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シーカー・ダブルナインの冒険
警報がコクピットに鳴り響く。計器のほとんどは異常を示していた。
私の宇宙船は惑星の重力に囚われ、地上へ引きずり下ろされつつあった。
宇宙船のエネルギーを全てシールドに回す。私に出来るのはこれだけだ。
墜落による激しい衝撃。シールドで私の命は守られたが、宇宙船は深刻な損傷を負う。
悲嘆にくれる時間はない。私は周囲の安全確認で船外へ出た。
墜落地点の近くに廃村があった。建物や放置された日用品から察するに、文明レベルは地球史の産業革命以前といったところか。遭難中でなければ、7番目の地球外文明の発見に喜んでただろう。
石造りの建物から物音が聞こえる。戦闘音と人の声。この星の言語を知るため、思念サンプリング式翻訳機を起動しつつこっそり近づく。
建物内では杖を持った少女が悪魔に襲われていた。
少女の周囲に仲間らしき者達の死体。おそらく悪魔を倒そうとして負けたのだろう。
私は腰のエネルギー銃を抜いた。
遭難中に人助けする余裕などない。現地住民に不用意な干渉をするべきでない。そんな事は分かってる。だが理性を超える良心が私を動作させた。
『あんたは人が良すぎるから、厄介事に巻き込まれないか心配だよ』
引き金を引く時、死別した母の言葉を思い出した。
必殺の熱線が悪魔を貫く。生体反応消失。
少女は私を見る。きっと私の姿は奇異に映るだろう。最悪、悪魔の同類と思われるかもしれない。
「勇者様! ああ、ついに現れたのですね!」
予想外の反応だ。勇者だって?
「誰かと勘違いしてないか?」
「何をおっしゃいますか! その凛々しいお姿は伝承の通りです。あの壁画をご覧ください。あなたの勇姿を描いたものです」
少女の指さす壁画には、私と同型らしきアンドロイドが悪魔と戦っている姿が描かれていた。
私の脳裏に再び母の、正確には私を製造した科学者の言葉が蘇る。
私は厄介事に自ら飛び込んでしまったようだ。
【続く】