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じいちゃんの左手 その20

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『5類』

歳の数だけ 
豆なんか 喰ってたら のどに詰まらせて死んじまうよ
ぼやきながら ワンカップで 節分の豆を流し込む じいちゃん
大丈夫! じいちゃんは 何があっても死なないよ

「そうだ! じいちゃん 
 ようやく コロナも5類になるんだって! これで本当に安心だね」

「お主は 相変わらず わかっとらんのう・・・
 こんなにこっぴどく やられたんじゃから 
 人間・・・それ相応に 終わり方ってもんがあるんだ 
 みんなで はしゃいじゃいかん! 
 こうゆう時は 
 ちいさな声で 終息しました・・・
 ありがとうって思う程度が 丁度いいんじゃ!
 それなのに! 総理大臣からして ゴールインとは! 
 そんな風にだから 二の矢 三の矢で こっぴどくやられたんじゃ!
 ヒロ坊! 人間謙虚さを忘れちゃいかんぞ」

ごもっともです と首を縦に振る僕・・・ んんっ ゴールイン??

Pufaaaaaaaaaaaaa
と煙を吐く じいちゃん 
言い切ったと満足げな感じ
となりで ごほっ・・・ と咳き込んだ瞬間 ピンときた僕・・・
あぁ・・・ 5類(ごるい)・・・ ゴールインですね・・・

「まぁ ゴールインしても わしゃ マスクは絶対はずさんな!」
今日はまだ続く・・・
 
「どうして・・・」
と尋ねる僕に そりゃ・・・ とじいちゃんが語り始めようとしたとき 
ばあちゃんが やってきた

「そっそりゃ お前・・・ 健康の為じゃよ」

「さすが! じいちゃん インフルエンザもあるしね」

「そうともさ!」
胸を張るじいちゃんに 
どこから出したの ばあちゃん
小槌で じいちゃんの 頭を軽くこつんと叩いた

「酒臭いのが ばれないからじゃろ」 だって!

そしたら じいちゃん
小さく 小さく なっちゃった 
(ばあちゃん・・・ それ・・・打出の小槌だったの・・・) 

♪森高千里 鬼たいじ♪


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