【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#022 メディアの経年劣化を活かした『悪魔と夜ふかし』
【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
今回ご紹介するのは、『悪魔と夜ふかし』です。
『悪魔と夜ふかし』
2023 | 監督:コリン&キャメロン・ケアンズ
今作は少々変わったコンセプトを持った作品です。
70年代に放送されていた深夜トーク番組で起こったとある放送事故を収録したマスターテープ、というテイで構成されたフェイクドキュメンタリーです。
いわゆる“ファウンド・フッテージ”と呼ばれるジャンルに属しますが、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『REC/レック』のように手が加えられていない(とされている)映像素材が丸ごと発見されるというものではなく、当時放送されていた生放送番組の映像というのが肝です。
最近だと日本のテレビ東京が放送していた『このテープもってないですか?』が近い形の作品かもしれません。
昔放送していたテレビ番組の雰囲気を事細かく再現し、現代のフォーマットで映し出された時の違和感を見事にホラー表現として取り込んでいます。
『悪魔と夜ふかし』の試写会にて、『このテープもってないですか?』のプロデューサーである大森時生さんを招いたトークも行われており、世界のトレンドを語る上で興味深い符合と言えます。
ただ、怪異の表現のやり方はフィクションならではの飛躍を取り入れており、このあたりは白石晃士監督の路線を感じることもできます。
監督を務めたケアンズ兄弟はオーストラリア出身です。
オーストラリアの兄弟監督と言えば『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』のフィリッポウ兄弟を思い出されます。
彼らはYouTubeというプラットフォームから飛び出した才能で、作品にもSNSの要素を取り込みフレッシュなホラーを生み出しました。
テレビという旧来のメディアを扱うケアンズ兄弟とは真逆のように映るかもしれませんが、両者とも映画以外のメディアの時代性を極めて正確に把握した上で、ホラーの作劇に活かしている作家と言えます。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
『NOPE/ノープ』
2022 | 監督:ジョーダン・ピール
ジョーダン・ピール監督の長編映画第三作目です。
ジャンルを問われると中々難しいところはありますが、スペクタクルホラーとでも言いましょうか。
こちらの作品にもかつて放送されていたという設定の架空のシットコム番組「ゴーディズ・ホーム」というものが登場します。
当時のスタイルを現代から振り返り、そこに生じる違和感を掘り下げるという手法は『悪魔と夜ふかし』にも通じるものがあります。
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