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じいちゃんの左手 その66

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『三桁の電話番号』

「じいちゃん・・・ 今日は11月9日だね」
 
「そうじゃな 1・1・9だけに  火の用心 火の用心!」
Puhaaaaaaaaaaaaと煙を吐く じいちゃん
秋おこしを終えて 思い切り わかばを 吸い込むと 
灰皿に 吸い殻をごしごし!
 
「そうだね! でも110番とか 119番って かける機会ないよね!
 三桁の電話って 一度で いいから かけてみたいなぁ・・・」
 
すると じいちゃん!  
何やら 真剣な顔になって 僕の耳元でささやいた
  
「三桁の電話か・・・ それじゃ かけてみるか・・・ 
 ただし・・・ どうなっても 知らんぞ!」
そう言うとじいちゃん 縁側まで 黒電話を引っ張ってきた
 
ごくり・・・
 
「もう一度だけ聞くぞ! どんなことになっても知らんが 
 いいんだろうなぁ・・・ 今から かけるのは この世じゃないぞ!」
 
「そんなこと! また僕を試そうとしてるんでしょ! 
 だっ・・・騙されないもん!」
 
「1・1・4」
じいちゃん ポツリと言った
 
受話器に耳を当てながら ダイヤルを回す僕  
1・1・4 ・・・
 
なんにも 音がしない・・・ 
呼び出しもしない・・・ だまされた・・・ そう思った時
 
「早く受話器を 置け!」 と じいちゃんが怒鳴る
あわてて 受話器を戻した

「だれもでないじゃna・・・」

Grrererererererererererererererererererreererererererererer!

 わぁ~~~~ 

けたたましく鳴る 呼び出しベル! 息継ぎもせず 鳴りっぱなし!
それに連動する 僕の叫び声! 

 「早く 受話器を取らんか!」

そんなこと言っても・・・ 僕・・・ 腰抜けた・・・
そこに やってきた ばあちゃん
僕から 受話器を取って 戻した 

「どうじゃった お化け電話は!」
じいちゃん ばあちゃん にっこにこ!
その横で 半泣きの僕
あまりに 気の毒に思ったのか ばあちゃん 再び受話器を取った 

03-3604-2000・・・ 

「ほれ! これならどうじゃ」

恐る恐る 受話器を耳に当てると  
「もしもし! わたし リカちゃんよ!」 

電話恐怖症に なりそうだった僕を リカちゃんが救ってくれました

♪ リカちゃん電話 ♪


※ 1・1・4・・・
  お化け電話は 電話機の故障チェックだったそうです
  今は 話中確認サービスになったそうです
  子供の頃・・・ ホント 怖かった・・・

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hiropapaman
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