕事を始めようか。」
【誤魔化したように笑いながら、前を向くサム。しかし、自分の業務内容が思い出せない】
【ふと、デスクのパソコンを見ると自身のタスクに関する付箋紙が貼ってあることに気づく】
サム「顧客整理…これが俺の仕事か?」
【パソコンの電源をつける。どうやらロックはかかっていないようだ。】
【とりあえず付箋に書いてあったことを頼りに、仕事を始めていくサム】
【仕事を始めてから数時間経った頃…】
サム「とりあえず、こんなところかな…」
【何とか自分の仕事をやり終えるサム。この数時間を通して、サムは3つのことに気づく】
【この記憶喪失は自分と関わりが深いことほど、思い出せないこと】
【自分への態度から察するに…ミシカは自身の恋人、隣に座っているジェイドは自身の親しい友人であること】
【自分が勤めているこの会社は『M』と呼ばれるものを売り買いしていること】
サム「Mって…一体なんなんだ?」
【ボソ…と呟くサム】
【気づくと昼休憩の時間になっていた】
【サムは席を立ち上がり、ミシカに話しかける】
サム「なぁ、ミシカ…よかったら一緒にランチを食べに行かないか?」
ミシカ「ふふっ、あなたから誘ってくるなんて珍しいわね?いいわよ、行きましょ。」
【サムはミシカをランチに誘った。恋人であるミシカから自分の情報を聞き出すためだ】
【会社の近くのカフェに入る】
サム「なぁ、ミシカ…俺たち付き合ってどんぐらい経つかな?」
ミシカ「んー、もう3年になるんじゃないかしら?」
サム「そうか、3年か…そういえば、ミシカは今なんの業務を担当してるんだっけ?」
ミシカ「あなたと同じよ。まぁ、成績はあなたの足元にも及ばないけど。」
【ミシカとの会話から必死の自分の情報を探るサム】
【年齢は32歳、会社では『M』のセールスを担当していて社内ではトップクラスの成績を収めている真面目で几帳面な人間…それがサムという人間らしい】
【『M』が何なのか気になったサムはそれとなくミシカに探りを入れる】
サム「それにしても、Mはよく売れてると思うよ。自分でもあんなに売れるとは思ってなかったから。」
ミシカ「えぇ、確かにそうね。私も初めて聞いた時はどうやって売るの?って思ったけど、技術の進歩は凄いわよね。」
【そういうとミシカは銀色の光線銃のようなものを取り出す】
サム「なっ、どうしたんだミシカ!?」
【突然物騒なものを取り出したミシカに動揺を隠せないサム】
ミシカ「何をそんなに驚いてるの?私たちにとっての必需品じゃない。」
【驚くことにこの光線銃は自分たちの仕事にとっては欠かせないものらしい】
【しかし、サムは自分がその光線銃を持っていないことに気づく】
サム「あれ、俺のやつはどこにやったかな…?」
ミシカ「まさか、家に忘れてきたの?…そういえば、昨日メンテナンスするって言ってたものね。」
サム「メンテナンス?あぁ…そうだ…きっとそうに違いない…。」
【正体不明の『M』という商品、そして謎の光線銃…サムは自身の仕事が何なのか全く見当もつかなかった】
【ランチを終え、デスクに戻ると隣のジェイドが話しかけてくる】
ジェイド「愛しの彼女とのランチはどうだった?」
サム「え?あぁ…ははっ、良い時間だったよ。」
【そう答えて席に着くと、ふとカレンダーのことを思い出す】
サム「なぁ…ウィル。」
【隣にいるジェイドをそう呼んでみるも、反応してくれない】
サム「……ウィル?」
【肩を叩きながらもう一度声をかけると、驚いた様子で】
ジェイド「うぉっ!悪い悪い…ちょっと考え事してた。」
【ウィルと呼んだことを言及してこないことに少し安心するサム】
サム「あぁ、邪魔してすまない。なぁ、今月の12日…覚えてるか?」
ジェイド「12日…?あー、もちろん覚えてるさ。たしかー…二人で釣りに行った日だよな?」
サム「釣り…そうだ、あー…楽しかったな?」
【どうやら、今月の12日はウィルと釣りに行っていたらしい】
ジェイド「釣り、楽しかったな?」
サム「あぁ…楽しかった。」
【そんな会話を交わして、午後の業務に取り組む】
【仕事を終えると、サムは今朝自分が目を覚ました家に帰ってきた】
【家の前に表札にはサムと書いてあったことから、ここは自宅で間違いないのだろう】
サム「…そうだ、光線銃!」
【サムは部屋を捜索する。机の引き出しを探ってみるとミシカが持っていたものと同じ見た目の光線銃を発見する】
サム「本当に俺も持ってた…。これは…何なんだ?」
【サムは銃口を壁にむけ、目を瞑りながら引き金を引く】
【ピュンッ!…という音がして、恐る恐る目を開けると特に何も起きた様子はなかった】
サム「何かが壊れた様子もない。誰かを攻撃するためのものではないのか?」
