水処理と技術営業/概要
水処理産業はよくニッチな産業と言われます。でも、このニッチな産業に身を置いていると、その中でもいろいろな種類があることに気づかされます。それぞれに特徴があって、最適な仕事のやり方も違うんです。
「仕事のやり方が違うんだろうな」という観点で、水処理産業を分類してみました。
1.官公庁向け巨大水処理プラント納入
公正公平、技術とコストの信頼安全にさらに公共性をもった仕様が特徴。この特殊とも言える仕様を如何に理解しているかが、仕事をこなしていく中で非常に重要。
2.民間向け巨大水処理プラント納入
基本的に一番大事なことは「"タイムリーに"要求する水質と水量を安定的に出せること」。そのために、仕事をプロジェクト内で役割・分野分割し、各専門のチーム一丸で仕事をしていく、ザ・プロジェクト。
3.石油化学向け水処理プラント納入
大型の民間水処理プラントとして大きく変わることはない。しかし、特にこの業界ならではの標準技術にもでてこない常識があります。相手の当たり前と自分の当たり前は違う、ということを意識しながら仕事を進めていくことが重要。
4.医製薬向け水処理プラント納入
ある特定のルールをベースにすべての設計・製造・検査をすることが要求される。特定の法規を十分理解して上で、技術提案と設計を実行し、国から「可」の判定をもらう検査結果を提出できるのか、ということが仕事で求められる。
5.一般産業向け用水・純水プラント納入
顧客の業界情報から必要技術を当てはめていく思考でなく(業界情報→技術特定)、手持ちの技術から顧客の業界/要求を満たす技術を紹介する思考が必要(技術知見→業界適用)
6.一般産業向け排水処理プラント納入
お客様が何を求められているのか、何を解決したいのか、ということに対して向き合い、設計からくる知見によって、お客様の疑問を解決する場にする。お客様の知り得る情報まで目線を落としてヒアリング。
7.一般産業向け標準ユニット販売
自社の標準ユニット仕様に合うようにお客様の要望を誘導していく営業が必要になる。何かを始めるときに、目的と意義の理解、と共有が必要。
8.合併浄化槽販売
標準化には前提条件があります。その標準、そのままその環境に適用して大丈夫ですか?
9.卓上浄水器販売
BtoBでありながら、BtoCに近くなってきます。
10.プラント向け水処理薬品販売
ニッチだけど継続的に購入してもらえる薬品は、ビジネスの恰好のターゲット。どのようなサービスを継続してお客様を引き留められるのかが重要。
11.冷却塔・ボイラ向け水処理薬品販売
薬品の性能に限って言えば、製品の名前が違うだけで大差ない。製品でなくサービスを販売している分野である。
12.水処理設備保守メンテサービス
顧客の内製化によるコストダウンとの比較を勝ち抜く必要がある。
私の知見だけでもこんなに種類があります。しかも、本当に仕事のやり方がそれぞれ全然違うのです。実をいうと、プロである水処理会社さんにお勤めの方の中にも、頭で分かっているだけでこの事実にしっかりと気づいていない方がいらっしゃたりします。民間向けの巨大水処理プラントがしっかりこなせるからといって、その仕事のやり方で一般産業向けの水処理プラントをしっかりと受注して儲けをだせるとは限らないのです。もちろん、技術は共通するものがあります。しかし、営業の仕方は全く違いますし、技術の提案の仕方も全く違います。
特に、上記に挙げた番号が小さいほど、一度の売上規模が大きいので、「売上と利益を立てているこのやり方が一番!」という気持ちがなかなか抜けず、番号が大きい他の分野に取り組むときに、仕事のやり方が違うという事実の解釈に対して、頭だけで分かって謙虚になれずに上手くいっていない場合が多いです。
私が経験あるのは、3~8番までです。特に得意なのは、5.一般産業向け排水処理プラント納入、6.一般産業向け用水・純水プラント納入、です。他の分野は、実行チームを管理したり、他のチームや他社さんの仕事を拝見させてもらったりして知見がある程度です。
次回、それぞれの分野の「仕事のやり方」の特徴を解説していこうと思います。
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