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じいちゃんの左手 その71

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『のど自慢』

1月で暇な じいちゃん 今日も 昼からワンカップ

隣りで 一生懸命 漢字ドリルの宿題をしていた僕は 
あまりに のんびりしすぎの じいちゃんに
いたずら気分で 『今日は 何の日だ』と 質問する

11月9日のことも忘れて 消防の日って 言うのを期待して・・・
ところが!!!

「ふん!! 1月19日は 忘れようにも 忘れられない日だ」
急に不機嫌になった
もしかして じいちゃんが大嫌いな いちじくの日だからかな
と思っていると
おもむろに じいちゃん テレビON! 1チャンネルに回す
すると 80歳のご老人が 
気持ちよく 北島三郎さんの『まつり』を熱唱中!

「これじゃ!」と テレビを指す

「いくぞ よろしく(1946)! いいマイク(119)!(1946年1月19日)
 NHKラジオのど自慢 が始まった日じゃ!」 だって・・・

あわてて パソコンで調べてみると まさにその通り!
さすがじいちゃん! 改めて 尊敬の眼差しの僕
隣りで
ニンマリしながらPufaaaaaaaaaaaaa と煙を吐く じいちゃん
台所では 次に流れてきた
ユーミンの 春よ来いを ばーちゃんが熱唱してる

はやく 春が来るといいな と思う僕・・・ ふと思った 
じいちゃん 何で のど自慢の日が 忘れられないの・・・

そこへ じいちゃんの飲み仲間 隣ん家の大工の棟梁がやって来た 

「お~ NHKのど自慢やってるな! なつかしいのぉ!
 むかーし むかし お前ぇと一緒に 出たんだよな~!」

「ふん!」 と じいちゃん

「あぁ・・・お前ぇは 予選落ちで 本選行けたの 俺だけだったな」
棟梁が爆弾発言を投下! (そう言うことか・・・と僕)

「お主 イチジク喰って さっさと行(逝)っちまえ!」

じいちゃん 最大級の攻撃呪文で反撃したけど 
理解できない棟梁は 大いに 喜んでた 

♪ 松任谷由実 - 春よ、来い ♪


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hiropapaman
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