【疑問がさらに深まるサム。他にも何かないかと再び部屋の中を捜索し始める】
【ふと、クローゼットに目が止まると一つの疑問が頭に浮かぶ】
サム「なんでスーツは床に放り出されてたんだ?」
【聞くところによると自分は真面目で几帳面な人間。そんな人間が果たしてスーツを脱ぎっぱなしにするのだろうか】
【クローゼットに何かあるのではないかと推測したサムはゆっくりクローゼットを開けていく】
サム「うわぁ…っ!これは…」
【クローゼットの中で見つけたものに腰を抜かし、床に座り込むサム】
サム「死体…何で、俺の家に…っ。」
【クローゼットの中には明らかに死んでいると思われる男の姿があった】
【サムは男の顔を見てみる。しかし…】
サム「ダメだ…思い出せない…。」
【サムは男に関する情報を何一つ思い出せなかった】
【しかし、それが自分に深く関わりがある者だからなのか…それとも、全くの他人だったからなのか…サムにはわからなかった】
サム「俺が…やったのか?どうして…」
【必死に思い出そうとするサム。しかし、やはり何も思い出せなかった】
【男の足元を見てみると、自分やミシカが持っていたものと同じ光線銃が落ちている】
サム「この男もウチの社員なのか?」
【サムは男の体を調べると、男のものと思われる社員証を見つける】
【男の名前はウィリアム・ヘンダーソン。間違いない、彼は自分と同じ会社に勤める社員のようだ】
【再びウィリアムを調べるサム。すると彼のスマホを見つける】
サム「ロックは…かかってない!」
【スマホを開いて中身を確認するサム】
サム「…なんでもいい…何か、情報を…そうだ会社!」
【ブラウザを開き、会社の名前で検索をかける】
【検索結果の一番上に会社のホームページが出てくる】
【ホームページを開き、会社の概要を確認すると】
サム「メモリー・マネー・マーケット…?」
【人の記憶を買取り、それを別の人に売るというのがその会社の事業内容だった】
サム「記憶を売買する…?他には…」
【スマホの写真フォルダを開くサム、そこには何枚もの書類の写真が保存されていた】
【保存されていた書類に目を通していくサム】
サム「これは…横領の証拠か…?」
【書類は二人の従業員が会社の金を横領しているという内容だった】
ミシカ「横領をしている社員は…ウィルと…ミシカ…?」
【予想外の名前に目を疑うサム】
【徐々に記憶が蘇っていく】
【サムは同僚で親友のウィリアムと横領の証拠を掴んだ】
【横領していたのは隣のデスクだったジェイドとほとんど話したことのないミシカ…という名前の女性社員だった】
【10月12日、告発の手立てを考えるためウィリアムと家に帰ってくるとジェイドとミシカが待っていた】
【そこで口封じのために、ウィリアムは…ウィルは、殺された】
【俺は生き残されて…それで…】
サム「俺は記憶を…消された…」
【自身の持つ光線銃に目を向ける】
【これは武器なんかではない。人から記憶を回収するための道具だったのだ】
サム「そうか…そうだったのか…全部…」
「全部思い出したのね。」
【声がして振り向くと、ミシカが光線銃をこちらに向けて立っていた】
ミシカ「なるほど、ウィルのスマホね…確かに見落としてたわ。」
サム「ミシカ…どうしてこんなことを…。」
ミシカ「話す意味ある?どうせ忘れるのに…。」
【ミシカが引き金を引いた瞬間、何かを吸われているような感覚に陥るサム】
サム「う…ぁ……っ。」
【逃げようと立ち上がるも、やがて意識を失い…ベッドへ倒れるサム】
【ガチャ…とドアが開き】
ウィル「終わったみたいだな。…で、今回はなんだった?」
ミシカ「ウィルのスマホよ。」
【ミシカはジェイドにスマホを渡す】
ジェイド「なるほどな…そんじゃ、こいつは処分しとく。」
【ウィルのスマホをポケットにしまうウィル】
ジェイド「他には何かあるか?」
ミシカ「この二人は用心深いから…まだ、何かを隠してるのかも。」
ジェイド「あぁ、くそっ…いつまでこんなこと続けりゃいいんだ。」
【意識のないサムの身ぐるみを剥がし、調べるウィル】
ミシカ「まぁ、もしまだ横領の証拠が隠してあるなら見つけてくれるでしょ。…明日のサムが。」
ジェイド「ま、それもそうか…。それじゃ、とっとと退散するか。」
【ジェイドはサムのスーツを無造作に投げ捨て、二人は部屋を後にした】
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【ピピピピ…目覚ましの音で男は目を覚ます】
男「ふぁ…もう朝か。…さて、今日は…」
【今日のスケジュールを確認しようとしたところで男の思考が止まる】
男「今日は…何をすればいいんだ?」