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第14話 予選クエスト

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 セーフシティ・ベルシルは自衛力の育成に専念している。市民は子供の頃から攻撃魔法や銃の扱いを教育され、15歳以上になると自衛のための武器の携帯を義務付けられていた。
 軽薄そうな学生がステッカーをベタベタと貼り付けたアサルトライフルを担いでいる。生真面目そうな会社員の腰にはショートロッドが刺さっていた。井戸端会議に花咲かせる主婦たちが所持するハンドガンは女性向けに花柄のデコレーションが施されていた。
 誰もがMエネミーに襲われるときに備えている。
 しかしながら備えは必ずしも平穏の確約にはつながらないのだ。

 その日、宇宙から剣のような形をした飛行軍艦が姿を表した。当然ベルシルは、所属はどこか? 目的はなにか? と問いただすが、飛行軍艦の返答は言葉によるものではなかった。
 飛行軍艦はベルシルの防壁に向かって主砲を放った。セーフシティの防壁は考えうる限りの最高の防御を誇るはずだが、あっさりと粉砕されたのだ。
 あまりの事に大混乱となったベルシルをよそに、飛行軍艦は次の行動に出た。内部から兵員輸送機を発進させ、市内へ侵入を開始した。しかも、輸送機から運ばれてきたのはどこかのセーフシティの兵士などではなかった。
 それはソードマンだった。しかも普段目にするものではなく、剣がマジックセーバーに変わっている亜種だった。

 怪人たちは、どういうわけか訓練されたかのように統率が取れていた。
 ベルシル市民は戦った。そのために今まで学び鍛えてきたのだ。しかし、それらはあくまで身を守るためであり、優れた兵士になるためではなかった。抵抗はするが、統率の取れた怪物たちを撃退できなかった。
 わずか一日である。近隣のセーフシティに助けを求めるまもなく、一日の内にベルシルは壊滅した。
 惨劇の直後、飛行軍艦は第3地球全土に向けて犯行声明を表す映像を流した。
 それに写っているのはおそらく軍艦の艦橋であろう。中央に位置する玉座めいた指揮官席に座っているのは鎧武者のような人物が座っていた。
 一見すると肉体を機械化したサイボーグのようだが、それは断じてありえない。医学と科学の見地からすれば、それは血肉と機械をめちゃくちゃにこねくり合わせたかのような状態であり、人として生きているはずがなかったからだ。
 あまりにも冒涜的でおぞましい姿に、この映像を見た中で気の弱い者は失神してしまうほどだった。

「私は暗黒の父である」

 まるで地獄から発しているかのような声だ。聞くもの全てに畏怖と恐怖を与えるかのような重みを持っている。

「セーフシティ・ベルシルは私が滅ぼした。おそらく自らの安全のために私と交渉したり、あるいは恭順を示すものが現れるだろう。予め言っておくが、そんなものは私には一切通用しない」

 暗黒の父は立ち上がり、腰のマジックセーバーを抜く。そこから生み出されるレーザー刃の色は血のように禍々しい赤であった。

「なぜなら、私が求めているのは権益や奴隷などではなく、ただの闘争だ。この飛行軍艦もMエネミーの軍団も、全ては私が戦うに値する相手を見出すためのふるいに過ぎない。私はこのレッドセーバーと共に戦うためだけに、第3地球全てに宣戦を布告する」

 狂気! 何かを得るために戦うのではなく、戦いそのもののためにこの星全てを敵に回したのだ!

「次はセーフシティ・パークティスを滅ぼす。私が用意したすべての障害を乗り越えるものが現れるのを期待している」

 新たな標的の宣告をもって、暗黒の父からの映像は終わった。
 はたしてパークティスの運命は? ベルシル同様なすすべもなく滅ぼされるのか?
 その運命を決めるのはあなた達だ。
 
