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じいちゃんの左手 その67

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『副流煙』

必死になって 漢字テストの勉強をしてたら
じいちゃん!
僕にめがけて! ゴジラ!じゃ と言って
突然! Puhaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaと 煙を吐いた

ゴホン ゴホン と 咳込む僕

「じいちゃん! 副流煙 禁止!」

昨日 学校のセンセに聞いた 新しい単語を使いたかった僕

「なんじゃ お主! あんなに ギョウザ好きだったのに~」 
と じいちゃん

なんで ゴジラが 餃子になるのか よくわからない
もしかして 
モスラの幼虫が 餃子に見えるってこと??? と 思いながら

「えぇ~!! どうして副流煙で 中華が嫌いになちゃうの?」
首をかしげて猛抗議!

「お主が 言ったんじゃ! 
 Pshaaaaaaって煙ふいたら 吹く 留園(リュウエン) 禁止だって!」

リンリン!ランラン ♪ 留園! 留園行って! 幸せ食べ~よ ♪ 
リュウエン 行って 一人で 幸せたべ~よ ♪

ご機嫌に 替え歌つくる じいちゃん
かっこつけて副流煙なんて言わなきゃ よかった

「ちがうよ! 副流煙! 
 たばこの煙を となりの人が吸っちゃうこと!」

「しっ・・・知っとるよ~ 副鼻腔炎だろ!」 
(神の声: 違います!副鼻腔炎は ちくのうです!)

でも・・・

とじいちゃん続ける

「お主に Puhaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaってやったのは 
 ばあさんに頼まれて 
 作ってた餃子のかわに付けた 片栗粉じゃろ
 だから 餃子が 嫌いになったのかと思った」

そういう じいちゃん 
よく見ると バカ殿様みたいに 顔が 真っ白だった! 


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hiropapaman
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