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The Smashing Pumpkinsの解散~再結成~現在を語ろうと思う③

 今回は2010年代半ばまでを書いていこうと思います。


Teargarden by Kaleidyscopeの終焉

 2011年、メンバーが揃ったバンドは「もうアルバムは出さない」という方針を撤回し、アルバムのレコーディングに入る。「アルバム内アルバム」という形で作品を作るわけだけど、そのリリース前に1枚、重要な作品がリリースされます。

James Iha / Look to the Sky

 1998年の『Let It Come Down』以来14年ぶりとなるJames Ihaの2ndソロアルバム。日本では3月、海外では9月にリリースと半年以上間が空いている理由はよく分からないけど、Ihaは日本でも人気があるし、彼自身日本がルーツなので、先行リリースにしてくれたのかも。ただ、日本盤と海外盤では曲順、収録曲に違いがあるので両方聴いてみると良いと思う。
 前作同様、アコースティック主体のアルバムではあるけど、前作よりも色々な音が増え、バラエティに富んだ作品になっている。前作と同じようなアルバムは作りたくなかったそうで、春を思い起こさせるような、穏やかで暖かみのあるサウンドは聴いていて心地よい。Ihaのヴォーカルも変わらず優しいもので、前作を気に入っている人は必ず気に入るはず。ゲストも大勢いて、曲に彩りを与えてます。

 スマパンに話を戻すと、2012年6月についにアルバムがリリースされます。

Oceania

 アルバムとしては約5年ぶりとなる本作。先に述べたように「アルバム内アルバム」として作られたわけだけど、単体としても非常にクオリティの高い1枚で、むしろ1枚のアルバムとして聴いている人の方が多いのではないかな。
 音としては90年代半ばのスマパンを思わせるような、ヘヴィかつ聴きやすいメロディの曲になり、まさにオルタナティヴと言える。『Zeitgeist』のようなメタル要素はほぼなくなり、ヘヴィさと繊細さのコントラストがはっきりしている。しっかりとしたバンドサウンドで、これはメンバーが固定されたことが大きいのかもしれない。何より曲が良い! プロモーションの関係もあってアルバムにしたそうだけど、Billyがアルバムを作りたかったのもあるんじゃないかな、と思う。それくらい綺麗に纏まったアルバム。ツアーも手応えを感じたのか、2013年には『Oceania: Live In NYC』というライブ盤もリリースされた。
 ちなみにこれは余談だけど、曲名がポストメタルの代表格ISISを思わせる、と一部のヘヴィロックファンの間で話題になりました(ISISには『Celetial』、『Oceaic』、『Panopticon』というアルバムがある)。

 その後、2013年のサマーソニックでバンドは来日するんだけど、所謂『ミスチル地蔵』事件が発生し、Billyはかなりのショックを受けたらしく、その後現在に至るまで来日公演は行われていない。その数年後、Billyは日本のことを聞かれて「パンプキンズは日本から見捨てられた」とか「曲を日本のバンドからパクられた」などなどの発言をしていて、日本に全く良いイメージを持っていなかった様子……。ただ、現在は日系人であるJames Ihaが復帰していること、また92年の来日時の川崎でのライブ盤をリリースしてたり、インタビューでもまた日本に行きたい、と答えていることからも日本に対してのイメージは大分良くなった、のかなと思われる。

 サマソニのことはともかくとして、そんな素晴らしいアルバムをリリースしたにも関わらず、2014年にはドラマーのMike Byrnes、そしてベーシストのNicole Fiorentinoが相次いで脱退し、BillyとJeffの2人体勢になってしまう。そこで、新しくアルバムを制作するに当たって、サポートメンバーとしてMötley CrüeのTommy Leeを迎えます。そして制作されたアルバムがこちら。

Monuments to an Elegy

 2014年リリース作。Tommy Leeが参加と言ってもあくまでサポートなので、正直なところあまり目立っていないし、彼自身もサポートに徹したんだと思う。なのでMötley Crüeみたいな音はない。それどころか本作はスマパンの作品の中でも屈指のポップさと穏やかさに溢れたアルバムと言える。あと全体で約32分と短いのも特徴かな。ちなみにこのアルバムも『Teargarden by Kaleidyscope』のアルバム内アルバムという位置付けになっている。
 2曲目『Being Beige』はこれまでにないような優しげな曲。『One And All』のような激しめの曲もあるけど、あまりヘヴィさを感じない。後述するけど、アルバムのコンセプト上、敢えてポップな曲を集めて制作されたのかな、と。Billyの心境の変化などもあるのかもしれない。ただ、強いて言えばインパクトに欠けるのも事実かな、と。他のアルバムと比較すると印象に残りにくい、というのはあると思う。
 ちなみに本作のツアーはベースにThe KillersのMark Stoermer、ドラムにRage Against The MachineのBrad Wilkを迎えて行っていて、そのメンバーでのライブを観てみたかった。

 『Monuments to an Elegy』は元々『Day for Night』というアルバムと対になる予定だった。本作がポップさを前面に押し出したロックアルバムで、『Day for Night』は実験的なアルバムとして計画していた。でも、『Monuments to an Elegy』の評価がBillyの予想と違っていたこと(本人曰く『中途半端』な評価をされたとのこと)から計画を変更し『Day for Night』というアルバムは制作されなかった。そのことが尾を引いてしまったのか、結果的にこの本作で『Teargarden by Kaleidyscope』プロジェクトは終了ということになった。44曲予定だったものが最終的に33曲止まりとなり、不完全な形での終焉となってしまった。でも、何となくだけどBillyもどのように終わらせるのが良いのか分からなくなっていたのではないかな、と思う。何年も経てば考え方も変わるだろうし、正直なところ『Oceania』も『Monuments to an Elegy』も『Teargarden by Kaleidyscope』の一部というよりも独立した1枚のアルバム、という感じだった。本当のところは分からないけどね。

 というわけで次回で最終回。2015年以降から現在に至るまでを書いていこうと思います。

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