 プラネットソーサラーオンライン レイド攻略大会プロモーションムービーより

 ついにレイド攻略大会の日がやってきた。
 参加者はまず予選クエストに挑戦し、そこでのスコア上位8組が本戦へ出場する。
 予選クエストの舞台となるセーフシティ・パークティスは複数の巨大な船で作られた海上都市だ。パークティスの各船は暗黒の父から逃れようとするが、ある一隻がエンジントラブルで動けなくなってしまう。そこでプレイヤーたちが敵から船を防衛するというシチュエーションだ。
 ピジョンブラッドは船上都市の一番高いビルの屋上で待機していた。
 敵の出現まであと3分。
 改めて予選クエストの要点を思い返す。
 船上にはパークティス市民が避難しているシェルターが3つあり、またパークティス防衛隊が味方NPCとして控えている。各シェルターの残り耐久値と生き残った味方NPCの数でスコアが集計されるので、いかに被害を少なくするのが攻略のポイントだろう。

 シェルターは船の前部、中部、後部にあるため、ある程度戦力は分散しなくてはならない。しかも敵は一方向から来るわけではない。左舷と右舷の両側から挟み込む形でやってくる。
 そこでクロスポイントが取った方針は、左舷側からの敵はピジョンブラッド一人が迎撃し、残るメンバーが右舷側を均等に防衛するというものだ。たった一人で片側とはいえ敵の軍勢を押し止めることができるのか? できるという自身が彼女にはあった。
 スタールビーを身に着けているピジョンブラッドは空を飛べるという大きなアドバンテージがある。敵は輸送ヘリに乗って現れてくるのだが、船上に到着しない限りは攻撃をしてこない。ならば、まだ海上にいるうちに輸送ヘリを撃墜すれば被害を出さずに済む。

『敵機を確認! 総員迎撃開始!』

 パークティス防衛隊からの通信という形でクエストの開始が宣言された。
 それと同時にピジョンブラッドは弾丸のようにビル屋上から飛び出した。
 視界の先には回転翼を機体の前後に備えた輸送ヘリの姿が複数見える。ピジョンブラッドはまず手近なヘリに狙いをつける。
 輸送ヘリはピジョンブラッドに構わずただひたすらに前進しているので攻撃は容易かった。回転翼を破壊すると、ヘリは爆炎を上げてバランスを崩して海に落下する。
 同じ要領でピジョンブラッドは次々とヘリを撃墜していった。作戦はうまく言っている。この調子ならば、左舷側は一人でも十分に防衛できる。

 問題は飛行時間だ。首に巻いている浮力マフラーは浮いているだけならばMPを消費しないが、移動にはスラスターの推進力が必要となる。当然激しく動けばそれだけMPを消費する。それに対して増設用の魔力タンクをあらかじめ装備してある。これのおかげで、よほど無駄な動きをしない限りは20分の防衛時間中は十分に飛び続けることが可能だ。
 したがって、このクエストをクリアできるか、さらには本戦出場できるだけのスコアを叩き出せるかは、右舷側の活躍に掛かっている。

 左舷側前部の防衛はハイカラが担当している。
 彼女は右舷側のビル屋上から大型の狙撃銃で飛来してくるヘリを攻撃していた。
 彼女が手にしているSB・AMRアーラシュという銃は大きくて扱い難いが、極めて高威力かつ長射程を誇るので、こういった状況では大いに活躍する。
 最大射程1キロにも達するアーラシュの狙撃により、輸送ヘリは中の戦力を抱えたまま次々と海の藻屑となり、船体に取り付けないでいる。

 左舷側後部の防衛は権兵衛の担当だ。
 彼はスコープ付きの狙撃用ロングロッドを持ち込み、炎の魔法:鳳《おおとり》の型で輸送ヘリを撃墜していた。威力よりも連射を重視して、今回は呪文無しで撃っている。
 当然、MPはあっという間に枯渇するが、権兵衛はすかさず針のない注射器を自分の体に押し当てる。するとMPが一瞬にして全回復した。
 これは大会のために大量に用意したMPシリンダーというMP回復アイテムだ。これのおかげで、権兵衛はペース配分を考えずに最大威力の魔法を撃ち続けられる。

