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【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#028 『ザ・エクソシズム』を外側からも楽しむために
【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
今回ご紹介するのは、『ザ・エクソシズム』です。
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『ザ・エクソシズム』
2024 | 監督:ジョシュア・ジョン・ミラー
オフィシャルサイト
ラッセル・クロウが悪魔祓いをする姿に既視感を覚える方もいるのではないでしょうか。
それは2023年に日本で公開され、スマッシュヒットを放った『ヴァチカンのエクソシスト』のせいでしょう。
ヴァチカンのローマ法王直属のエクソシストである実在の神父の回顧録を原作とした作品で、ヴァチクソに強いアモルト神父をラッセル・クロウが演じていました。
その強烈なキャラクターは日本でもカルト的な熱狂を生み出し、日本贔屓な作品プロデューサーのSNSでの発信も相まって、一部でムーブメントを起こしたのも記憶に新しいです。
『ザ・エクソシズム』はその続編や二番煎じ、というわけではもちろんございません。
実は『ザ・エクソシズム』は『ヴァチカンのエクソシスト』よりも先に撮影が行われており、コロナ禍の影響で完成が遅れたという経緯があります。
しかし、そのパブリックイメージがとても有効に活用されている作品です。
というのも、本作は悪魔祓い映画を撮影する、という映画になっています。
要はバックステージものであり、ラッセル・クロウが演じるのは、悪魔祓いを執り行う神父を映画内映画で演じる役者という役どころです。
実際のラッセル・クロウは30年以上もハリウッドの最前線で活躍する尊敬すべき役者ですが、今作では落ちぶれた俳優として登場し、なんとかこの映画撮影で再起を図ろうともがいています。
そこのギャップを楽しむこともキャスティングの妙と言えるでしょう。
もう一つ、この映画の外側には大きな“縁”があります。
今作のジョシュア・ジョン・ミラー監督は、悪魔祓い映画の金字塔『エクソシスト』でカラス神父を演じた俳優ジェイソン・ミラーの実の息子なのです。
その事実を踏まえると本作の設定は意味深く感じられます。
伝説的な逸話として、ジェイソン・ミラーはエクソシスト出演後に度々災難に遭っており、“エクソシストの災い”と呼ばれたりもしています。
『ザ・エクソシズム』でも役と自身の問題とで葛藤する父を見守る娘が出てきますが、まさに監督自身の体験が反映されているのではと推測できます。
役名を自身と同じ“ミラー”とすることで、実録ではないにしろ、何かしらの思いと覚悟が詰まっている作品です。
監督は脚本で参加した『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』でもホラー映画に出演する母親とのやり取りを描いており、ホラーに因縁付けられた自身の運命を作品発表を通して紐解いている印象があります。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
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『キャメラを止めるな!』
2022 | 監督:ミシェル・アザナヴィシウス
皆さんご存知『カメラを止めるな!』のフランスリメイク版です。
オリジナルは大ヒット作品なので、今回は敢えてリメイクの方を。
今作を見るといかにアイデアの部分が強靭な面白さに支えられていたのかが分かります。
なにげにキャストもロマン・デュリスやベレニス・ベジョ、フィネガン・オールドフィールドが出ていたりで豪華です。
ホラー映画の撮影現場が舞台となった作品ですが『ザ・エクソシズム』とはある種真逆のベクトルを持った映画です。