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【小説ワンシーン集】英雄ロベルト対機人魔王

 空の向こうからマシンドラゴンの姿が見えた。全盛時代の技術が使われているのは明らかだが、しかしロベルトが知る当時の運用思想からはかけ離れているものだった。
 航空能力を持つ軍事兵器をわざわざドラゴンの姿にするなどというのは明らかに無駄だ。しかしこの時代の文化や価値観を考えれば、ドラゴンの姿というのは強力な威圧効果をもたらす。
 そういったものを考慮して、機人魔王は全盛時代の技術を使って新規に設計したのだろう。

「やれるか?」

 ロベルトはフレデリカに問う。
 
「もちろんですとも、ロベルト様! このフレデリカ・芍薬・フラウにお任せください!」
 
 フレデリカが変身装置を起動し、マジックアーマーを装着する。ロベルトが使う接近戦モデルとは違って、こちらは魔法砲撃モデルだ。
 アーマー腰部からのびたアンカー付き補助足がフレデリカをその場に固定する。

「火器管制装置を使わずマニュアル照準で撃て。マシンドラゴンを一撃で倒せなかったら、私は君を仲間と認めない。大人しく実家に帰れ」
「わかっておりますわ! この一撃で、私がただのハッタリで天才美少女魔法使いを自称しているわけではないとロベルト様にご理解いただけるはずです」

 フレデリカが大型魔法杖を構える。

「おりゃー!!」

 掛け声とともにフレデリカが魔法杖のトリガーを引いた。
 空気の振動を感じるほどの轟音とともに魔力弾が発射される。それは一直線にマシンドラゴンへと向かっていった。
 マシンドラゴンは発射の一瞬前に回避行動を取っていた。大出力の魔法攻撃ほどセンサーで予兆を察知されやすい。
 機体の各所にある魔力スラスターでマシンドラゴンは自らの巨体を軽快に動かせる。
 
 マシンドラゴンが魔力弾を回避した。
 ロベルトはやはり駄目かと思う一方でホッとした。ナターシャ・牡丹・フラウのひ孫を危険な戦いに巻き込まなくて済む。
 その時、魔力弾が直角に曲がった。高い機動力を持つマシンドラゴンもこの挙動にはついてこられずに貫かれた。
 動力部に被弾したマシンドラゴンが爆散した。

「どうですかロベルト様!」

 変身を解除したフレデリカが満面の笑みを見せた。

「見事だ。約束通り、同行を認める」
「やりましたわ!」

 ロベルトが仲間を持つのは久しぶりだった。最後の仲間はフレデリカの曾祖母、ナターシャだった。
 今でこそ魔法使いの名門とされているフラウ家だが、初代当主のナターシャが実は落ちこぼれだったという事実を人々は忘れつつあった。
 引っ込み思案で落ち込みやすいが、根気は人一倍あったナターシャ。そんな彼女にロベルトがほとんど気まぐれで魔法を教えたのが出会いだった。

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