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夏至
2021年2月6日 15:08
大阪に住む祖母と、私が小学生の頃に二人で和歌山へ墓参りに行ったことがある。一時間ほど電車に揺られて着いた海の近い駅から、バスに乗り換え、小高い丘の上の方まで運ばれた。誰のお墓だったのか、どうして私だけが着いて行ったのか詳しい経緯は覚えていないが、その墓地から見えた海と岸辺の町だけが不気味な鮮明さで思い返される。ここに幽霊がいるなら、ずっとこの海を見られて羨ましいなどと不謹慎にもそう思った。
2020年9月30日 23:54
これは、気難しい人間が朝から海へ行って最終的に京都のゲストハウスで寝るまでの、9月最終日の行き当たりばったりな記録。4:30変な爆発音みたいなので目が覚める。あたりを見渡して、空き缶を下げていた袋が粘着型のフックごと落ちたのだと気がついた。ちょっと安心。目覚めたついでにそそくさと着替え始める。今日は海へ行きたい。6:30服選びに苦戦した。やや機嫌が傾く。始発に乗れそうだと思っていたけ
2020年8月16日 17:46
米津玄師のアルバムを買った。よく考えるとアーティストのアルバムというもの自体、買うのは初めてだ。ライブに行ったことも、アルバムやCDを買ったこともなかったが、彼について少しだけ書き記したい。どれだけ無様に傷つこうとも終わらない毎日に花束をライブ映像の最後の曲を、一昨年の年末によく聴いていた。学業に忙殺されていた頃だった。花束ときいて、白木蓮を抱えた自分の姿が思い浮かぶ。太宰治の斜陽を
2020年4月25日 13:25
あそこを見てごらん、ほら、木蓮が咲いているでしょう。老齢の男性にそう言われて窓の外を覗き込むと、遥か下の道路脇に白いハナミズキが見えた。先の大雨で大方散ってしまった桜の話をして、桜が散ると寂しくなりますねと私が言ったら、そう教えてくれた。かなり距離があるこの場所からも白い花弁の瑞々しさが窺える。この距離から見れば白木蓮と言われてもわからないかもしれない。けれどいつもその木の近くを通ってくる私は