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水処理と技術営業/サービス編

水処理の分野の営業さんは、いわゆる技術営業というものに該当することになります。こちらの記事でご紹介した分野毎に、営業の仕方や仕事の仕方がどう違うのか?を経験と知見を基に解説してみました。

今回はサービス編です。

水処理設備などの製品は、一度販売すれば大きな金額が入りますが、継続的に受注し続ける保証ができません。一方で、企業が存続するためには持続的に利益を稼ぐ必要があります。水処理分野において、その点を補っているのがこの分野です。ここでは現時点での一般的な項目について記述します。この分野はソリューション分野として、これからの水処理会社の在り方を変えるようなフィールドがどんどん出てくると思います。

10.プラント向け水処理薬品販売

水処理設備にはさまざまな薬品が使われています。その中でも、「工業薬品」と「水処理薬品」に分類されます。工業薬品の代表的なものは、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、といったものです。一方、水処理薬品はニッチな市場のための薬品たちで、無機凝集剤、ポリマー、分散剤、スライムコントロール剤、キレート封鎖剤、栄養剤、といったような名前の薬品が並びます。

水処理設備を運用する時、薬品は必ず必要なものになるので、設備とセットで販売したいところです。ところが、これがなぜかできない。特に工業薬品などは、水処理会社経由でお客様が購入するのは稀なのではないでしょうか。なぜなら、第一に物流の問題。薬品を提供するのに物流網を持っているわけではないので、専門の会社から購入したほうが圧倒的に安いのです。第二にお客様は他の場所でも大量に薬品を使っているから。工業薬品の用途は様々で、水処理設備での消費量は全体にしたら微々たるもの。お客様の工場ですでに薬品を使ってらっしゃることが多く、その薬品たちと同時に買った方が都合がいいのです。そういった背景から、営業のターゲットはおのずと水処理薬品になっていきます。

そこで、水処理設備のためだけの水処理薬品をお客様へ売って行こう!となるのですが、そう考えるのは皆同じなのです。Googleで「水処理薬品」を検索すると出てくる出てくる!このニッチだけど継続的に購入してもらえる薬品は、ビジネスの恰好のターゲットです。そのような中、如何にして自社の薬品を購入してもらい、且つ継続的に購入していただくのか、ということが技術営業のポイントになります。水処理設備の納入できる能力をもった会社は、この初期の購入において圧倒的に有利な立場にいます。一度導入していただいた後は、継続購入のための営業に集中していきます。だが、これも戦国時代さながら、様々な企業が奪取のために営業を仕掛けてきます。ここで、どのようなサービスを継続してお客様を引き留められるのかが重要になってきます。添加量の最適化、水処理設備に関するお悩みの相談、柔軟な納入体制、新商品の紹介、やりたくないけど価格競争、などなど。水処理薬品販売をサービス編に位置付けている所以です。

11.冷却塔・ボイラ向け水処理薬品販売

冷却塔ボイラは、水処理設備、というようりも水を使ったユーティリティ供給設備です。工場やビルで空調を整えたり製造工程に使用したりするための冷水や温水、蒸気を供給したりするときにこれらの設備が活躍しています。冷却塔は「巨大な打ち水装置」ですね。水を撒くと涼しくなる原理で水温を下げます。水が蒸発するときに熱を奪うんです。こうして水温の下がった水が、またどこかで熱いものを冷やして水温が上がって還ってきます。これを連続的にやっているのです。ボイラはご想像の通り、水を沸騰させて蒸気を作る設備ですね。この二つの設備は、両方とも水をグルグルと回して連続して使用しているのですが、一部を揮発させいることが共通です。揮発し続けていくと、やがて水の中の成分が濃縮されていって、スケールが発生したり、虫や微生物などが発生しやすくなってきます。また、条件によっては配管などが腐食してしまうことも。水を濃縮させずに、バンバン捨ててしまえば問題ないのですが、そうすると大量の水が必要になってしまいます。

そこで、冷却塔・ボイラ向け水処理薬品の登場です。これらの薬品を添加することで、水が濃縮しても菌の発生を抑え、腐食から守り、スケールを防ぐことで、水も大量に捨てずに済み、機器のメンテナンスも楽になる効果があります。

効果もはっきりしており、ユーティリティ供給設備の薬品であることから、市場も見込まれるので本当に多くの会社が進出しています。いろいろな種類の薬品が存在します。ところがこの業界、薬品の性能に限って言えば、製品の名前が違うだけで大差ないのです。この分野は薬品販売の中でもはっきりと、製品でなくサービスを販売している分野であると言えます。薬品の性能を語る技術営業だけでは片手落ちどころか手のひらくらい。冷却塔やボイラを知り尽くし、その運転状況とデータによってどのような薬品がどの程度の量で適しているのか。顧客の課題を見抜く力。全国に渡るスムーズな供給体制。最適な薬品注入によるコストダウンに向けたアプローチ。様々なサービスを駆使して顧客を獲得していきます。おそらく将来、ICTにより装置と連携した様々なサービスが展開されるであろう分野です。この分野から、水処理設備のIT化が進んでいくかもしれませんね。

12.水処理設備保守メンテサービス

納入した水処理設備について、保守メンテナンス契約をしていただくことは、水処理会社にとって本当にありがたいことです。継続的な収入が得られるだけでなく、故障時の交換や薬品のオーダーなどを頂く営業チャンスも加わるメリットもあります。さらには、運転管理を一括で契約いただける場合もあります。「水売り」と呼ばれるサブスクリプション的な方法もあります。

ただし、これには顧客の内製化によるコストダウンとの比較を勝ち抜く必要があります。設備をお使いいただいているお客様は、その設備に対しては水処理会社以上にプロに成りえます。そんな中、水処理会社が保守を行うメリットを感じてもらえるように営業していかなくてはなりません。ですが、「水処理と世界と日本」でも記述しましたが、お客様は神様です、という考えが根底にあると、どうしても契約がスムーズに進まなくなってしまう部分があります。結局、お客様のメンテ部門ができるような仕事をしているだけだと、お客様のためには身を引いた方がコストが安くなるのですから。そこに何か特別な差を生み出せるのか。今後、ICT技術により革命が起こるかもしれません。

以上、サービスについてでした。

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