野人の見る夢Part1

アヴェンジ・ヤードッグ。幼い頃に両親を内戦で亡くし野生化した状態で育った男。その後とある資産家に拾われ人類から人間へとなるも恩人をある事件で失い【もうこんな想いをしなくない】とまた野生の人類となった。

そんな彼がいつものように狩りを終え獲物を担ぎながら棲家に帰ろうとしているとき、黒髪オカッパの和服を着た一見すると市松人形に見えるこのジャングルには似つかわしくない少女がとてとてと歩いてくる。彼の野生の勘が彼女に害意はないことを知らせているので警戒はしない。

「こんにちは、お兄様」

「コンニチハ、マイゴ?」

「安心してください。迷子ではありませんわ、お兄様と遊びに来たのです」

「アソブ?オレト?」

「はい、私と遊んでくれますか?」

「イイヨ、アソボウ!」

突然の来訪者にもきちんと対応する。ジャングルのガイドというか迷子案内をしていた彼は相手が子供なのもあって遊ぼうという申し出にノータイムでOKを出した。すると彼の意識はストンと落ちる。

「夢から醒める条件…鳴子を見つける…?」

彼は彼の頭の中から不要に近いと判断して忘れかけていた言葉を何故か流暢に話していた。

「おはよう、アヴェンジ。よく眠れたかい?」

見るとそこには事件で殺されたはずの恩人の姿があった。アヴェンジの涙腺は瞬時に決壊する。

「生きてたんだ…生きてたんだな…!うぐっ、ひぐっ!」

「おおぅ!何を泣いてるんだ?昨日もおやすみと言って同じ部屋で寝ただろう」

記憶を遡ると確かにそうだった気がしてきた。

「そうだった、そうだったな…グスッ。変だな俺、変な夢を見てたんだ」

「悪い夢の中で私が死んでしまったのかい?」

「そうだ、そうなんだ!悪い奴らに殺されて…俺は守れなくて…もうこんなのは嫌だって森に戻って…!」

「あぁ…、それは辛い夢だったなぁ…よしよし」

平均的なスタイルの壮年男性が巨体の青年の頭を撫でる。心温まる、平和な世界。

ガシャアァアァン!!!!

家の扉が破壊される音がした。何か招いていない客が来たようだ。

「俺が先に行く、お前は俺の後ろについて来い。離れるなよ」

「あ、ああ。分かった…」

突然の襲撃者に怯えながらも恩人はアヴェンジの後ろをついていく。

「世界システム管理局の者です。死したはずの者が生きているという観測をしたので来ました。あっ、いましたね。即刻処分させていただきます」

聞き覚えのある声。見覚えのある顔。市松人形の様なその姿。数十人はいるだろうか、一個中隊にもなりそうな大軍団を率いる彼女が鳴子だと脳が知らせる。彼女を捕まえればこの夢は終わる。しかしこの夢から醒めたくない。だが、ここで戦わなくてはまた恩人を守れない。

「俺は…俺はどうすればいい?」

恩人に尋ねる。するとさっきまで怯えていたのが嘘かのように落ち着いた様子で

「戦いなさい、今度こそ、私を守るために。悪夢から醒めるために」

「………任せろ、今度こそ守り抜いてみせる」

かつて叶わなかった事を叶えるために、男は世界システム管理局とやらとの防衛戦に挑む…

続く

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