コーヒーと短編 庄野雄治編
東京に行った時 購入した本
短い髪の女の子の装丁写真が可愛くて
気になってしょうがなくて手に取った
アアルトコーヒーも庄野さんのことも
ほとんど知らなかった
作品は太宰治の桜桃や小川未明の赤い蝋燭と人魚など
なんとなく 読んだことがある気がしたけれど
全く違う印象というか 覚えていなくて
こんな話だったけ?となる
人の記憶なんて 曖昧なものなのかもしれない
この中で私が好きだった話はこのふたつ
岡本かの子の越年と有島武郎の一房の葡萄
今回は越年についてのみ 少し書いてみる
『越年 岡本かの子』
物語は年末、ボーナスを受け取り帰宅しようとした主人公 加奈江の頬を
男性社員に平手打ちされるシーンから始まる。
殴るだけ殴って会社を辞めてしまった男性社員 堂島に復讐をするため、友人明子と堂島を銀座の街で探す日々 初めは意気揚々とするもだんだん飽きてきてしまいう。年の瀬ということもあり、一旦は探すことを止めるも、うずうずして年明けの3日、正月ということもあり和服で盛装をして銀座に出ると・・・。
年末の慌ただしい感じ、寒さとボーナス、意味のわからない他人からの暴力に対する行き場のない感情、クリスマスではないがその息吹を感じるような正月と銀座という街へのなんだか高揚する気持ち、いろんな感情がミルフィーユのように折り重なる。この複雑な感情のレイヤーみたいなものの妙味みたいなもの 嬉しいんだか悲しいんだか 大人になるべきなのか 未熟な感情に向き合うべきなのか 自分の思いと 他人の思いのギャップやら 沢山の感情が層になっていて なんだかこの物語の色のある世界に引き摺り込まれてしまう。
さすが岡本太郎のお母上 物語の始まりと結びのコントラストが美しい
映画にもなったらしいけれど
短編ならではのテンポの良さも気持ちよく読めた
この記事を書いてる時 流れてきた音楽
好きだったなあ この曲
小学生か中学生だったかな オルゴール 買ってもらうほど
戦場のメリークリスマスの曲
いろんな景色やいろんな感情
悲しさも喜びもやりきれなさも混ざりあって
なんとも言えない気持ちになる
いつまで経っても思い出すの
不思議だね