映画と車が紡ぐ世界chapter85
ジャンヌダルク ~ シトロエン C5 3.0 エクスクルーシブ 2013年式 ~
The Messenger: The Story of Joan of Arc ~ CitroënC5 3.0Exclusive 2013 ~
カノジョは 現代に蘇った ジャンヌダルクだ
Milla Jovovichを思わせる
ショートヘアにボーイッシュな装いは それだけで資格十分だが
外見だけでなく
曲がったことが大嫌いな性格も オルレアンの乙女そのものだ
道路の反対側にいたカノジョを見つけて
車道を横断する僕を
規律正しい武士道精神を謳う 日本人の美徳を失墜させたと指摘し
電車内で 不意に鳴った携帯電話については
狭床社会の日本における
排他的個人領域の侵犯となる侮辱行為だと 厳しく責められた
僕の部屋に飾ってある
Steve McQueenのポスターが 右に たった5度傾いていただけで
海外文化への敬愛精神の欠如とと言われ
ドライブ中に
渋滞を避けようと 抜け道にハンドルを切ろうとすれば
解離性遁走の初期状態だとして
「Keep straight！」
と司令官のように命じた
そんなカノジョであるが 僕は大いに愛し
カノジョも 嘘をつかない僕のことを同じように思ってくれた
僕の愛車 2013年式 CitroënC5ツアラー
ロングノーズ＆ショートデッキの流線型は
躍動感と純潔な雰囲気を両立している
ジャンヌを助手席に迎えると
コイツのエンジンは いつもより300回転ほど高く廻った
そんな C5とカノジョの融合に満足しながら
冬の女王から解き放たれたばかりの北国へ向かった
僕の両親にカノジョを紹介するために
初めて 女性を連れて帰省したことに驚いた父だったが
カノジョを一目で気に入ってくれた
一方・・・
母親は ボーイッシュな容姿が不満だったらしく
「もう少し 女の子らしいと いいのにねぇ」と呟いた
「女の子っぽいって どういうことを指すの？」
実家を後にした カノジョが 早速吠えた
「気にすることはないさ」
僕の言葉は 車内をフワフワ漂ったものの
最後まで カノジョの耳に届くことなく
開放されたサンルーフから外へ飛び出ていった
カノジョは 新緑の香りを吸い込みながら
いつまでも 遠いの空を見つめていた
それから１週間後・・・
カノジョは 若草色のスカートをはいていた
「どうしたの」 と 言わずにはいられなかった
「天の声に従ってみたの！」
やや内股で 少し恥じらうような笑顔・・・
その心中には 大きな葛藤が渦巻いているはずだった
それを一言も口に出さないカノジョを 僕はもう一度好きになった
半袖が必要なほど蒸した5月30日
突然 上京してきた母を 僕らは C5で出迎えた
フレアスカートを着こなし 髪もロングになったカノジョに
母は満足していた
「うん！ やっぱり女の子は こうでなくちゃ」
少しだけ戸惑うような笑顔のカノジョに 僕の心はズキンとする
～カノジョは 今・・・幸せなんだろうか・・・～
その時 母の背後で黒い影が動いた
「あっ！」
全身黒ずくめの大男が いきなり 母のバックをひったくると
人ごみの中に 走り去ろうとした
誰もが 一瞬のことで 何の反応もできない中
男の右腕を
するりとつかんだのは カノジョはだった
セーーーーーーーーーーーーイ！
大きな掛け声とともに
フワリとめくりあがるスカート・・・
純白のアンダーウェアが 僕と母の目の前を通過した
Zushiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiinn
見事な一本背負いだった
カノジョが柔道経験者だったことを すっかり忘れていた
警官に男を引き渡すと
カノジョはぺろりと舌を出した
Bachiinn！
母は そんなカノジョの頬を 叩いた
「怪我をしたらどうするの！貴女は大切な 私の娘なのよ！」
そして 次の瞬間 母はカノジョを強く抱きしめた
「でも・・・貴女は とても魅力的だったわ ほんとうにありがとう」
「ごめんなさい」と言うカノジョの瞳には大粒の涙がこぼれていたが
初めて 母に向けて天使の様な 笑みを浮かべていた
♪Spice Girls - Mama♪
その日以来
カノジョのスタイルは ショートヘアとジーパンに戻った
しかし
母は もう何も言わなかった
僕たちの寝室には お気に入りの写真が飾ってある
二度と見ることはないだろう
ロングへアにフレアスカートのカノジョと
カノジョのスカートが めくり上がらないように
心配してスカートを抑える僕
そして・・・
撮影してくれた母の影が
流線形のＣ５ボディによって 綺麗なハートマークを作っていた
※1431年5月30日 ジャンヌダルクは天に召されたました
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