
学びのテーマパーク「こども公園大学」が開催されました
私たちワトソン株式会社は、自然科学の発展と豊かな暮らしの実現を目指す企業理念のもと、子どもと学問や研究をつなぐ活動に力をいれています。8月4日(日)に行われた夏休みこども公園大学では、子どもにも「本物」の実験器具に触れてほしいという思いから、サイエンスアートのブースに協賛しました。
NPO法人知的人材ネットワークあいんしゅたいんが定期的に開催しているこども公園大学は、子どもたちが大学の学問や研究を身近に感じられる「こどものための学びのテーマパーク」です。学校の授業とは全く異なり文理の垣根を超えたさまざまな体験型ブースが用意されています。
研究と触れ合う体験が研究の糧になる
今回、 京都大学百周年時計台記念館で行われた夏休みこども公園大学は、関西学院大学の白井莉菜さんによるスライド発表「好奇心があれば研究できるってホント?」で幕を開けました。「いわゆる『勉強』は好きでも得意でもない」という白井さんに子どもたちの顔がほころびます。そんな白井さんですが、実際にあるイベントで研究者の方と直接会って話を聞いたことが今の研究につながっているのだそう。
さまざまな学問と触れ合うブース探検へ
発表が終わり、白井さんの元気いっぱいの「いってらっしゃーい!」の掛け声とともに、子どもたちは思い思いに興味あるブースへと散っていきました。珍しい生き物の観察、子どもの「なんで」を集めた対話コーナー、おいしいコーヒーの試飲など、子どもたちの好奇心をくすぐる企画が盛りだくさんです。





「本物」の実験器具を使ったサイエンスアートづくり
ワトソン株式会社が協賛した「こどもの生命科学研究科」のブースは、研究者が実際に使う「本物」のマイクロピペッターを使ったサイエンスアート体験です。
最初は「これなに?」「どうやって使うん?」と戸惑っていた子どもたち。正しい持ち方を教えてもらい、真剣な表情で聞き入っています。色水を吸い込むため、ピペッターにチップをつけたら、いよいよ色水を吸う練習です。チップを色水に入れ、正確に吸い上げる技術を磨きます。

何度か練習を重ねた後、いよいよサイエンスアートの作成に取り掛かります。ワトソンが提供した96wellプレートをキャンバスとして、96個の穴にピペッターで色水を注ぎ、ドット絵のようにアートを作っていくのです。
「同じ量を注ぐと均一できれいな点ができあがるよ。ピペッターは決まった量を吸い込んで出してくれる道具なんだ。」との説明を受け、子どもたちは集中して、一つ一つの点を丁寧に作っていきました。


色を変える際はチップも交換し、色が混ざらないよう注意しなければなりません。たくさんの色を使ってアートを作り出す子どもたちでしたが、1回1回こまめにチップを変えていました。
学生スタッフの真柴さんも「こんなにたくさんの子どもたちが使っているのに、色水のコンタミがなくてびっくりしました」と感心しきりです。
コンタミとは「コンタミネーション(contamination)」の略で、実験において望ましくない物質が実験サンプルや器具に混入することを指します。異なるサンプルを吸い込む際にチップを変えなかったり、サンプルを吸い込んだ状態で注ぎ口を上を向けてしまってピペッター本体にサンプルが付着してしまったりすることは、コンタミの大きな原因の一つです。
本来の実験ではもしコンタミが起こると、結果が正確に出なくなってしまいます。例えば、遺伝子の研究など、とても小さな量の物質を扱う実験では、サンプルへのコンタミが起こると全く違う結果になってしまう可能性があるのです。
子どもたちはそんなスタッフの説明を真剣に受け止めてくれたのでしょう。「あふれちゃった!」「場所間違えた!」などの細々したトラブルは見られましたが、色を変えるときはみんなきちんとチップを替え、ふざけてピペッターを上に向ける子なども一人としていません。何十人もの子どもが体験していましたが、元の色水は決して混ざらず、最後まで美しいままでした。

色水を吸って注ぐ作業を96個も行うのは根気のいる作業ですが、子どもたちはもくもくと取り組んでいます。夢中で作業する子どもの後ろで待つ親御さんの嬉しそうな顔も印象的でした。ある親御さんにお話を伺うと「ちょうど小3で理科が始まり、興味を持ち出したので、こんな本格的な器具に触れさせてあげられて嬉しい」とのこと。ワトソンとしても、お子さんが実験器具に触れることで研究に興味を持ってくれたならこんなに嬉しいことはありません。
完成したアートはシールで保護し、お土産として持ち帰れるようになっています。「カエル」「うさぎさん」「へび」「夜空」「お花畑」など、子どもたちが作ったアートは本当にさまざまで、その想像力の豊かさに驚かされます。「特に何ってわけじゃないけど……」と照れたお子さんの手には虹のような美しいグラデーションのアートがありました。

白衣を着て気分は研究者
今回のこども公園大学では、アートができあがったあとに、ワトソンの記者会見風の背景で白衣を着て記念撮影ができるブースも設置。白衣を見ると「これホントに着てるやつ?」と目を輝かせる子どもたちでしたが、着てみると「暑い!」というお子さんも。確かに、このワトソンオリジナル白衣は化学薬品や火などに耐えるためしっかりとした綿でできています。たくさんの楽しいブースに興奮気味で熱気あふれる子どもたちにとっては少し暑く感じたかもしれませんね。

撮影には連続分注器 “Peggy”(ペギー)も小道具として活躍しました。


Peggyは一度にたくさんの量を吸い込んで、目盛りで指定した量を連続して何度も注げる便利な実験器具です。サイエンスアートづくりで「一度吸って一度注ぐ」を96回繰り返したあとだとその機能のありがたさはひとしお。「めっちゃ便利やん」と盛り上がるようすも見られました。
さらに、今回とっておきの小道具として登場したのが、湯川秀樹博士の色紙です。

日本を代表する偉大な科学者の書をかかげる子どもたちに「人の役に立つような未来の研究者になってくれたら」と目を細める親御さんの姿が印象的でした。
大人も子どもも「なんで」を言える社会へ
2時間半に渡るブース周りの時間はあっという間に終わり、イベントはフィナーレへ。こども公園大学のフィナーレを飾ったのは、NPO法人知的人材ネットワーク・あいんしゅたいんの理事長である坂東昌子先生の言葉でした。

坂東先生は、子どもたちの「なんで」という質問の大切さを強調します。
「『なんで』を探求することが、あらゆる研究の出発点になります。学校では質問をめんどくさがられることもある。だから成長するにつれ、子どもは質問しなくなってしまうんです。こども公園大学は子どもたちのすべての『なんで』を歓迎する場所でありたい。」
今回の夏休みこども公園大学でも、子どもたちは各ブースで「なんで?」という疑問を抱き、それを自由に口にすることができました。この好奇心こそが、あらゆる研究の出発点となります。

ワトソン株式会社は、これからも大学や研究機関と手を携え、子どもたちの「なんで?」を大切に育てていきたいと考えています。私たちの夢は、科学の力で皆さまの暮らしをもっと豊かにすること。そのために、子どもたちに様々な分野の面白さを知ってもらい、将来の可能性を広げるお手伝いができれば、こんなに嬉しいことはありません。今回のような楽しい体験を通じて、未来の科学者が育っていくことを心から願っています。
最後に、素晴らしいイベントを企画・運営されたNPO法人知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん、および京都日独学際研究所の皆様、そして熱心に参加してくださった子どもたちとその保護者の皆様に心より感謝申し上げます。私たちワトソン株式会社は、これからも科学の発展と社会貢献に向けて、全力で取り組んでまいります。