空の上を散歩する「苗場山」
新潟県と長野県の間に位置する百名山の一つ苗場山に登ってきた。
以前、日帰りで登ったことがあるのだが、その時は
あいにく山頂が雲の中でほとんど何も見えず、泣く泣く短時間で降りてきたので今回は山頂の山小屋に泊まってのんびりと高層湿原を楽しむことにしてみた。
長野県栄村の小赤沢ルートから登ることにした。
まずは車で3合目の駐車場へ。
津南の町からずっと細い道を登り続け駐車場まで1時間くらいかかった。
こんなにも広い駐車場がこの山の奥に作られているのに驚く。100台は駐められるらしい。
10時半頃に着いたのだが余裕で駐めることができた。
苗場山は巨大な台地のようなテーブルマウンテンだ。
山頂に広がる高層湿原までひたすら登りが続く。
山頂までは眺望もそれほど良くないので、苦行のような山登りだ。
コロナ明けで、体力の落ちていることに気づかず、多くの登山客が、あちこちで遭難しているが、それがよくわかった。私も久しぶりの本格登山で体力を予想以上に消耗し、本当にきつかった。
しかし、この辛さを我慢し続けて3時間半、山の上に登り切ると素晴らしいご褒美が待っていた。
目の前には遮るものはなく、空があるだけだ。しかも空が近い!
足元にはほんのり紅葉し始めた草もみじと小さな池塘が点在している。
池塘には空の青、白い雲が映り込んでいる。
同じ高層湿原でも尾瀬とは違い、人がほとんどいない、静かな山だ。
こんな素晴らしい景色を独り占めできるとはなんて贅沢なんだろう。
疲れが一気に吹き飛んだ。
ここから高層湿原の木道を途中道草しながら
のんびり歩いて小一時間で山頂の山小屋「苗場ヒュッテ」に着く。
山小屋の入り口に、「左矢印 トイレ100円」「右矢印 山頂の標識 徒歩1分」と 1枚の看板が建てられいる。
おいおい、トイレと一緒に表示するとは、山頂の扱いがずいぶんと雑だな。。
そこから林の中を歩いて本当に1分で、あっけなく苗場山の最高地点に到着。
林に囲まれ、眺望もなく、なんの変哲もない小さな空き地にポツンと山頂の標識が建っている。
普通の山なら最高地点でお弁当を食べたり、人がわいわい賑やかなものだが、ここには誰もいない。。
こんなに寂しい百名山の山頂は初めてだ。。
その代わり、ビューポイントから見下ろす高層湿原は本当に美しく、
太陽の光、雲の動きで刻々と表情を変え、どんなに見ていても見飽きることがない。
普通の山は山頂へ登る達成感、そしてそこからの眺望を楽しむのがメインだが苗場山は違う。
自分が登った山の外に美しさを求めるのはなく、登った山そのものの美しさを楽しむ山だ。
翌朝は5時前に起きて朝日が上がるのを見る。
太陽がのぼるにつれ、少しずつ湿原が輝きだす。
湿原を散歩しながら、光輝く空中の庭園を堪能した。