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映画と車が紡ぐ世界chapter161

フェラーリの鷹:シトロエン・DS21 1972年式
Poliziotto sprint:Citroën DS21 1972

秋の夜は長い
エルニーニョの影響で ほのかに温かい雨露は 
窓ガラスを透過して ジワリと僕の中に浸み込んできた

一方 秋の夜長に定番の読書のほうは 
ラスティ・ネイルの協力を得ても 一向に浸透してこない 
※ スコッチウィスキー45ml+ドランブイ15ml
  カクテル言葉「苦痛を和らげる」という 甘いカクテル
 
ホットチョコレートが大好きな
名探偵の謎解きシーンですら ページが進まない

理由は分かっていた
左の頬に そっと触れると Jin Jin した感触と共に 
一週間前の DS21の車内が蘇った

Pashiiiiiiiiiiii!

「勝手にすればいいわ!」

カノジョは 助手席のドアを勢いよく開けると 霧むせぶ夜の街に消えた
焦点の合わない視線で 空席となった 
真っ赤なレザーの助手席を見つめる僕を 
70年代のジャパニーズ・ポップスが やさしく包んだ

♪ 林マキ - ただそれだけのこと ♪

「君のセンスは 時代に追い越されてしまったようだ」
この一言で 
20年勤めた会社を去ることになった
僕のデザインが 会社の窮地を救ったことは
一度や二度ではなかったのに・・・
上層部は 歴史を語る男より 
理想と未来を甘く語る 女性が好みだった

まだやれる・・・
そんな情熱は 消えていた ただ・・・
僕を信じ続けたカノジョだけが 気がかりだった

「大事な話がある」
そんな僕の呼び出しに 10年越しのプロポーズを期待していたカノジョは
別れ話に 沈黙した

「先のない僕と一緒にいると 君まで不幸にな・・・」

カノジョの右手が 僕の左頬を撃ち抜き
ジャン(Orazio Orlando)と共に 燃えたDS21のように 
僕のハートも 燃えて灰となった

駐車場に停まるDS21・・・
俺も お前も 先のない老いぼれ
よろめきながら スコッチウィスキーを手にした 

そのとき・・・

♪ ♪
メールの着信音
条件反射のように 開いたスマホの画面・・・

Hahahahahahahahahahahaha

「定年後は 農作業でもしながら のんびりしたい・・・
 そう言っていた貴方・・・ それが 少し早まっただけ
 忘れていませんか・・・ 私は隣り町 出身よ」

添付されたフォトは 農作業姿のカノジョだった

秋の夜は長い・・・

いつしか 
ソファーの上で眠りについた彼・・・
その足元に転がる ウィスキーボトルには
テレビ画面のように 動画が流れていた

~どこまでも広がる キャベツ畑の中 DS21のボンネットに腰かける彼
 隣りで彼の手を抱きしめる 麦わら帽子をかぶったカノジョの左薬指は 
 朝露に照らされ 眩しく輝いていた~

それは・・・ 
彼の 夢の中のstoryか・・・ それとも 未来の情景か・・・


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hiropapaman
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