見出し画像

スペースバンブーエルフ

ユグドバンブーとバンブーエルフ』の続編です

 かつて竹取の翁と呼ばれたバンブーエルフが、月人に娘を連れ去られてから1万年の時が過ぎた。
 
「シチマ・ザサ、今までよく私に付いてきてくれた」

 竹取の翁から竹取王《キング・オブ・バンブーテイカー》と名を変えた彼が私に感謝の言葉を伝える。
 
「わが王よ、それはまだ早いかと。全てはカグヤ様を救い出したときに」
「ああ、そうだな」

 我々は今、宇宙にいる。
 竹取王の娘、カグヤが月人に連れ去られる直前に残した竹の苗は、世界竹として宇宙に届くほどまで成長した。
 当初は世界竹が月に届くまで成長を待つ予定だったが、すでに宇宙船を開発しているのでその必要はない。
 現在の世界竹は我々バンブーエルフによって軌道エレベーターに改造され、宇宙と地上をつなげる架け橋となっている。

「シチマよ、全軍に出撃を通達せよ。これより我々は月へ向かう」
「ハッ!」

 それから私と竹取王は100隻ものバンブー宇宙戦艦へと月へと向かった。
 勢力圏に入った途端、月人は我々を即座に攻撃してきた。強力なビーム砲による攻撃がバンブー宇宙艦隊に襲いかかるが、撃沈される艦は一つもない。

 我々の艦の装甲はバンブーカーボンナノチューブで作られている。ウロン大陸に育成する竹を炭にすると、そこから特殊な炭素が採取できる。これを使ったカーボンナノチューブは通常のものよりも遥かに優れた性能を発揮するのだ。
 
 かつては神に例えられるほどの力を持った月人だが、今ではバンブーエルフのほうが高度な科学力を持っている。
 なぜならカグヤ様を連れ去った1万年前から、月人の文明は一歩も成長していないのだ。そのことは、密かに月へ潜入していたバンブーエルフ忍者によって判明している。
 おそらく不老不死であるのが原因だろう。決して死なないからこそ、文明がある水準に達した時、これ以上は必要ないと成長を止めてしまったのだ。
 
 程なくしてバンブー宇宙戦艦は月の首都を占拠し、我々はカグヤ様が捉えられている宮殿へ乗り込んだ。
 そこでは月人と白兵戦となったが、ここでも我らが圧倒した。
 月人は強力なビームライフルで応戦してくるが、我々は対ビームコーティングが施された世界竹の笹で作ったマントで防御している。
 
 我々は圧倒的に優勢だが、それでも相手は不死という強力なアドバンテージを持っている。なので、竹槍を使って敵をその場に縫い付けて無力化している。
 すると新たな月人の一団が現れた。敵の増援かと思ったが、しかし彼らの装備は今まで相手にした敵とはあきらかにことなる。
 
「我々はあなた達の敵ではない! あなた達と同じく、カグヤ様の救出を望むものだ!」
「私は近衛隊長のシチマ・ザサだ。事情を聞かせて欲しい」

 私は部下たちに武器を下げさるよう命じつつも、竹取王に危害ば及ばないちょう注意する。

「ギョクト・ラビだ。話が通じる相手で良かったよ。我々は停滞した月文明を再び成長させるために、不死の力を捨てた者たちだ。カグヤ様は我々の理念に賛同し、月の王の后という立場にもかかわらず、密かに我々を支援してくださっていた。その恩を返すためにも、救出作戦に参加させて欲しい」
「竹取王、いかが致しますか?」

 竹取王は少し思案の後、決断された。
 
「分かった。カグヤを助けるために手を貸して欲しい」
「ええ! もちろんですとも」

 竹取王とギョクトは互いに信頼し合うように固く手を握りあった。
 思わぬ味方を得た我々は、破竹の勢いで敵を蹴散らした。
 そして月の王を捉え、ついにカグヤ様の救出に成功したのだ。
 
「カグヤ!」
「義父様!」

 竹取王はカグヤ様をひしと抱きしめる。この瞬間に限り、王ではなく一人の父親であった。
 
「許してくれ、お前を助けるのに1万年もかかってしまった」
「私はずっと信じていました。月の王に無理やり后にされた後も、きっと義父様が助けに来てくださると」

 我らバンブーエルフ1万年の悲願は、ついに成就された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?