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【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#015 世界に打って出る『みなに幸あれ』

【六本木ホラーショーケース】

六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。


今回ご紹介するのは、『みなに幸あれ』です。

(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会

『みなに幸あれ』

2024 | 監督:下津優太

オフィシャルサイト

こちらの作品は、KADOKAWAが主催したホラー映画のコンペティション“日本ホラー映画大賞”から生まれました。
第一回に応募された同名の短編映画が大賞を受賞し、その副賞として長編化されたという経緯です。
パイロットフィルムとなった短編は11分という時間の中に既に長編である本作の要素は殆ど盛り込まれていると言ってよいほど完成度の高いものでした。
しかも、キャストやロケ地はそのまま長編でも一部引き継がれており、これだけ短期間に商業映画として完成にこぎつけたのには既にお膳立てされた短編の存在が欠かせなかったと感じます。
是非、機会があればこちらの短編もご覧いただきたいです。
これらを作り上げた下津優太監督は今回長編映画監督デビューとなりますが、戦略的にクリエイティビティを発揮できる頼もしい存在と言えるでしょう。
そして、パイロット版から長編化でデビューというスタイルは世界的にもスタンダードとなっています。
デイミアン・チャゼル監督の『セッション』やホラージャンルですとデヴィッド・F・サンドバーグ監督の『ライト/オフ』が挙げられます。
それらをコンペティションという形で応援するKADOKAWAの試みは、日本映画や監督たちが世界に打って出ていく上でとても重要になってくると思います。

今作がグローバルスタンダードな作品だと感じる要因は、その成り立ちだけでなくテーマにも言えます。
ジャンルとしては『ミッドサマー』を代表とする因習村モノという括りが出来ますが、“老人モノ”でもあります。
最近ですと、『ウィジット』や『X エックス』、『ドント・ブリーズ』など老人が大暴れするホラーが増えてきている印象です。
エイジズムという問題の加害と被害、双方が抱える恐怖が炙り出された結果がこの状況を生み出したのでしょうか?
近年発掘されたジョージ・A・ロメロの『アミューズメント・パーク』は、1973年制作ですが決定的な作品であり、改めて監督の社会を見つめる眼差しの鋭さに感服します。
『みなに幸あれ』もこれらと並ぶ時代性を持ち得た作品だと感じました。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

『レリック -遺物-』
2020 | 監督: ナタリー・エリカ・ジェームス

近年の老人ホラーで出色の作品です。
久々に会ったおばあちゃんがなにか変、という定番の流れなのですが、ちょうど嫌な感じを与えてくるのがとても上手いです。
そして、その“変”の正体があまりにも呆気にとられるもので、中々の衝撃です。

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