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【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#029 リミナルスペースを有効活用する『SKINAMARINK/スキナマリンク』

【六本木ホラーショーケース】

六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。


今回ご紹介するのは、『SKINAMARINK/スキナマリンク』です。

(C)MMXXII Kyle Edward Ball All Rights Reserved

『SKINAMARINK/スキナマリンク』

2022 | 監督:カイル・エドワード・ボール

オフィシャルサイト

ホラー映画界では、その後のトレンドを一変してしまうようなエポックメイキングな作品がしばしば登場します。
しかもそれは決まって無名の若手によって作られた低予算映画だったり。
1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』はヴァイラルヒットの先駆けで、ファウンド・フッテージという手法を爆発的に広めました。
2004年公開の『ソウ』は、ジェームズ・ワンとリー・ワネルという才能を世界へと知らしめ、続編ではトーチャーポルノと呼ばれる過激なムーブメントの中心となります。
2007年には『パラノーマル・アクティビティ』が登場し、モキュメンタリーのトレンドを推し進めました。
これら伝説的作品に並ぶのが『SKINAMARINK/スキナマリンク』です。

監督を務めたカイル・エドワード・ボールは、元々YouTubeに「NIGHTMARES」というホラー短編シリーズを投稿していました。
これらは悪夢を再現するということをコンセプトに作られ、人気を博します。
本作『SKINAMARINK/スキナマリンク』はそのアイデアを長編映画としてブラッシュアップしたものです。
近年では、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』のフィリッポウ兄弟がYouTube出身のホラー映画監督として成功しています。
YouTubeというメディアでウケる映像と映画では、根本的なベクトルが異なるように思えますが、才能ある監督たちの短編など習作を発表する場として、一定の成果を見せ始めたという印象があります。

そして、今作がどのようなトレンドを生み出すのかという部分ですが、それは“リミナルスペース”です。
中間や境界を示す言葉ですが、本来は建造物における移動のためのスペースのことを指します。
一見、何もないこのスペースの不気味さがフィーチャーされ始めたのは、2019年頃にネットミームとなった“The Backrooms”の登場からです。
明確に怪異が映り込んでいる訳ではないですが、何処か異世界と繋がってしまったような感覚を覚える瞬間の恐怖を最大限まで増幅させる画像や動画。
これらの要素を見事に長編映画としてまとめ上げたのが『SKINAMARINK/スキナマリンク』になります。
この先“The Backrooms”も映画化が予定されていますが、制作する映画スタジオA24は、カイル監督の次回作『The Land of Nod』も手掛けることになっています。
やはりこのあたりがムーブメントを引っ張っていくのかもしれません。
そして日本でも“リミナルスペース”をモチーフとしたゲーム『8番出口』が流行りました。
こちらも映画化が発表されており、ホラー映画界として益々見逃せないトピックになりつつあります。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

(C)MMXII Ersatz Film, All Rights Reserved

『私はゴースト』
2012 | 監督:H・P・メンドーサ

家の中に閉じ込められてしまった幽霊の映画です。『SKINAMARINK/スキナマリンク』にも通じる、安全であるはずの家がそうではなくなるという恐怖を描いています。

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