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【小説ワンシーン集】追放冒険者争奪戦③

 思いついただけのシーンを書いています。作品として完成させるかは未定です。

「おい、! 何のつもりだ」

 立ちはだかるケイトに戦士ガーフィールドは怒声を上げる。

「ジャックの奥さんと娘に手出しはさせない」

「愚かですねケイト」

 聖者レベッカが道理を理解しない子供を見るような目を向ける。

「ジャックの能力が埋もれるのは社会に対する深刻な損失です。ジャックの家族には、彼に責任を自覚させるのに協力してもらうだけですよ」
「聖職者らしい口の上手さね。ようは家族を人質してジャックを利用するってことでしょ」

 ケイトは剣を抜く。

「あなた達トップ冒険者は今でも人類の代表者よ。そんな連中から家族がひどい目に合わされたと知ったら、ジャックは完全に人に失望してしまうわ。勇者が新しい魔王になってしまう」

 ケイトの言葉に弓兵マリアンヌが呆れながら言う

「さすがジャックを追放した間抜けね。たった一人で勝てると思ってる」

 剣士のバーテックス・スキルを持っていたのは過去のこと。今はただ剣術のノーマル・スキルしか持っていなかった。

「それでも戦わないといけないのよ。私はジャックに取り返しの付かない不義理を働いた。そのツケを支払わなければならない」

 きっと自分は死ぬとケイトは分かっていた。だが、死の恐怖以上に、償いの意思が上回っていた。

「みんな、さっさと片付けよう。ジャックに気づかれたら面倒だ」

 槍兵ロナルドの言葉を皮切りに、トップ冒険者達が動いた。
 ケイトには剣術以外にもノーマル・スキルがある。
 剣士のバーテックス・スキルを持っていた頃のケイトは、それだけがあればいいと驕っていたが、今は自分が持つ全てのスキルを最大限活用するように鍛え直した。

 お陰でノーマル・スキルだけでも一流と呼べるだけの実力を持つようにはなったが、弓兵マリアンヌが言ったように、トップ冒険者を全員相手にするには足りないだろう。

「くそ、何だおかしいぞ!」
「彼女のスキルは全部ノーマルのはずでしょ!」
「こいつは他人に強化されたのに気づかなかったザコのはずだろ!?」

 トップ冒険者達が何かを言っているが、それらはケイトの耳には入っていなかった。
 ケイトは無我夢中で戦った。
 気がつくとトップ冒険者達が全滅していた。

「どうして?」

 自分がやった結果をケイトは現実とはすぐに受け入れられなかった。
 ふと視線を感じ、ケイトは崖の上を見る。
 ジャックがいた。ケイトは自分がトップ冒険者を倒せた理由を悟った。

「ありがとう! 助けてくれてありがとう! そして、ごめんなさい!」

 ジャックはケイトに何も言わず、静かに立ち去った。

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