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【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#026 実在する心霊スポット『ヌルボムガーデン』が現実と接続する恐怖

【六本木ホラーショーケース】

六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。


今回ご紹介するのは、『ヌルボムガーデン』です。

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『ヌルボムガーデン』

2024 | 監督:ク・テジン

オフィシャルサイト

怖い話をする時に、場所というのはとても重要な要素です。
その土地や建物をリアルに想像することによって、臨場感が増します。
また、それが実在する場所であると我々観客の実生活と連結して、より恐怖を身近に感じることができます。
故に、実在の場所をテーマとした怖い話は古今東西数多く語られてきました。
映画においても、実在の心霊スポットをテーマとした作品はあります。
特に近年では、清水崇監督が手掛けた“恐怖の村”シリーズ『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』が若者を中心に人気を博しました。
それぞれにモデルとなる場所が存在し、都市伝説を組み込んだオリジナルストーリーが展開しています。
『ミッドサマー』や『女神の継承』など因習村モノが世界のホラートレンドとなっているタイミングで、マッチングしたムーブメントとも言えるかもしれません。

韓国にも三大心霊スポットと呼ばれる場所が実在します。
森の中に佇むコンジアム精神病院、国道沿いにある慶北ヨンドク刺身店、そしてレストランとしてかつて営業していた建物ヌルボムガーデンです。
それぞれに曰く付きの場所であり、様々な背景やその場所で起こったとされる怪現象が出回っています。
こちらを題材とした映画は、既に2018年に『コンジアム』として製作されています。
ホラースポットとして名高いコンジアム精神病院に潜入した若者たちが出くわす怪異をGoProなどの映像によるPOVモキュメンタリーとして描き、韓国で大ヒットしました。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降盛んに制作された手法を用いていますが、“やらせ”というギミックを組み込むことで、POVモキュメンタリーの弱点とされる要素を逆手に取り後半への恐怖のブーストに成功しています。

そして、『ヌルボムガーデン』です。
『コンジアム』とは異なり、今作は通常の劇映画として作られています。
とある家屋にまつわるホラーとしては、日本の『呪怨』が思い出されますが、どこかJホラーの質感も感じられる作品です。
なかなかショッキングな冒頭から始まり、気配で怖がらせる前半パートは映画館という空間でこそ最大限の効力を楽しめる音の体験となります。
後半に掛けて怪異がエクストリーム化していくとともに、人怖・胸糞な背景が露呈していくところは韓国ホラーの醍醐味を味わうことができます。
語られる物語はフィクションですが、映画館を出てもあの場所は確かに実在するという事実が重くのしかかってくるはずです。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

『セッション9』
2001 | 監督:ブラッド・アンダーソン

『マシニスト』などで知られるブラッド・アンダーソン監督作品です。
こちらも実在の廃病院で撮影が行われております。
ジャンプスケアやクリーチャーの大暴れのようなスタイルではなく、どことなく韓国や日本のホラーを彷彿とさせるじんわりとした恐怖表現を楽しめます。

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