 そして左舷側中央部。
 ここはスティールフィスト、ステンレス、白桃、グラントが防衛を担当していた。四人とも長射程の攻撃手段を持たないため、今回の防衛戦における急所でもある。
 数機の輸送ヘリが着陸し、中からソードマン亜種・レベル75が出てくる。姿こそソードマンであるが、持っている武器が普通の片手剣からマジックセーバーになっており、動きもより機敏になっている。レベルもかなり高いので、序盤に登場する敵の亜種だからと侮っては痛い目を見るだろう。
 ソードマン亜種がヘリから降りてくると同時に、スティールフィストが攻撃を開始する。

 ピジョンブラッドから武術の稽古をつけてもらってわずか1ヶ月の彼の動きは、お世辞にも一人前の武闘家とは言えないが、しかし動作補正系技能に頼っていた頃と比べたら見違えるほどに成長していた。
 動作の無駄が減り、的確に打撃を与えてく。
 数が数なので、倒しきれない敵も出てくるが、それらはどす黒い剣を持つグラントに向かっていく。
 グラントは防御を意識しつつ剣を振るって襲いかかってくるソードマン亜種を返り討ちにする。

 今回はとにかく攻撃の人手が必要なので、スティールフィストとグラントだけでなく、支援や回復する必要のない状況なら、ステンレスと白桃も短機関銃で攻撃している。
 シェルターが攻撃されないのは当然として、味方NPCもダメージを受けないようにしなければならない。ゲームの仕様上、NPCは回復の魔法の対象外なのだ。
 このクエストのスコアに味方NPCの生存数が関わっている以上、味方NPCは戦力として数えず、決して戦わせないのが理想だ。

 今の所、その理想はうまく維持できている。このままなら被害を出さないまま敵を全て倒しきれるかもしれない。
 しかしこれはゲームだ。単調な状況が続かないようにするための「工夫」がなされている。

『敵の増援を確認!』

 NPCが通信で叫ぶ。再び左右の方向から現れる敵。しかし、今回は輸送ヘリだけではなかった。
 左舷側と右舷側、それぞれにボスキャラクターの姿があった。

「やぁやぁ! われこそは暗黒の父に使えし剣豪ヌエなり! か弱き体を持つ者よ、この大太刀のサビにしてくれようぞ!」

 ピジョンブラッドの目の前に現れたのは、常軌を逸した体を持っていた。おそらくはもともとは定命族であったのだろうが、頭以外は全て別の生き物に置き換わっていた。上半身は大猿、下半身はネコ科の肉食獣に置き換わっており、背中からは巨大な昆虫の羽が生えている。そしてしっぽは蛇になっていた。
 視界にはキメラ剣豪ヌエ・レベル80と表示されている。

「見よ! この我が主より賜りし最強の肉体を! これほどの力を持つ体を手に入れれば、ちまちまと剣術の稽古をするのもバカバカしいものよ!」

 ヌエのセリフにピジョンブラッドはカチンと来た。貰い物の力でいい気になって、日々の研鑽を軽んじる今の言葉を、剣術に身を置くものとして感化できないものだった。
 もちろん、ヌエが単なるフィクションの登場人物であることは理性でわかっている。それでもなお腹立たしく思えるので、ある意味でこのボスキャラクターは敵役としては優れているのろう。
 ヌエは腰の大太刀を抜いて構える。

「ゆくぞ! 貴様なんぞ木っ端のごとく蹴散らしてくれるわ!」

 ヌエが大太刀を担ぐように構えると背中の昆虫羽を激しく震わせながら突進してきた。

「キエエエエイ!」

 奇声じみた気合を発しながら大太刀を大上段から振り下ろす。真っ向から防御すれば相手の突進力と体格差に押し負けられる。ピジョンブラッドはブルーセーバーで相手の剣を横にそらしながら受け流した。
 ヌエは突進の勢いを止めきれずピジョンブラッドに無防備な背中を晒している。攻撃を与える絶好のチャンスだ。すでに敵の輸送ヘリが船上にたどり着いてしまっているので、ヌエを手早く倒さなければ被害が広がってしまう。
 スラスターを吹かせ、ヌエへ肉薄しようとする。ピジョンブラッドは背中から心臓を狙おうとしたが思わぬ反撃が待ち構えていた。

