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映画と車が紡ぐ世界chapter104

宇宙戦艦ヤマト BMW M3ツーリング E46型 2000年式
Space Battleship Yamato Bmw M3 Touring E46 2000


カーラジオの陽気なDJが
長々と アニメの蘊蓄を披露したあとで 流れてきたのは 
真っ赤なスカーフ 

♪ ささきいさお 真っ赤なスカーフ ♪

「どうして ガミラスは遊星爆弾で地球を攻撃したのかしら」
ラジオに感化された カノジョが呟いた

10月9日・・・
ヤマトが放射能除去装置コスモクリーナーDを手に入れるため
イスカンダルへ旅立つ日だ
ただ・・・ 
2019年の今年から数えて あと180年も未来のこと 
回答は その日まで留保させてほしい 
それより 今日は 僕らの 『出会い記念日』
思う存分 ドライブを満喫しよう
僕たちの相棒は
2013年カーオブザイヤーに輝いたBMW3シリーズ 
ハイブリッドシステムを採用したことで
低燃費でありながら 高いパフォーマンスを維持している

「あなたも ハイブリッドよね!」

たった一杯のビールで 気持ちよく酔いつぶれる僕を
カノジョは そうやって 冷やかした
どんなに飲んでも 酒に飲まれることのない
「ヤマトカクテル」と称してエタノールを嗜む佐渡酒造医師ばりの
カノジョに比べられては 誰もが下戸になってしまう

Hahahahaha・・・・Fufufufufufu・・・

僕とカノジョの 笑い声が 重なった あの日のように・・・

遡ること19年前
ヤマトがイスカンダルに旅立つ199年前
簡単に言えば 2000年の10月9日 僕たちは 有明体育館で出逢った

モータースポーツしか興味の無い僕が 
体育の日ぐらい身体を動かせと 友人に無理やり誘われた卓球場
そんな友人の詰めが甘いのは 
僕らのグループは 3人だったこと
どうやれば 
3人で卓球ができるんだ!
競技に没頭して 僕の存在を完全に忘れた二人の横で
僕はベンチウォーマーになっていた

そのとき・・・
向こう側の卓球台で 同じようにベンチを温める女性がいることに気付いた
それが カノジョだった

視線が重なったあと

Hahahahaha・・・・Fufufufufufu・・・

自然に笑い声が 重なった

「行こう!」

微笑みが途絶える前に 僕らは体育館を飛び出た
俺たち どうやって帰るんだよ・・・
背後から
矢のように追撃してくる 
友人たちの叫び声は 
2000年式 E46 BMWツーリングM3の加速に追いつくことはできなかった
 
そして・・・
僕らは Mナンバーの如く 猛烈な加速で結婚した

あれから23年後(2023年)・・・
地球存亡の危機まで まだ176年もあるのに
カノジョは ひとり スターシャの下へ旅立とうとしていた

ベッドの上で 無垢な瞳で小首を傾げるカノジョが
薄れゆく意識の中で 囁いた・・・

「どうして ガミラスは遊星爆弾で地球を攻撃したのかしら」
カノジョは あの日に戻っているようだった・・・

「夏の間 君はダブルベッドの窓側55%を占領する 
 ところが 真冬になると 
 窓から離れたエリア55%へ 僕に何も言わず
 領地替えするだろう・・・ そういうことだよ」

デスラー総統に 怒られそうな例えだった

「それは・・・ それは・・・
 彼らにとっては 存亡の危機だったということね」

薄氷の笑みを浮かべるカノジョ
ベッド位置の拘りが 日本海溝よりも深いことを 改めて知った
そんな たわいもないカノジョの要望に 
僕は 答えられていたのだろうか・・・

不安の闇が 僕を包み込んだ

「でも・・・」
カノジョは 僕を見つめた

「人類の未来は 明るいわ 
 私のような わがまま娘とも共存できる 
 ハイブリッドな あなたがいるのだから・・・」

「低燃費だしね!」

Hahahahaha・・・・Fufu・・・

三度目の重なった笑い声は  
途中で終わった・・・

176年後・・・
古代進と 森 雪として 転生しよう・・・
そう呟きながら 
僕は 永遠の微笑みを残したカノジョ頬に そっと キスをした


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hiropapaman
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