映画と車が紡ぐ世界chapter159
惑星ソラリス:いすゞ・ビークロス E-UGS25DW型 1997年式
Solaris:Isuzu VehiCROSS E-UGS25DW 1997
いすゞ製ビークロスは
今ではトレンドとなった クロスオーバーSUVのジャンルを
あまりにも早く取り入れて 孤立した車
ディーゼルエンジンを得意とする いすゞ製には珍しい
3,200ccのガソリンエンジンを搭載したことで 反響は大きかったけど
奇抜すぎるデザインからか 日本では敬遠された
しかし 販売されなかったロシアでカーオブザイヤーを受賞するという
不思議な車だった・・・
そんな車を愛車にしていた彼も いつも孤立していた
しかし それは彼が望んでいたこと
いつも ”人とは違う”を信念に生きていた
その思いは 植物学の研究者としての
彼を若くして 大学の准教授に押し上げる原動力になった
そんな彼のライフワークは 青いタンポポ
「青いタンポポの綿毛は
空より 海より そしてシヴァの神の肌よりも 輝かしく光る青・・・
それが 空一面を覆った」
それは 冒険家だった 彼のお父さんの日記に綴られた一文
彼は その一文を確かめるために 人生を捧げていた
そして・・・
ビークロスと私を残して 彼は消えてしまった
学者仲間たちは
彼は 竜宮城の玉手箱探しに夢中になりすぎたと 揶揄した
彼のように
孤立できない私は 今も彼を探し続けている
ビークロスを駆って 東に 西に
そして 今・・・
私の眼の前に 青いタンポポ畑が広がっている
彼が 探し続けた 青いタンポポは
私の家から 100kmも離れていない 丘の上に存在していた
何度も見間違えた ヤグルマギクではない・・・
本物の青いタンポポ
彼は この風景を見ることができたのだろうか・・・
私は 涙をこらえて タンポポの絨毯に寝ころんだ
とその時・・・ 一陣の風・・・
!!
一瞬 重力が消えたかのように
青いタンポポの青い綿毛が ふわっ・・・と宙に浮いた
シヴァ神の肌に 鳥肌が立ったように
そして次の瞬間
風に押された青い絨毯は 遠く西の空に向かって スライドを始めた
あぁ・・・
これここそ 彼が見たかった風景
私は 青い絨毯を追うように 視線を西に向ける
!!
西の丘に停めた ビークロスの横に 彼がいた・・・
秋の夜の映画鑑賞・・・
私が観ていたのは 惑星ソラリス
未知なる星の海が ぼんやりと映るモニターの前で
いつの間にか眠ってしまったようだ
「君とは 結婚できないよ
知れば知るほど 君は 最高の女性だ
それは 地球上の男たち みんなが思うこと・・・
多数の意見に倣(なら)うことはできない・・・ だから・・・」
自分に課した苦行で プロポーズを言えなかった彼を思い出し
Fuuuu
笑いがこみあげる・・・ その時 私は感じた
♪ Dandelions - Ruth B ♪
廻りの人たちは 彼が死んだという・・・
そう・・・
これだけ多くの人が そう言うのだから・・・ だから・・・
だからこそ 彼は 帰ってくる
人とは違うことを してくれる彼
きっと もうすぐ ・・・
モニターの中のソラリスの海が キラリと輝いたとき・・・
玄関のチャイムが鳴った