風の憧憬
鼻腔の奥深くに残る匂いがある。
口に含んだ梅の味を想像するだけで分泌される唾液の様に今でも追体験出来る匂いがいくつか、、。
そんな残り香にいつまでも
鼻、ただの呼吸器官、ただの感覚器官
酸素を取り込む為、匂いを嗅ぎ取る為の受容体
生物の感覚器官は生存性を向上させる為に発達してきた。獲物を捉える為、危険を知覚する為、より良い異性を見分け優れた種を残す為
だけど鼻は刺激を感じるためだけの物じゃない
湿度、気温、趣き、時間、情景、色、あらゆる物が匂いとして細胞の隅々まで記憶される。
耳で言えば風鈴の音を聴くと涼しくなるし蝉の鳴き声を聴くと蒸し暑く感じるでしょ。
どこかで嗅いだか忘れちゃいけない優しい匂いがするとどこともわからず駆け出してしまいそうになる。微笑む事もあれば涙を浮かべる事もある。
5年が過ぎた今でもふとした時に鼻を通して目頭を刺激する金木犀の香り。
これがこびりついて取れないのは僕だけなのはわかってる。
色褪せない、大切な匂い
今日も二つ、好きな匂いがしたよ。