じいちゃんの左手 その65
学校から帰ってくると
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた
右手にワンカップ 左手には “わかば”
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・
きっとこんな 会話になっただろう・・・
『CCとBCC』
ワールドシリーズを有線で 聴きながら
Pufaaaaaaaaaaaaa
と煙を吐く じいちゃん
となりで ごほっ・・・ と咳き込む僕は
タブレットで 学校の宿題に奮闘中
そこに ちーちゃんから LINEが届いた!
「CC お願い!」
ちーちゃんは 学級委員長で クラスのアイドル
僕も 気になる存在なんだ
うれしそうに LINEを見る僕を 横から覗き込む じいちゃん
急に無口になって 人差し指を 口元に・・・
「じいちゃん 大丈夫だよ CCって 静かにって ことじゃないよ」
そうか!と じいちゃん
「シー シーって 見えたから 心配したわい」
何故か にやにやしながら
今度は ワンカップを口に近づけて クイクイっとしながら
「お姫さんに 酸っぱいジュースでも 届けに行くのか」だって・・・
C.C.レモン でもありません!!
「CCはね メールを みんなに送るってことだよ」
そのとき 再び ちいちゃんから LINEが届いた
「そうそう 先生にはBCCで 打ってね」
委員長は 人使いが荒い
ちーちゃんから 副委員長に任命されて以来 僕は もう召使いみたい!
「はい はい・・・」
でも ちょっと ウキウキ!
そんな僕を見て にんまりする じいちゃん
「お主もか! わしゃ もう7回も 打ったぞワクチン!」
「BCGワクチンじゃないよ BCC!」
※ それにBCGは 7回も打ちません (神の声)
そう言う僕に
「あっ!! BCCか! それなら 知っとるよー!
えーと ピーナッツ・ボーイズだったかな!」
ピーナッツ? ボーイズ・・・?
頭に ・・・ が並ぶ
そこに ばあちゃんが 茹でた落花生を もってやって来た
「ボケじいさん! それを言うなら ココナッツ・ボーイズじゃ!」
僕の頭を撫でて
「ロマンチックだねぇ」
と言いながら 鼻歌うたう ばあちゃんも にっこり
♪ C-C-B ロマンティックか止まらない ♪
そして じいちゃんが 僕の肩をポンと叩いた
「がんばれよ!」
どうしたの じいちゃん・・・ ばあちゃん・・・
一人・・・ 取り残された僕でした
※ BCCは ブラインド・カーボン・コピーです
決して ~胸が 胸が 苦しくなる~ ことはありません (神の声)