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あかもく先生C102新刊「美しい夢だけが残る夏」からいただいた夏を語る受験生


ごあいさつ

こんにちは。受験勉強の檻に閉じこめられ、冷房の効いた部屋から夏を眺めることしかできない高校三年生の私です。花火にもコミケにも行けなかった……のですが! 夏成分はこの御本でめいっぱいいただきました。あかもく先生の作品と出会えた私は幸せ者だと思います。
女の子の表情がどれも最高で、どこか懐かしい夏の風景は眼前に迫ります。爽やかな風に吹かれ、私もまだ知らない場所への新たな一歩を進んでいくことが出来そうです。

もちろん全部最高なのですが、今回は特に印象的だった4作を取り上げさせていただきます。
それでは、順番に感想を書きます!


「美しい夢だけが残る夏」メロンブックス販売ページ
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2048773


『日々を洗い流してしまえたら』

ページを開いて目に飛び込んできたとき「かわい~!」の一言でした。本当に顔が良い。ですがタイトルを読み、巧妙なまぶたのラインと瞳にたたえた少女の表情の意味を考えるうちに、少女が二言も三言も語っているようで――逆に決して言語化できないものでしょうか――圧倒的な「感情」が一枚の絵から放出されていることを受け止めざるをえませんでした。それは今回のテーマにあるように、懐古と寂寥感によるものでしょう。
私がこの絵を目にしたとき、時が止まってしまったように錯覚してしまったのは、女の子に見惚れてしまったという理由だけでなく、日常が見事に切り取られたことによる効果があったのかもしれません。実際の日常だと捉えてしまったからこそ、動き出さないことの不思議が浮き出たような。日常でふいによぎる一瞬の憧憬が表情にありありと浮かんでいます。
バスは進むものであるはずなのに主人公は過去を顧みているという、ジレンマをはらんだ絶妙な色合いです。


『「少し切りぎちゃったかな……?」』

かわいい顔が近くてどきどきする、こちらも日常の1ページ。夏って日常が映えますよね。冬も好きですが。生活を彩る四季のありがたみは芸術でこそ感じさせられ、あらためて日々の生活に溶け込んでいくものなんじゃないかと思います。つまり、あかもく先生の絵のおかげで毎日がちょっと楽しくなるということです!
さて作品の感想に戻りますが、月日は8月下旬ということでもうすぐ学校が始まるのかな……? いまの私と同じですね。
だからこそ級友と久々に会うにあたって髪型を気にしているのでしょうか。純粋な瞳には夏が終わることへの恐れなぞないようで、麦茶とともにどこか弛緩した空気が夏のけだるさを感じさせます。この雰囲気が次ページとの鮮烈な対比と繋がるのもよいですね。


『炭酸が抜けてしまう前に』

眩しい輝きだけが夏じゃないということを分からせられる作品ですね。
構図がとても素敵です。赤と青を盛りこみ陰影も効果的、技巧の限りが尽くされた淡く深い色彩で描かれる、夏らしく高い空と一筋の飛行機雲、深い海からはエッジの効いた鋭さ。そこに重ね合わされたラムネ瓶のスパークリング、少女の髪を揺らす潮風からは涼しさを感じます。
果たして、目じりに浮かぶ泡は炭酸の気泡なのか。前二作では温かみいっぱいの頬だった少女の表情からは温度が消え去り、見事な対比となって爽やかさが胸に凍みます。ラムネ瓶のなかを満たし、揺られて今にもこぼれそうな炭酸飲料は、少女の溢れそうな張りつめた感情の暗喩のようです。水の中で苦しんでいるといった捉え方もできるかもしれません。
工夫が凝らされた表現の極み。これも、いやこれこそが夏なんだ……! と納得させられました。


『まだ知らない場所へ向かおう』

こちらが一冊の終わりを飾る一枚であると同時に、私の今回一番のお気に入りです!
晴れているのにビニール傘――ここで、あかもく先生の過去作から想起させられるのはビニール傘が「憂い」の象徴であることです。当然設定上別人ではありますが、タイトルの通り新天地へ向かう少女に傘を広げさせた意図は無視できないものでしょう。

注)ビニール傘といえば……あかもく先生の過去作「溢れる救難信号」と「淡い恋と寂寥」では切ない表情に胸が締め付けられます。

ビニール傘(≒憂い)を背負ったうえでの、前を向く姿! そこには複雑な感情がよぎります。一連の作品で描かれてきた夏の眩しさだけでなく、「炭酸が抜けてしまう前に」の裏にあるような、ビニール傘は少女の乗り越えてきた苦しい思い出を示そうとする小道具なのかと推察します。
ですが、一つ確かなのは現在の空が雨をくぐり抜けた後だということ。青空が晴れ渡っており、少女もまた新たな世界へ向かうということです。これは人類への夢と希望のメッセージでしょう。
ひまわりのストラップをつけて夏を振り返りながらも、カバンを抱えて曲がり角に至る。
絵をめくるたびに夏の情景と少女の純粋さに胸をときめかせ、懐古していた読者を未来への展望に導く、トリを飾るのに相応しい絵だと受け取りました。


おわりに

前回の感想からもう一年前になるみたいです。あかもく先生に温かいお言葉で感想をお褒めいただき、すごく嬉しかったのを思い出します。
今回は当社比約2倍の分量が書けたので過去の自分は越えられた気がします(気持ちの面で)。

またお会いしましょう。受験が終わった次の夏は、いっぱいやりたいことがあります!


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