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映画と車が紡ぐ世界chapter73

ベイブ ~ BMW 120i スポーツ F20型 2011年式 ~
Babe ~ BMW  120i sport 2011 ~

結婚式を終えて 
教会から出てきたカノジョと視線が交錯した

「君は本当に 幸せなのか!」
僕の瞳が訴える

「えぇ・・・」
瞬きで答えを返すカノジョ・・・

Kayoのお父さんが  病に倒れたのは半年前
莫大な治療費が必要になったカノジョは 
資産家の御曹司と 結婚する道を選んだ

「愛さえあれば!なんとかなる!」
三文小説の 歯の浮くようなセリフに すがってみたものの
カノジョの心は揺るがなかった

視線を落とし
ゆっくりターンして 
教会に入るカノジョの背から
ウエディングドレスが エルフの羽のように棚引く

馬鹿野郎!!
自らを罵った僕の叫びと共に 僕の存在自体が 
真っ赤なBMW120iのボンネットに叩きつけられた雨音によって 
完全に打ち消されていた
そして僕は 全てを捨てて街を去った・・・

私には 将来を誓った彼がいた
でも・・・ 
男手一つで育ててくれた父を見捨てるわけにはいかなかった
私は 彼を捨てた 
そして 自分の人生も 捨  て   た ・・・

それなのに・・・ 父は 2年足らずで逝ってしまった
「お前の人生を狂わせてしまった・・・ ごめん」
父は 何度も 何度も 私に頭を下げた 
私の独りよがりの選択が 父の尊厳さえ傷つけてしまった
「私こそ ごめんなさい・・・」
生きる理由を見失った私は 子供を産めない身体になっていた
夫は そんな私に 
やさしい言葉ではなく 離婚届を用意していた

こうして 私は この世で一番 不要なものになった

屋敷から出る日に 
結婚して初めて 私宛の荷物が届いた 
それは クリームが塗られた 手作りのバームクーヘンだった

♪How Do I Live Trisha Yearwood♪

2.5リッターエンジン並のトルクを持った
ブルーのBMW120iは 
危険なほど 荒っぽいハンドリングで山肌を駆け上り
真っ赤な羽根のついた風車の下で停まった

なかなか 死なせてはくれないものね・・・
そんなことを想いながら 車を降りる

~NOAH牧場~

Meeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!(羊たち)
buuuuuu buuuuuuuu buuuuu! (豚たち)
bow bow(牧羊犬)

動物たちの大合唱と共に 
背の高い男が一人 近づいてくる・・・ Takashiだった

「久しぶり・・・」
それ以上 何も言えない私に 彼は言った

「ブタが牧羊犬の大会に出て 優勝できるんだ!
 何の経験もないサラリーマンが 牧場を経営できるんだ!
 だから 君が僕の嫁さんになることなんて 簡単だろう?・・・」

「ダメよ・・・私は 貴方を傷つけた・・・ 
  それに・・・ 子供を産めなくなっちゃったの・・・」
首を横に振りながら 寂しそうにカノジョは言った

「傷・・・? 
 ここにいれば 毎日傷だらけだから・・・ どれが君がつけた傷だい?
 それに 子供だって・・・??
 ごらんよ 僕らの廻りには こんなに沢山 いるじゃないか!」

Meeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!(羊たち)
buuuuuu buuuuuuuu buuuuu! (豚たち)
bow bow(牧羊犬)
quack quack (アヒルたち)

「僕以上に みんな 君を大歓迎らしい!
 愛さえあれば 何とかなるよ」

いつか聞いた言葉なのに・・・
分厚い経験を感じる暖かい言葉が 空洞だった身体に入り込んできた
まだ 必要としてくれる人がいる・・・

NOAH牧場と動物たちは 
私だけでなく・・・
彼の真っ赤な120iの横に停まる 私の青いブタ鼻の120iも 
方舟の住民として受け入れてくれた  


※3/1は、アメリカではブタの日なんですって!


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hiropapaman
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