吉澤嘉代子の『ミューズ』
吉澤嘉代子がとても好きで、何回かライブにも行ったことがある。
が、まあ年中聴いている訳ではないので今日久しぶりに聴いて「元気出るなァ…この気持ち伝えたいなァ…」と思った次第だ。
吉澤嘉代子の曲の中で、『ミューズ』の一節が特に好きだ。
サビの、
かがやきは傷の数だけ
いびつな傷跡が乱反射した
というところ。
※1:27ぐらいから。
安達祐実、ジャケットもMVも可愛すぎる。
『ミューズ』は(主に)女性の応援ソングというコンセプトがある。
「前を向いて明るくいこう!」みたいなメッセージではなくて、ありのままの自分をただ認めてくれるような優しい曲というイメージ。
歌詞全体を通して前向きで人を傷つけない言葉が丁寧に選ばれていると思う。
2番サビの、
鉄はとけてさめて形になる
などは、まさに「雨降って地固まる」みたいなものだ。
その文脈において、語りかける女性の傷跡を「いびつ」と認めた上でそのうつくしさを伝えるのがすごいなと思う。
「乱反射」という言葉もよくて、光が当たった瞬間の、ダイヤモンドのようなまばゆい煌めきを表すのにぴったりな言葉だと思うけど、傷跡がきれいに塞がっていたり、覆われていたりすれば「乱反射」は起こらないので、やはり「いびつ」という言葉がここでは必要なのだと思う。
それでも、相手の傷跡を「いびつ」と表現するのは勇気がいると思う。もしそこに光が当たらなければ、聴いている側は「いびつなんだ…」で終わってしまう。
そこに来て、サビの力強いメロディーとストリングスがいい。吉澤嘉代子本人が傷跡に光を差し、「ほら、うつくしいでしょ!」と言ってくれているような気がして、頼もしさと、表現における覚悟・責任感を感じるのだ。
このサビのまばゆさがあるから、今まさに傷ついている時でも、前を向いて歩いている時でも、『ミューズ』は常に自分の傷跡のうつくしさに自信を持たせてくれるのだ。
僕は男性で、本当であれば「この曲は男も勇気づけられて最高です!」と言いたいところだが、吉澤嘉代子がここで讃える「うつくしさ」は彼女の「女の子観」に根付くところから来ていて、女性において一層大切なものだと思うので、そのうつくしさについて男目線で「わかるわかる」と語ることは避けた方が良いとは思う。
思うけど、それでも最高だと言いたい。
最高です。
おわり。
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