 ヌエの蛇のしっぽが独立した意識を持ったかのようにピジョンブラッドをにらみつけると、口から電撃の魔法を放ってきたのだ!
 とっさに腕で頭を防御して致命的弱点を攻撃されたのを防ぐが、直撃したことには変わりない。さらには数秒間動けなくなってしまう感電のステータス異常を受けてしまい、ピジョンブラッドは海に落下していく。
 幸いにも海面に叩きつけられる直前で感電状態が解除される。ピジョンブラッドは飛行の制御を取り戻して急上昇した。
 ヌエが船へ向かっていた。被害を少しでも抑えるためにはこの敵をここで仕留めておきたい。ピジョンブラッドは大急ぎで回り込む。

「どけ!」

 ヌエが連続攻撃を繰り出してくる。重く、素早いがしかしおよそ剣術とは言えない大雑把さだ。素人が武器をブンブンと振り回しているのと大差ない。剣豪を自称することすらおこがましい。
 相手の攻撃速度に慣れてしまえば対処は簡単だった。先程の突進攻撃同様、大太刀を受け流すようにさばく。
 後は攻撃の合間を狙って反撃すればよいのだが、「最強の肉体」と増長するだけはあった。独立した意識を持っている蛇のしっぽが、本体の太刀筋の粗を補う。攻撃しようとすると、すかさず噛み付いてこようとする。ピジョンブラッドにとってはヌエ本人よりもこちらの蛇のしっぽのほうが手強く感じた。

「ええい、小賢しい!」

 ヌエは一旦下がった。突進攻撃を行うために距離を取るためだろう。

「チェストォォォォ!」

 今度の突進は上段からの振り下ろしではなく、今度は胴を狙った横斬りだ。
 ピジョンブラッドは攻撃をギリギリまで引きつけから、水平になっている大太刀の刃を蹴ってヌエの真上に上昇した。
 続けて蛇のしっぽが再び電撃の魔法を放つ。

「それを待っていた!」

 ピジョンブラッドはブルセーバーで魔法攻撃を受け止めると、そのまま電撃を打ち返す。

 『魔法返し』! 

 それは敵の魔法攻撃を打ち返す技能だ。本来ならば『剣術』の動作補正系技能がまともに使いこなせないが、ピジョンブラッドにその必要はない。

「ぬわー!」

 魔法攻撃をそっくりそのまま返され、今度はヌエが感電のステータス異常を受ける。動きを止めるのはわずか数秒なれど、剣術の研鑽を積んだピジョンブラッドならば十分すぎるほどの時間だ。
 ピジョンブラッドに心臓を貫かれたヌエは力尽きて海中に没する。
 ボスキャラクターを倒したの確認したピジョンブラッドは素早く船へと向かう。すでに、輸送ヘリはたどり着いてしまっており、ソードマン亜種と味方NPCが戦っている。
 急がねばならなかった。すでに、倒されている味方NPCが出てしまっている。

 一方でもう左舷側に現れたボスキャラクターは、遠距離攻撃を持たないスティールフィスト達がいる中央部に向かっていたために海上で迎撃されることなく船上に到着してしまった。
 それは10メートルを超える巨大な人型ロボットであった。スティールフィストの視界にはMZG2・レベル80とある。
 MZG2は丸腰であったがその巨体そのものが武器であった。近くにあるビルを拳で粉砕すると、その瓦礫が下にいる味方NPCたちに降り注ぐ。
 グラントが持つどす黒い剣のヘイト集中効果も通用しないようで、目につくもの全てを破壊しようとするので被害は加速的に広がっていった。

「まずいぞ」

 スティールフィストは思わず焦る気持ちを口に出してしまう。あんな図体で暴れられてしまっては、味方NPCを守りきれない。

「私に手があるわ。1枚だけだけど持ってきてよかった」

 ステンレスが魔法カードを一枚取り出し、腕に取り付けた読み取り機にかざす。

『ジャイアント』

 電子音声がカード名を読み上げると同時に、ステンレスの手が輝き始める。

「頼んだわよ」

 ステンレスが輝く手でスティールフィストにふれる。すると彼の体がみるみるうちに巨大化し、MZG2と同じサイズになったではないか!

