20230817ふかいメルマガ64回 DX/デジタル化がうまくいかないワケ(後編)
おはようございます!
12日から夏休みをいただきました。
13・14日と大阪に帰り、父の初盆。
義母の2回目お盆。
そして私が新入社員としてヤラカス舘に入社した時の
初めての上司の葬儀に参列してきました。
くそ生意気だった私の新人時代に、
厳しくも優しく指導してくれた上司は、
脳出血で倒れてから3年11か月、
一度も意識が戻らないまま63歳の死でした。
葬儀で知ったのですが、奥様は
「夫が倒れた! 献身プレイが始まった」(主婦の友社)
という本を出版されていました。
さっそくポチって読んだのですが、不謹慎ですがめちゃくちゃ面白い!
介護経験者、もしくは介護中の人はものすごく共感するでしょうし、
介護未経験者はある意味ラクな気持ちになるのではないかと思います。
彼女はコピーライターなので書きモノのプロですが、
Amazonでも評価の高いレビューを受けています。
さて、DX・デジタル化がうまくいかないワケ後編です。
デジタル化は「減らす・省く・無くす・見える化・データ化する」こと、
ですが一方で、デジタル化がうまくいかない理由も、
「減らす・省く・無くす・見える化・データ化する」ことが起因している、
つまり、デジタル化の目的である効率化・標準化・自動化が、
そもそもデジタル化推進の障害になっているのではないかと思っています。
デジタル化に限らず、
組織としてモノゴトがうまくいかない時の「あるある」は、
手段が目的になってしまうことです。
ということは、「減らす・省く・無くす・見える化・データ化する」という手段が、組織の中で目的になってしまっている、ということです。
デジタル化の目的は、「効率化・標準化・自動化」することによって、
①無駄な時間・場所・距離を減らす
②人為的なミスや事故を最小化する
③省人化する
ことなどです。
裏返せば、大幅なコストダウン、ハイスピード、
高付加価値化を実現するということです。
ただそこへたどり着くまでのプロセスが、
実は手間がかかり、面倒で、時間もかかるのです。
話しは変わりますが、YRK&のグループ会社に
株式会社sooooosカンパニ―があります。
代表取締役は木村有香さんで、私も関わっている会社です。
ヤラカス舘時代の2009年に、社内ベンチャーとして立ち上がった事業で、
ソーシャルプロダクツのECモールを運営している会社ですが、
この会社で最も売上を稼いでいるのが、
smile&ブランドの「ほっとけーち」。
余計な成分を使わず安全で安心な国産素材だけにこだわってつくった
ホットケーキミックスです。
Sooooos.com以外に、楽天、amazon、赤ちゃん本舗、バースデイ、ベビザらス、一部のイオン、台湾でも販売していて、年間30万個が売れる、
楽天市場ではホットケーキミックス部門1位という人気商品です。
このホットケーキミックスを製造してくれているのが
奈良県桜井市にある旭製粉株式会社です。
ここは多くの会社からの依頼に応じて、
ミックス粉を開発して生産しています。
各社が要望するミックス粉の配分はすべて違うわけですが、
粉の配分は絶対に間違えられません。
しかも万が一違う粉が混じっていても、
どれも白い粉だから目視ではわからないのです。
配分間違いでアレルギーが発症したら
人の命に係わる大きな事故になります。
そういう事故を防ぐための旭製粉のやり方か、
超アナログ。
いわゆる「トヨタのかんばん方式」というやつです。
例えば「ほっとけーち」を生産している時間は、
「ほっとけーち」の材料といっしょに
「ほっとけーち」の「ミックス粉の配分・生産工程日時」などが
手書きされた「かんばん」(板)がついています。
工程の最初から最後までいっしょに「かんばん」がついていくのです。
初めて私が旭製粉の工場を視察に行った時に、
正直そのアナログさに驚きました。
でも旭製粉西田社長の説明に納得。
「粉の配分ミスによる事故や未遂を何度も経験しました。
健康被害はありませんでしたが、多くの人に迷惑をかけました。
そのたびに、2度と同じ事故を起こさないようにと改良して
今のこの方法にたどりついたんです。
だから失敗の積み重ねの上にできた仕組みです。
恥ずかしいほどアナログですが(笑)」
西田社長のこの説明に、この会社は信用できると思いました。
旭製粉の手書きの「かんばん」に、
二度と事故を起こさないという執念を感じたからです。
二度と事故を行さないという決意、
人間的なミスを無くすために誰がやっても正しい手順で、
違った手順だとかんばんが違うからすぐわかる仕組み。
アナログですが、デジタル化が目指していることと同じです。
旭製粉の例に、デジタル化が上手くいかない理由の
ヒントがあるように思います。
効率化・標準化・自動化、それはすぐに実現できることではなく、
強い目的意識と知恵と工夫と手間の先にあるものだということです。
デジタル化といっても、
タクシーCMでやっているクラウドサービスを入れて、
ログインさえすればうまくいくというのは妄信です。
強い目的意識と知恵と工夫と手間のその先に、
無意識で可能な効率化・標準化・自動化という習慣があるのだと思います。
おそらく旭製粉のかんばん方式はデジタル化できるはずです。
旭製粉のような知恵と工夫のアナログで取り組んできた会社こそ
デジタル化によって得られる果実は大きいのだと思います。
近い将来、ウェーブはそんな提案と実行ができる会社になる
と思っています。
深井賢一