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僕にとっては大冒険

車の運転が苦手である。

思い起こせば19の春。大学に合格し、喜び勇んで自動車学校に向かい、運転席の僕の隣にはとびきりの美女を!と夢想したものの、初日の講習から教官にこっぴどく叱られ、仮免許の試験の際、S字クランクで脱輪し、不合格。
その後、人生初の不登校になり、夏休みになって重い腰を上げて再び教習所に通いだすも、本免許の路上運転でこれまた不合格。マニュアル車の坂道発進で見事にエンスト、わけもわからず車は後退。
それでも何とか免許を取得し、神奈川までドライブしたときにお巡りさんにご厄介になったのは、取得後1週間目のことであった。

「東京で生活する分には車なぞいらぬ!」とその後は立派なペーパードライバー。
運転免許証はレンタルビデオ店の会員になるときの身分証明書ぐらいしか使い道がなかった。

しかし、新潟に生活の拠点を移してからは、車は必需品であった。
とにかく車がなければ移動が難しい。電車は一時間に2~3本。バスはもっと少ない。
角栄先生のおかげで道路は素晴らしく整備されている。
新潟で暮らすには車ありきでないと話が進まぬのだ。

車の運転にトラウマさえ感じていた僕が、やむにやまれず手に入れたのは中古の軽自動車。
車種のこだわりも特になかった。できれば「寒冷地仕様のものがいい」ぐらいしか考えていなかった。
そんな僕の愛車は畑作業にも使うので、バケツだのスコップだの、鍬や鋤も積んである。
助手席にはとびきりの美女ではなく、鶏糞の袋が座っている。

今でもハンドルを握ると緊張する。あまり遠出はしたくない。
近所のスーパーの駐車場に入るのでさえも冷や汗ものだ。

ところが、この軽自動車に乗っての、僕の大冒険が始まった…

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進藤海/六月雨音/ようじろう/小宮千明/モグ。4人のライターがそれぞれの担当曜日に、ジャンル問わずそれぞれの“書きたいこと”を発信。

ボイスブックコンテンツ《Writone》より集まったライターによるリレーマガジン。

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