「うお! これは!」

 予想外の出来事にスティールフィストは思わず声を上げる。

「『ジャイアント』のカードで巨大化していられるのは5分間だけよ! このカードは使い捨てで再使用出来ないから今のうちにボスを倒して!」
「わかった!」

 勝負は早くつけたほうがいい。出し惜しみなしで全力を叩き込むと決めた。拳闘魔法はそれぞれの技ごとに決められた構えを取らなければ発動させられない。スティールフィストは自分が使える最大の技である電光雷鳴拳の構えを取る。
 その時、MZG2が右腕を《《発射》》してきた。
 ロケットパンチだ!
 相手は自分と同じで徒手空拳と思っていたスティールフィストは防御が間に合わなくて顔面に攻撃を食らってしまう。拳闘魔法は攻撃を与える前に自分がダメージを受けてしまうとキャンセルされてしまう。せっかく拳に宿った稲妻はその威力を発揮することなく消えてしまう。

「くそっ!」

 スティールフィストは悪態を付きながら態勢を保つ。
 MZG2はすでに右腕を装着しており、いつでもロケットパンチを撃てる状態にあった。
 スティールフィストが再び電光雷鳴拳の構えをとって右拳に稲妻を宿した直後、またしてもMZG2は右腕のロケットパンチを放つ。
 そういう攻撃があるとわかっていれば不意はつかれない。スティールフィストは左の裏拳でロケットパンチを弾いた。
 更に一歩踏み込むと同時に、スティールフィストは電光雷鳴拳をMZG2の下顎に叩きつける! 稲妻が弾けて敵に大ダメージを与えた。

 さらにもう一撃!
 腰のひねりを加えた左拳による逆突きを腹に叩き込んだ!
 MZG2は反撃に左拳で殴ろうとするが、スティールフィストは体を後ろにそらして相手の拳を回避し、同時に横蹴りをお見舞いする。
 きれいに決まった三連撃にスティールフィストは自分の成長を実感した。短い期間とはいえ、ピジョンブラッドとの稽古の成果はたしかに出ていた。
 蹴りを受けたMZG2が転倒している。チャンスだ! このままマウントポジションを取れば一方的に攻撃できる。
 しかし相手は腐ってもボスキャラクターだ。プレイヤーが一方的に有利になるような状況を生み出さない。
 MZG2のスネ部分の装甲が開くと、内蔵されていた多数の小型ミサイルが飛び出してきた。

「!」

 怒り狂った蜂の群れのようなミサイル攻撃をスティールフィストはとっさに近くにあるビル影に隠れてやり過ごす。
 ミサイルがコンクリートの塊を粉々に粉砕して粉塵を巻き起こす。
 粉塵が晴れたときにはすでにMZG2は立ち上がっており、飛ばした右腕も呼び戻して装着済みだった。
 MZG2は両腕を突き出し、両足のミサイルハッチを開く。
 一斉攻撃が来ると察知したスティールフィストは距離をとったり、物陰に隠れようとはせず。あえて敵に接近した。巨大化の効果時間はもはや切れる寸前だからだ。
 左右のロケットパンチと小型ミサイルが一斉に発射される。同時にスティールフィストは地を蹴って、敵の攻撃を避けた。
 そのまま飛び蹴りをMZG2に浴びせる。ロケットパンチを放って両腕を失った敵は防御できないままもろにその攻撃を受ける。
 衝撃でふっとばされたMZG2は背後の高層ビルに叩きつけられる。

「喰らえ!」

 スティールフィストは跳び蹴りから着地したと同時に電光雷鳴拳の構えをとっていた。稲妻をまとった拳は、今度はMZG2のみぞおちに叩き込まれる!
 この一撃が決定打となった。致命傷を受けたMZG2は爆発して木っ端微塵に砕け散る。
 直後、巨大化効果が切れてスティールフィストは元の大きさに戻る。

「こちらスティールフィスト、こっちに来たボスは今倒した」

 パーティー用通信回線で状況を仲間たちに連絡する。

『ピジョンブラットよ。こっち側の敵は全部倒したわ』

 二体のボスは倒された。それからクロスポイントは順次残る敵を撃破し、無事に予選クエストをクリアできた。


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